幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

久しぶりに行った銭湯で (3)

2019-09-01 21:18:01 | Weblog

昨日の夜中
目が覚めてシャワーを浴びようとしたら
青いセルロイド人形のようなひとに出会った

そのとき
目から発するレーザービームのような緑色の光線を見て
ふと思った

明日久しぶりに近くの銭湯にでも行ってみようかと

住んでいるアパートから五分も歩かない路地裏に
昔ながらの銭湯がある
いつもそこを通るたびに気になっていた

今日は日曜日だから夕方の4時からやっている
入り口の看板にそう書いてあった
開店と同時に行けば空いているだろう

何年ぶり、いや何十年ぶりかもしれない
銭湯に行くなんて

この近所の誰とも付き合いはない
初めて行ったら常連さんに奇異な目で見られるだろうか
でもどうせいたとしても
生気のない年寄りばかりだろう
運が良ければ誰もいないかもしれない

小銭入れだけを持ってアパートを出た

入り口の看板に「手ぶらでお越しください。タオルも無料でお貸しします。」と書いてあるのを知っていた

入り口の下駄箱に履いてきたスニーカーを入れて中の扉を開けた

番台の上に人の良さそうなおばあさんがいた
いまだに番台がある銭湯なんて珍しいのではないか

中には誰もいない

料金を支払うと
ニコニコしながら「タオル使う?」と聞かれた
「はい」と言うと「一枚?二枚?」と聞かれた
少し迷って「じゃあ二枚」と言うと
緑色のタオルを二枚渡された

一面鏡張りの壁に沿って着替え用の四角いロッカーが並んでいる
1から順番に番号がついている
13のロッカーの前に行くと
誰かが自分を見ているような視線を感じた

番台の方を見ると
さっきのおばあさんは居なくなっている

誰もいない


ふと鏡を見ると
そこに映っているはずの自分の代わりに
誰か別の人が映っている

目を大きく見開いて
私を凝視している



























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