幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

そのひとに告げられたこと (4)

2019-09-01 22:55:01 | Weblog

そのひとの視線に目を合わせると
そのひとが私に話しかけてくる言葉が
心の中で聞こえてきた

明日あなたは「幸せ」と書かれた落とし物を拾うだろう

それを持ち帰ってあなたはいろいろと調べる

でもいくら調べてもあなたは

その落とし主が誰だか分からないだろう

そのとき今から私が言うことを必ず思い出して欲しい

「それを絶対に警察に持って行ってはいけない」

次の日あなたはその落とし物の持ち主を知ることになるからだ

でもその日から私に会うことはできなくなる

だからそのとき思い出して欲しい

その落とし物をどうやって持ち主に返すことができるか

私に訊くことはできないことを

三日目にあなたは決めなければならなくなる

「幸せ」と書かれた落とし物を持ち主に返すのか

それともそれを自分の物にするのかを

そしてもしあなたが「幸せ」と書かれた落とし物を持ち主に返すことに決めたなら

また私に会うことができるだろう

でもそれを自分の物にすることにしたなら

あなたはもう二度と私に会うことはできない

そして私と会ったこともすっかり忘れてしまうだろう

そしてもう二度と私を思い出すこともない


























最新の画像もっと見る

コメントを投稿