本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

「 万劫の初事 」

2012-02-09 21:24:50 | 住職の活動日記
 お参りに行く度に、

 「 ここのアパート家賃がいくらで、電気ガスがいくらかかって、

   生命保険が毎月これだけ、がん保険がいくら、 …

   がんと診断されればすぐ保険料が出るのです。」

ということから、会話が始まります。

 どういうわけか、この方とはお会いしたときから、この話なのです。

菩提樹苑にお墓を立てていらっしゃるという事からのご縁です。


また、今日もこの話か     ??

やはりそうでした。


     と思いつつも、

ふと、思い出したのです。

 「 万劫の初事 」 ( まんごうのはつごと )

三浦先生の話で、どんな話しでも、生まれてから始めて聞くように

驚きをもって聞かなければいけない。!!

   「 その話は聞いた。!! 」

といってしまえば、本当のことは聞けない。


 いつも目をそらさず、聞くのですが、

今日は特に思い直して聞いて、聞き返したり、

そうこうするうちに、いつもの話の中から、

微妙に新しい話しの展開がありました。


 奥様を亡くされ、男所帯、ひとりでの生活です。

毎月欠かさず、月参りをお願いされ、

仏壇には、整っているとはいえませんがお花がお供えしてあり、

たぶんスーパーで買われたようなお菓子がお備えしてあります。

 私には、ペットボトルからのウーロン茶と果物がでます。

よくよく考えれば、とてもえらいな~  と感心させられます。

 ( もし、立場が反対だったら、私なら出来るだろうか ?? )  怪しいものです。


 「 息子もあてになりません。

   墓参りもしてくれません。

   本蔵院さん私が死んだら、後の供養はお願いしますね。

   遺言書に書いておきますけん ! 」


苦渋の選択だったのでしょう。


 「 菩提樹苑の観音廟に両親と私と妻の永代供養をお願いします。」

 「 もうちょっと、何とか自分でやれると思います。

   いよいよのときは言います けん !! 」


私たちと一緒です。

毎月、お仏壇で同じお経をあげます。

この方も、毎月、家賃がいくら から始まって  同じことの繰り返しです。

しかし、これが大事なのです。

同じお経も、万劫の初事、初めて見るように感動を持って読まなければいけないのです。


 「 人生の学びの始まりは、驚きの心にある 」


どれだけ、この心を保ち続けることができるか、人生の鍵です。


 「 劫 」 ( こう ) とは、インドの時間の長さです。

  四里四方の石に、百年に一回天女が降りてきて

  踊りを踊る、そのとき羽衣で擦り切れて、その石が無くなったのを

  一劫という時間の長さです。

  インド人はよくもこういう考え方が出来るものと思いますが、

  そいう長い時間の中で初めて出会うということです。

  それほど、人との出会いは貴重なものなのです。




 鬱陶しい、と思えた人が輝いて見えました。    







コメント
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