喜多院法興寺

住職のひとりごと

俳優、香川照之45歳での歌舞伎界入

2011-09-30 06:35:51 | Weblog
9月30日付 編集手帳 読売新聞
 {終戦後のこと、進駐軍が六代目尾上菊五郎の芝居を見物し、楽屋を訪問した。「何歳か?」と問われ、「61歳」と六代目は答えた。さらに「歌舞伎の芸歴は何年か?」と問われ、「61年…」
◆通訳が 怪訝 ( けげん ) な顔をしたと劇作家、宇野信夫氏が随筆に書いている(『かまわぬ見ます』)。六代目は1歳にもならない頃、鬼に抱かれた赤ん坊役で初舞台を踏んでいるから、 嘘 ( うそ ) ではない。
◆10代半ばでデビューしても「中年からの役者」と呼ばれるのが歌舞伎の世界で、六代目の0歳は特別としても、 梨園 ( りえん ) の御曹司は多くが子役としてその世界に入る。
◆45歳での歌舞伎界入りは異例だろう。三代目市川猿之助さん(71)の長男で俳優の香川照之さんが九代目市川中車を襲名するという。梨園から離れて育ったが、「代々つづく“舟”に乗らなくていいのか」自問した末の決断という。演技には定評のある人だが、因習の色濃く残る世界には苦労も待ち受けていよう。
◆父猿之助さんの著書『演者の目』に、自身を鼓舞した一節がある。〈 澤瀉 ( おもだか ) 屋の血は飛ぶんだ、飛ぶんだ、高く、高く…〉。旅立つ人に、その言葉をはなむけとする。}

 香川は猿之助と浜の長男として誕生したが、1歳2カ月のときに両親が離婚。浜に引き取られ、歌舞伎界とは無縁の俳優人生を送ってきた。猿之助とは絶縁状態が続いていたが藤間紫の仲介で、親子としての付き合いが再開され、脳梗塞を患っている父猿之助と現在同居している。 会見には来年6月に歌舞伎俳優デビューする長男、政明くん(7)五代目市川團子(だんこ)を襲名し、41年ぶりの復活となる名跡、中車を継ぐ決意を表明した。歌舞伎では「市川中車」、そのほかでは「香川照之」で活動予定。2つの名前を持つ歌舞伎俳優として、活躍を期待したい。