喜多院法興寺

住職のひとりごと

六十、七十ははな垂れ小僧

2011-09-25 06:45:16 | Weblog
9月25日付 編集手帳 読売新聞
 {〈六十、七十は 洟垂 ( はなた ) れ小僧、男ざかりは百から百から〉とは、107歳まで創作を続けた彫刻家、 平櫛田中 ( ひらくしでんちゅう ) さんの名言である。この言葉に、元気づけられる洟垂れたちが多いだろう。洟垂れ前でも活を入れられる。
◆ただし今なら、田中先生、女を忘れちゃいませんか、とお叱りを受けそうだ。今月時点で100歳を超えている人は全国に約4万8000人、その9割近くは女性である。
◆代表格、と言っていいだろう。今年6月に“女ざかり”の年齢を迎えた詩人の柴田トヨさんが先日、2冊目の詩集「百歳」を出した。ベストセラーとなった前作「くじけないで」も韓国、台湾、オランダで翻訳され、感動を呼んでいる。さらにイタリア、スペインで出版予定という。
◆「百歳」に収められた26編の最後にあるのが、3月30日付の本紙朝刊に寄せてもらった〈被災地のあなたに〉と題する作品だ。再掲したい。
◆〈最愛の人を失い/大切なものを流され/あなたの悲しみは/計り知れません/でも 生きていれば/きっと いい事はあります/お願いです/あなたの心だけは/流されないで/不幸の津波には/負けないで〉}

 僧侶の世界でも六十、七十ははな垂れ小僧とまでは言わないが、若手の部類に属する。御座主様も九十五歳で全国を飛び回っておられる。私も来年で七十になるが今のところ現役の住職として頑張っている。百歳まで元気な人は我々凡人とは違い、人間界の選ばれたエリートだと思う。瀬戸内寂聴さんは「若さを維持するには、ときめきを忘れてはいけない」と言う。近くにぽっくり寺があるが、人のやっかいになならずに、ぽっくり死ぬのが理想とされる。相田みつをさんは「極楽を保証されても娑婆がいい」と書いている。私は死ぬまで元気が最高の生き方だと思う。