兵庫県朝来市山東町粟鹿
出石神社と並び、但馬国一宮である。
一宮であるのに二つあるのは解せないが、時代により移り変わりがあったということだろうし、そういった例は但馬に限らない。
ここで、いわゆる諸国一宮を取り上げるのは若狭に続いて二社目だと思うが、私自身が参拝した一宮としては七社目である。式内社と同じで、一宮に対しても拘りは無いし、たった七社で一宮について言及するわけにはいかないけれど、一宮の中では落ち着いた神社であり、それでいて、やはり高い格式を感じさせるものがあるように思う。規模がそれほど大きくないにも関わらず、そこに湛えられた空気は神寂びて揺ぎ無い。
同じ集落内には、當勝神社という、これもまた立派な神社がある。それなりの世帯数があるとはいえ、これだけの神社を二社も維持管理するのは大変であろうし、他にも小さな神社が二社ほどある。地元の方が、いかに神社を大切にされているかの表れであろうし、そういった気持ちが、この神寂びた空気を作り上げる一つの力になっているのかも知れない。
京都府側から但馬に入る辺りで霧が出てきた。粟鹿の集落も霧に包まれており、いつもより穏やかな夜から朝への移り変わりの中、神社前に到着。
車道に対して参道は弧を描いており、向こう側にも鳥居がある。
手前に見えているのが勅使門で開放されていない。一般には奥の日の出門から入る。
社殿のある境内から門の方向を見る。手前には土俵がある。
日の出門には見事な木製狛犬がいるが、手水舎の照明の影響で、あまりに変な色合いになったのでボツ・・・。
拝殿。
周りは開けた空間になっているが、地面は緑に覆われ、周りは背の高い木に囲まれているので、晴れていたとしても適度な潤いと陰翳があるように思う。
拝殿と本殿。
本殿。
棟持柱に気付くまで、神明造とは思わなかった。
本殿左奥にある茗荷神社。
斜面の急坂を登った山腹には稲荷神社。
門から見れば、正面やや左にある厳島神社。
背後の杉は見事で、樹叢は朝来市指定天然記念物。
2万5千分1地形図 矢名瀬
撮影日時 081009 5時50分~6時半
駐車場 あり
地図
青垣町桧倉には、紅葉で有名な高源寺がある。お寺に魅力を感じないわけではないし、世間では神社好きよりもお寺好きの方が多いと思うけれど、私には天邪鬼なところがあって、しかも判官贔屓でもある。
地図を見ると、桧倉の神社は、その集落の外れの薄暗そうな谷間に記号がある。高源寺の陰に隠れて目立たないし、何だか片隅に押しやられているようでもあり、それだけでちょっとした愛おしさみたいなものを感じてしまう。
それに、もともと谷間にある神社は好きである。暗くてジメジメしていると捉える向きもあろうが、苔生して緑濃く、潤いある空間と見て取りたい。
高源寺への道を左に見て、集落の奥に向かって進む。人家が尽きると牛舎が現れ、その先で道が二手に分かれる。右に緩やかに下っていく道が神社への道だ。

動物避けの柵を開けると、谷を渡る橋、その袂にあるモミジの古木が迎えてくれる。
初めて訪れたときは神社名も知らなかったので、橋の向こうにある赤い鳥居を見て、小さな稲荷神社なのかと思ってしまったが、これは末社で、鳥居の右手にある苔生した道が、若宮神社への参道となっている。

やはり谷間はいい。深い緑に包まれ、清冽な水に触れる。

パイプは不粋だが、谷からの水が引かれた素朴な手水が気持ちよい。

ずっと曇天であったが、一瞬だけ晴れ間が覗き、薄暗い谷間が俄かに賑わう。

周りは殆ど人工林。だが、神寂びた空間に感じられる。

稲荷神社右手の苔生した参道を進むと、やっと鳥居が現れる。
周りの杉と同化したような色合いになって、存在を主張することなく溶け込んでいる。

緑の絨毯が敷き詰められた小道。
静かな───と言いたいが、時おり牛舎の方から、雄叫びのように鋭い牛の鳴き声が聞こえてきたりする。

木々の間に社殿が見えてきた。

参道の突き当りがちょっとした広場になっており、右手が社殿、左手は谷川を隔てて鳥居が立っているのが見える。以前はこちらに参道があったようだ。

苔生した石段でよい雰囲気だが、本殿覆屋がトタンの波板であるのが残念。

狛犬は、余所の子であろうと叱ってくれる下町の口煩いオジイチャンと、

叱られても懲りずに悪巧みする悪戯小僧、といった風情。

本殿。
2万5千分1地形図 大名草
撮影日時 081009 10時50分~12時
駐車場 集落内に高源寺参拝者用に設けられたと思われる駐車場がある。
地図
兵庫県豊岡市但東町河本
地形図を見て、川のすぐ横にあるこの神社が気になった。
境内にせせらぎが響くのは魅力的だし、湿度も高くなるから苔生していることが多い。谷間というほど山が迫った場所ではないけれど、とにかく流れに触れられる環境というものには惹かれる。
調べてみると、式内社であった。だが、それにしては随分と小さいようであるし、陰翳に富んだ風景でもなさそうだ。
行くべきか少し悩む。悩みつつ車を走らせ、結局、現地まで行ってしまう。
今回、写真は4枚のみ。最近では異例の少なさである。けれど、写真には写らない「居心地の良さ」といったものがあるように思う。あとは着眼点というか、風景を見つめる視点や感性の貧困さが原因だろうか。
車道から見る鎮守の杜は、やはり小さい。
狭い横道に入るとすぐに鳥居前。川沿いとはいえ、道路からの高低差は殆ど無く、ほぼ平地と言ってよい場所だ。
一目で社域が見渡せてしまう広さである。
境内と川との間には害獣避けネットが張られていて、残念ながら河原に下りることも出来ない。
が、何と言うか、素朴で長閑で、木漏れ日を浴びながら「ぼ~っ」としたくなる場所である。
朽ちて苔生した木の根元にはムシトリナデシコの花。
帰化植物ではあるけれど、鳥居脇の紫陽花とともに、神社を彩っていた。
2万5千分1地形図 出石
撮影日時 080717 10時40分~11時
駐車場 神社前にスペースあり
地図
兵庫県丹波市春日町黒井
恐らく、旧春日町で最も大きい神社であろう。町の中心近くにあって、神社の隣には高校もある。
どうも私が敬遠したくなる要素が多そうで、訪れるには躊躇いがあったのだが、昨年、友人とドライブをしている時に近くを通りかかったので立ち寄った。
確かに大きい。けれど、それは豊かな空間というべきものであった。
参道は明るすぎる。しかしそれも、思いの外の深さで広がる杜と、明暗の対比を際立たせる演出効果となる。
今回、写真を撮り直すために再び訪れた。
私は撮影の際、薄曇の天気を好むが、ここは何となく爽やかな印象があったので、そう写るような天気を選んでみた。
町の中心に近いといっても、やや民家が多いくらいで長閑な場所。
鳥居脇の狛犬は大きいものだが、かなり傷んでいる。
長い参道をのんびり歩くと、やがて二の鳥居。まずはその扁額の大きさに驚かされる。
大きいだけでなく、力強さを感じさせる。
参道のすぐ隣は氷上高校の通学路で、校舎もそばに見えている。学校の隣にこんな神社があるのは羨ましいなぁ、と思いつつも、高校生だったときの自分が、学校の隣に神社があったからといって喜ぶかどうかは微妙なところである。
でも、恵まれた環境であるのは間違いない。
広い境内ではあっても、背後の杜が豊かなので落ち着きがある。
爽やかな印象、と前に述べたが、それは、この清潔に保たれた空間からくるものかも知れない。
拝殿の彫刻は、なかなか凝っている。
拝殿前から鳥居方向を振り返る。
幣殿と本殿。電線が・・・。
重厚感のある本殿だ。
本殿背後から。
本殿右手より。
本殿背後は鬱蒼たる杜であるが、ここはどうも撮影が難しい。
この奥には磐座と思しき大きな露岩がある。
本殿左手奥にも小道があって、岩に龍神と刻まれた場所がある。
杜の、深い息遣いが聞こえてきそうな場所だ。
入り口近くにある境内社。
竹と落葉樹が涼しげな木陰を作る。
2万5千分1地形図 黒井
撮影日時 080831 9時50分~11時
駐車場 神社前駐車可
地図
神社のある場所を地形で大まかに分けると、「山頂、尾根上」、「山腹」、「山裾」、「谷間」、「平地」の五つになると思う。中には中間的なものや例外もあるけれど、この括りで言えば谷間にある神社に最も惹かれる。
この佐々伎神社は山頂型である。山頂といっても小さな尾根上のピークであり、車道からの高低差も30メートルほどの小山なのだが、どうも私はこの山頂型が苦手なのである。
山頂だから、当然のことながら周囲より高いわけで、山頂周りの木々の背後は空中であるわけだから、奥深く樹林が続くなんてことは有り得ないわけで、しかも基本的には日当たりが良いから、写真を撮る上で、奥行き、陰影ともに表現し難いのである。
勿論、登りがシンドイという理由もないわけではないけれど・・・。
案の定、撮影は難しかったが、山頂型としては、樹叢は豊かな神社だと思う。

集落の端っこ、集会所の横に神社の入り口がある。

参道途中、左側に「なんじゃもんじゃの木」というのがある。「なんじゃもんじゃの木」というのは、その地方ではあまり見かけない木に付けられる俗称のようなもので、同じように呼ばれている木が各地にある。近江の沙沙貴神社にもあるのが面白い。近江のものは正確にはヒトツバタゴという木であるが、ここ、但馬の佐々伎神社のものはカゴノキである。

石段横に立ち並ぶ杉は、なかなか立派なもの。

振り返ると、鳥居周りの空間が緑と木漏れ日に包まれていた。光と影が、対立せずに溶け合うかのよう。

どういうわけか、よく観光地で見かけるような、顔を出して記念撮影する平安装束の人型看板がある。目障りだったので石灯篭の背後に隠れてもらうが、隠し切れず。
本殿は側面がブルーシートで保護されており、これはちょっとあまりにも目障りだったので割愛。風雪や雨から本殿を守るためであるのは判るけれど、ブルーシートは・・・。
2万5千分1地形図 出石
撮影日時 080717 11時20分~11時40分
駐車場 なし 集落の入り口近くで道路がかなり広くなっている。
地図
兵庫県篠山市今田町黒石
今田町が「こんだちょう」であることを、つい数年前まで知らずにいた。ずっと「いまだちょう」だと思っていたのである。つまり、私の中では、ちょっと影の薄い存在で、合併により篠山市となってからも、なかなか訪れる機会が無かった。
地形図を見れば、篠山市の他の地域とは様相を異にしており、実際に車で走ってみても、その風景は篠山とは違うように感じた。
神社にしても、篠山では春日神社が多いが、今田町では住吉神社が多くなる。
紹介するのも、やはり住吉神社で、影の薄い地域(と私は思っている)ではあるけれど、わりとお気に入りの風景で、二度、訪れている場所である。
すぐ後ろはバス停で、道路と田畑、民家があって日当たりも良いが、神社側は、なかなか見事な樹叢である。
鳥居と鬱蒼とした木々、奥の高みに拝殿、という構成に、私はいつも惹かれてしまう。
しかも西向きなので、午前中は神社の斜め後ろあたりから日が射し、陰影を描いてくれるのがいい。
拝殿と本殿。
社殿周り、拝殿の屋根に雑草が生えているけれど、これくらいは夏の風情。
境内社。
境内は狭いが、土俵と大木、磐座があって賑やかである。
2万5千分1地形図 谷川
撮影日時 080820 10時~10時45分
駐車場 なし すぐ近くに道路が広くなっているところがある。
地図
兵庫県豊岡市出石町桐野
但馬方面へ足を伸ばした際に、出石の近くを通った。
出石の町は過去に通過したことはあるのだが、どうも観光地のイメージがあって、市街地周辺の神社には行く気がしない。けれど、せっかく出石まできたのだから、という思いもある。
そこで、中心から外れた場所にある、御出石神社に寄ってみることにした。
辺りは水田の広がる長閑な山里で、出石の中心からは3キロも離れていないが、観光客の気配も無い。
しかし、社域は広大で、その鎮守の杜は、かなりの広がりを持っており、ただの山里の神社というわけでもない。
広く、静かで、明るく、風のよく通る、とても爽やかな印象の神社である。
どこに入り口があるのか少し迷ったが、社域の東側に鳥居があった。
鳥居のそばで腰掛けられていたお爺さんと暫し談笑。ここらでこれだけの参道があるのは、ここと出石神社だけ、とおっしゃっていた。
参道両脇の木々は、鬱蒼というほどでなく、けっこう明るい。ただ、杉林は左右に広く続いており、しかも平坦地なので、山里の神社としては異例の眺めである。
神門の向こうには本殿の屋根が見えていて、かなり大きな建物であることが判る。
神門の手前を車道が横切っているが、狭い道で、車は滅多に通らない。
神門の前から鳥居方向を振り返る。
このブログをよく見て下さっている方ならお解りになるかと思うが、典型的な私の好きな風景のパターン・・・。
神門越しに、同じ風景を。
拝殿。
社殿周りは木々が少なく、かなり明るい。
本殿は大きいが、周りが開けているので威圧感もなく、すっきりとして感じられる。
いつものことながら、もし鬱蒼としていたなら、と、つい考えてしまう。とても陰影に富む厳かな本殿になると思うのだが。
林縁にはキツネノカミソリの花。
私にとっては、とても夏を印象付ける花である。
2万5千分1地形図 出石
撮影日時 080717 9時40分~10時20分
駐車場 鳥居前付近に駐車可
地図
地図を見て頂ければわかるのだが、神社の背後には舞鶴若狭自動車道が通っている。この位置関係からすると、恐らく神社の風景を損じている筈、と考えて、近くを通ることはあっても立ち寄ろうとせずにいた。
前々回の記事と同じようなパターンだけれど、先日、ここと相互リンクして頂いている「久延毘古 独言」さんで、この大歳神社が取り上げられていた。そこに紹介されていた光景は、予想に反した深い緑であり、今まで行かずにいたことを残念に思うと同時に、強く心惹かれたのである。
その「久延毘古 独言」さんの方は、「丹波のことは?」さんから聞いたそうで、もう今さら私など出る幕は無いのだけれど、考えてみれば、このブログを開設する前から、「久延毘古 独言」さんを参考にして神社を回ったことが何度もあるので、それこそ、今さら、なのだった。

集落の狭い道の先、そばに民家はあるが、鳥居奥には大木が聳え、まさに「杜」を形作っている。高速道路の気配は全く感じられない。

参道は短いが、奥深さを感じさせるもの。

雲が切れ、日が射してきた。

特に装飾もされていない拝殿だけれど、周りの環境に溶け込んでいる。

杜の気に包まれて、零れてくる日差しは柔らかい。

本殿右側の境内社。

本殿左側の境内社。

大木と光と、奥に続く緑が、空気の透明感を気付かせる。

境内左奥の境内社。
背後は竹藪で、涼しげな緑と風音。

本殿。
静かに、溶け込むようでいて、揺ぎ無い気配。
2万5千分1地形図 篠山
撮影日時 080723 9時10分~10時
駐車場 神社手前の公民館に駐車場あり
地図
地形図に名称がある割には、小さな神社である。
参道かと予想した道は農道であり、鬱蒼とした木々もなく明るい境内であったが、南側に山があるためか、部分的に見事な苔が見られたし、大きな狛犬も出迎えてくれた。
実のところ、この神社の写真は、大量に眠っている過去画像の山の中に埋もれていたのだが、先日、ここと相互リンクして頂いている「丹波のことは?」さんで紹介されていたので、引っ張り出してきたのである。
出来れば新しい写真を載せたいと思うし、カメラも今とは違うので良いものとは言い難いのだけれど、なかなか撮り直しに行けるものでもないし、かといって、その魅力を紹介しないのも勿体無い。ということで、多少の写りや画質の悪さはご勘弁を。

集落に入ったところで右折し、農道の突き当りが神社入り口。

整った佇まいに、大きめの狛犬。

写真では、その大きさが伝わりにくい・・・。

本殿の木組みは重厚感ある見事なものだ。

そして、境内の片隅では苔が見事。
こういった山里の狛犬や本殿、あまり顧みられることが無いし、いつの間にか狛犬が新調されていたり、本殿が建て直されたりすることがあるけれど、今一度、その価値を見直してみる必要があるのではないだろうか。
2万5千分1地形図 黒井
撮影日時 070621 8時10分~8時40分
駐車場 なし 神社前に駐車可
地図
兵庫県朝来市和田山町宮
京都府の旧夜久野町と、兵庫県の旧山東町、旧和田山町が接する辺りは夜久野高原と呼ばれる。
地形図を見てみると、いかにも火山地形といった様相を呈しており、かつては谷間であった場所が、溶岩等で埋められて高原状になったであろうことが想像できる。
その溶岩台地が、和田山町側に舌状に迫り出した先端部に神社記号がある。これは面白そうだ、と思った。
地形図には名称が載っていないので、他の地図で調べてみて、まず石部神社であることを知る。次に、この神社の情報がネット上に無いかを調べる。
あ、ここだったのか・・・以前に見た覚えのある記事を二つほど見つけた。
既に紹介されているのは残念だが、火山帯らしく、神社前に湧水池があるということに惹かれて行ってみることにした。
神社前の写真は、あまりに出来が悪いので割愛。
鳥居は随分と離れた場所、北側と西側にあるが、そこから神社までは、参道というより単なる車道である。
境内に入って正面に拝殿。予定より早く着きすぎて、まだ薄暗い早朝の光景。
拝殿前の狛犬。一日の始まりを見守る風情。
拝殿と本殿。どうやら北向きのようである。
北西方向を撮る。こちらは水田地帯なので、外は明るい。
本殿東側に、ぽつんと境内社。
神社前にある神池。衣摺の泉とも言うようである。
境内の鬱蒼としたところにあれば良かったのだが、車道横である。
しかし、水の美しさは見事。
錦鯉の鮮やかさも、水面に映る木々の幽邃な様も、水の美しさ故だろう。
池の撮影をしていると、地元の方が参拝に来られた。
「いい写真が撮れましたか?」と尋ねられたが、正直、あまり上手く撮れた気がしない。
その方が去ったあと、その後姿と集落を撮った。朝の淡い光に包まれる水田と集落。集落の手前には鳥居も見える。これが、一番お気に入りの写真になった。
2万5千分1地形図 直見
撮影日時 080717 5時~5時40分
駐車場 神社前(池の横)に駐車可
地図