a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

市場原理主義経済と計画経済

2010年02月13日 | 理論
 前回は失業の話をしたので、その続きではないが、今回も経済の話。

 今、一昨年のリーマンショック以降、市場原理主義経済の問題点が指摘されている。と同時に、マルクスなどがまた注目されだし、マルクスの言葉ではないが歴史とは循環するものといえるのかもしれない(ただし、マルクスの言葉では、二回目はパロディとして、なのだが)。

 ただ、リーマンショックのような市場原理主義経済の失敗も、それから社会主義諸国がとっていたとされる計画経済の失敗も、両者とも同じ欠点に起因している点があるというのが、私の個人的見解である。

 というのも、この二つの立場、一見両極的に見えるが、ともに人間の行為について過度の信頼を置いていると、言えるのではないかと思う。計画経済は、人間が個々人の集合行為を全体としてプログラムできる(計画できる)と考えていた点が。そして、市場原理主義の場合は、個人が利益を最大化する行為を合理的に計算し、判断できるという点。この両点は、人間の理性的行為に二つの立場がともに過度の信頼を置いていたということだと言える。

 無論、現実には、社会主義諸国の崩壊は、硬直した官僚主義の問題や、密告などを奨励した秘密警察や様々な統制などがあったと思うが(そう言う意味では人間の行為への信頼どころか不信感のほうが現実には強かったと言えよう)。ただ、リーマンショックなど金融派生商品の過度の暴走に関して言えば、いかにしてリスクを自分が背負わないか=他人に押しつけるかという点にあったことを考えれば、他者への信頼関係などあったものではないと言えるが。

 上の二つの点は、理論と現実の違いという風に捉えることもできるが(ゆえに、計画経済にしても市場原理にしても現実を見誤っていたと言えるかもしれないが)、それよりは、この両極的な二つの立場が、原理的には同じ性質を持っていたという点、これは新しい社会制度を考えていく上では、重要なのではないだろうか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。