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「世代間格差」は疑似問題:その2

2015年01月17日 | 社会問題
 前回の話の続きである。

 前回の話では、人生前半期の社会保障が多い国は、人生後半期の社会保障も手厚い。よって、世代間格差は、社会保障を抑制しているが故に起きる問題ではないかという話をした。つまり、現役世代にも必要な補助を出せば、現役世代vs高齢世代という対立は、なくなる、もしくは緩和されるということである。

 しかし、上の論では欠落している点もある。それは、社会保障費を負担する側とそれを受ける側では、対立があるのではないかということである。

 社会保障が、人生前半期も後半期もともに手厚くても、それを負担する世代と享受する世代の間では格差or対立が出てくるのではと。

 ただし、社会保障が手厚い国は、そうでない国に比べて出生率が高いため、日本ほどいびつな人口構造をしていないことも、理解しておく必要があるだろう。

 日本の場合は、戦後のベビーブーマー世代の人口が多いため、それを支える下の世代に大きな負担がのしかかることになる。ただ、人口構造がもっとしっかりしており、下の世代の人口もそれなりに維持されていれば、負担の大きさも緩和されていたのではないだろうか?

 ちなみに、そうした際に重要になるのが、人生前半期の社会保障である。子育ての支援などが充実していれば、当然、子供も産みやすく、育てやすい環境になる。そうした社会保障が行われることで、人生前半期も必要な保護を受け、上の世代を支えることもそれほど負担ではなくなるというわけである。

 私は、大陸ヨーロッパの社会保障を念頭に置いているのだが(と、言いつつもドイツの出生率は日本と変わらないぐらいに低いが)、例えば現在の仏は、諸々の策が効果を上げて、女性の就業率が85%にもかかわらず、出生率が2を越えている。
 それでも、この種の問題はそんなに簡単ではなく、出生率が上がった世代が就学年齢に達するまでは、就学児童の数は減るらしく、数年前は教員の数を削減することが議論されていた(でも、その後は就学児童が増えるはず)。

 それから、仏に関して言えば、年金改革問題は大きな問題で、上のように単純に「解決」できるものではない。

 ただし、その問題を「世代間対立」という視点で捉えるのは、やはり問題の本質を見逃すことになると思われるのだが、どうだろうか?


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