a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

ポピュリズムを眺めていて

2021年04月29日 | 社会問題
 
 数ヶ月前、欧州とトランプのポピュリズムに関する報告をある研究会でさせていただいて、なかなか好評だったのだが、現在その論文化に四苦八苦している……。

 この『ポピュリズムとは何か』という著作について、けっこう前に読んだ当時は、ポピュリズム現象を包括的にまとめていて、すごく良い本だと思った。

 無論、その評価は今でも変わらないのだが、自分で勉強や資料集めを進める中で、必ずしもこの本で扱われていない重要な部分もわかりはじめて、その点では、現在では、不十分というか、足りないところもあると思う。

 無論、多様で、様々な事例のある問題現象を包括的に一冊の本にまとめるという作業は難しいものであり、その点では、この本の評価はいささかも変わらない。

 他方で、個別事例(私の対象としてはフランスの国民戦線など)を見ると、現実の問題や社会情勢によって、立場や主張を変化させてきて、その変化=「つじつま合わせ」に、ポピュリズムの本質があって、そこを見なければならないと、個人的には考えている。

 そう考えると、コロナ問題へのトランプ政権の対処の仕方とか、かつての安倍政権・現在の政権の対処の仕方、また大阪の状況などを見ていると、さもありなん、と考えてしまうところもある。

 既成の体制を敵と見なし、それに批判を投げつけることで、社会的不満を持っている人々の支持を得る。そして、その人々からの支持を、自らの権力基盤として、政治を行っていくという手法のむなしさは、今回の問題への対処を見ていると、明らかである。そう、私には思われる。

 人々の支持を得るべく、自分の、あるいは人々の見たいものしか見てこなかった政治手法は、見たくない現実に対処するには、あまりにも未熟であると言うべきか。

 「現在の経済状況は、政治が不当に規制をしているから」と既得権益批判をすれば人々の支持は得られるかもしれないが、「現在のコロナの状況は医療体制に不備があるから」と規制制度を批判しても、それでコロナ感染の現状が変わるわけではない。「経済が良くなれば社会も変わる」というスローガンは人々を引きつけるかもしれないが、「ワクチンが広まれば状況は改善する」と喧伝しても、現実にワクチンが供給されねば状況は現実には改善しない。

 これは、かつてのトランプ政権を見ていても同じ事。そうしたことを考えたのだったが……。

 それはよいとして、問題は自分の論文。果たしてどうなるのだろうか?(苦笑)


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