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“男のためのガーデニング”改め

「井戸神社のカツラ」~滋賀県犬上郡多賀町向之倉~

2021-02-17 06:20:20 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 多賀町と岐阜県・三重県につながる鈴鹿山系の山には、なぜこんなところに集落があるのかと不思議に感じるような山中に集落があり、廃村になっても守り続けられている信仰が残ります。
「井戸神社のカツラ」は以前から一度訪れてみたい場所でしたが、湿気の多い時期や夏場には山ヒルが多い場所ということで冬場まで訪れるのを見送っていました。

冬になりいよいよ「井戸神社のカツラ」を見ようと芹川沿いの県道を川内方面に向かって進んで行くと、地図に「屏風岩」と表示され、山の上方に巨大な一枚岩が見えてきます。
屏風岩は正確には「芹谷屏風岩」と呼ばれているといい、ロッククライミングのクライマーの名所となっているとか。

屏風岩にも驚きましたが、もっと驚いたのが山の上部に道が見えたことで、調べてみると山の上には「屏風」という集落があるといい、冬季は無人になるものの人が住んでいるといいます。
一部しか知らないとはいえ、鈴鹿山系に点在する集落の多さには驚くばかりです。



県道を進めば「河内の風穴」ですが、途中で芹川に架かる橋を渡り廃村となっている「向之倉」集落へと向かいます。
「向之倉」集落への道も急カーブこそ少ないものの、道は離合不能なほど細く、落石も多い。
落石をすり抜けようとすると、ガードのない道の崖側へ車を寄せることになりヒヤヒヤものです。

朽ちそうになっている家屋が見えてくると、そこは集落の跡。奥深い山の集落跡へ到着です。
案内板がありましたので車を停めて細い道を歩き出しますが、山ヒルや蛇はいない時期とはいえ、今度は獣に遭遇しないかと怖ろしくなる。



カツラの巨樹がある場所は、井戸神社のかつての境内となるのだと思いますが、山の中にぽっかりと開けた窪地のような場所。
曇り空で陽の光が差し込んでいなかったこともあって、幻想的な空間は異界へ迷い込んだかのような錯覚を起こしてしまいます。



山の奥地にあり人っこ一人いないにも関わらず、何か周りの森がザワザワとしていて、物音がうるさいが何の音か分からないし、動くものは何も見えない。
もし、水木しげるさんがこんな天気の日の朝にここを訪れていたら、どんな絵を描かれるのだろうと想像してみる。

おそらく日常とはかけ離れたこの場所を、精密な精緻で描いた異界の姿を描かれるのではないでしょうか。
ここに棲む目には見えないものまで描いてくださるかもしれませんね。



「井戸神社のカツラ」は主幹より大小12本の幹に分かれて株立ちしていて、幹周は11.6m・樹高39m・(推定)樹齢は約400年。(滋賀県指定自然記念物の看板)
株立ちした幹はそれぞれ天に向かって真っすぐに伸びていて、その神々しさには何か宿るものがあっても不思議ではない。



境内地と思われる窪んだこの場所の一番低い所には、かつて集落の井戸として使われていたのかと思われる沼地があります。
地元の言い伝えによると、“この沼地には大きな巳様(蛇)が住んでいて、年一回の沼ざらえの時には、カツラの木の中に移られる”との白蛇伝説があります。



カツラの樹の後方に祀られた井戸神社の御祭神などは不明なものの、多賀大社の末社という話もあります。
井戸神社で祭典が行われる時は多賀大社の神主さんが来られて神事を務められ、その際には集落を離れた方も戻られるそうです。



井戸神社にお参りしてもう一度カツラの樹を眺める。
根を張っている場所は沼地(井戸)のすぐそばですから、豊富な水を吸い上げてこのような巨樹になってきたと思いますが、幹周が12mあるというのはもの凄い迫力です。



上を見上げてみても垂直に伸びた幹の林立には、神々しくもあり、幻想的でもある姿に言葉もありません。
カツラの樹を中心としたこの窪地にいると、別世界や異界にいるように思えてならないのです。



向之倉集落は、昭和40年代に廃村になったとされていますが、井戸神社やその周囲は荒れ果てた感がありませんので、年に何回か整備に来られる方がおられるのかと思います。
廃村になってから50年ほど、集落は消滅状態とはいえ、鎮守の神社は今も護られています。



来た道を戻り車に乗り込んだとたんに雨が降り出し、雨が降るなか細い林道を恐々と県道まで戻ります。
芹川に架かる橋まで戻り、川を眺めると巨石がゴロゴロところがる川の風景に見惚れます。



もっと芹川の上流域の河内辺りまで行くと、また川の良さが増してきますが、今回はここから眺める。
ここより下流側は川岸整備が整い過ぎてしまいますので、源流に近いこの辺りが見るには良いのかもしれません。



さて、県道に入るとさらに雨脚が強くなり、ザーザー降りとなって雨はなかなか止むことはありませんでした。
「井戸神社のカツラ」に居たのは雨が降り出す前のギリギリの時間だったようです。
何か巡り合わせの縁みたいなものを信じたくなります。



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