僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

「河合 元行者窟」と「河合不動尊 天の恵みの水」~多賀町権現谷~

2021-12-06 18:02:02 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 霊仙山は多賀町と米原市にまたがる標高1094mの山で、多賀側の山中には廃村や限界集落が点在しており、その神秘的なまでの光景を見に訪れることがあります。
車の対向も出来ないような林道を進むのもある意味で恐怖なのですが、携帯電話は圏外となり、クマやイノシシやマムシやヤマビルなどに遭遇する怖れもある。

そんな場所でありながらも訪れたくなるのは、手つかずの自然が残しながらも、かつて人が生活していた息吹きが感じられる異界のような魅力があるからでしょう。
「河内の風穴」のある辺りを通り過ぎて権現谷の林道へ入ると、怖さや危なさを感じつつも多賀の山中の神秘的な光景に圧倒されます。



権現谷へ入ったのは「河合 元行者窟」が見たかったためですが、道には落石が多く、何度も落石をどけながら進むことになり、途中には土砂崩れの跡に何回か出会うこともかあって恐る恐る進むことになる。
林道の途中には石が積まれて中央には地蔵石仏が祀られていて、供えられた花は鮮度がありましたので、ここまでやってきてお地蔵さんのお世話をされている方がおられるのでしょう。



「権現谷林道」は芹川の源流域に沿った道でしたが、川には巨石がゴロゴロと転がり、林道の両端には剥き出しの岩の壁に挟まれた道です。
突然現れてあっと驚いたのは、「河合不動尊 天の恵みの水」と呼ばれる巨岩と勢いよく流れ出る湧き水でした。



突き出した巨岩の迫力の凄さ、両端から流れ出る水量の豊かさに圧倒されてしまう中、、川にかかる川霧がなんとも幻想的な空間を造りだしています。
「河合不動尊」と名は付くが、周辺に祠のようなものはないため、不動明王との関連は分かりませんが、圧倒的な存在感が不動尊と名乗らせているのかもしれません。



大岩の下から流れ出る湧き水は、水量の多さも素晴らしいが、周辺の岩の造形も美しい。
水の透明度もクリアーで、冷たそうな水です。



実際に流れの直下まで行かれる方もおられるそうですが、当方が行くにはアドベンチャーが過ぎすぎますね。
「権現谷林道」は、登山なしで見られる渓谷としては滋賀県屈指なのではないでしょうか。



大岩を正面から見ると、岩の左右から水が湧き出ているのが分かります。
道は半ばですが、権現谷へ来てよかったと思える光景です。



小さな滝のような姿の湧き水は。右の方が大きく、左がやや小さい。
川には巨岩がゴロゴロしていて、見応えがある。
巨岩の多いこの川の様子を帰り道にもう一度写真に撮ろうと思っていましたが、後述する事情により撮れませんでした。



芹川上流域には、土石流防止の堰堤がいくつかあり、そのうちの一カ所ではエメラルドブルーの水を見ることが出来ました。
透き通るような透明度と、水深があるのでしょう、水は青みがかって美しい。



この堰堤にいた時に、地響きするような轟音が聞こえてきて何事かと驚く。
しばらくしたら音が止みましたので先へ進みます。細い林道ですが、多賀の山中の林道では落石の多さを除けばまだましな方かと思える道です。



下は道が途絶えたように見えますが、2枚の巨岩の間を通る道です。
「太郎坊宮の夫婦岩」の林道版のような道ですが、この辺りからどこまで行ったら「河合 元行者窟」があるのだろうと不安になってくる。



不安な気持ちのまま進むと、ほどなく「河内 元行者窟」の看板を見つけます。
周囲を見渡すと対岸の急登に鳥居を発見。





鳥居の奥にある急登を登れば岩窟があるようですが、川へ降りてあの坂を登る勇気はない。
かつてこんな山奥の岩窟で修行していた人がいたというのは、よほどの覚悟がないと出来なかったでしょうね。



ここで再びエメラルドブルーの堰堤の近くで聞いた地響きのような轟音が聞こえてきた。
パンパンという音もしたので猟師が鉄砲を撃っているのかと思ったが違う。その矢先、近くの崖の上から数十キロはある岩が次々に落ちてきた。
パンパンという音は落石が岩に当たって鳴る音のようだ。

「落石注意」の看板がある所は多いが、あんな凄まじい落石は初めて見ました。
当たったら死ぬか大ケガ、大きな岩が林道に落ちたり土砂崩れがあったら道が封鎖されて山に閉じ込められる。もちろん携帯電話は圏外。
“早くUターンできる場所を探して避難しよう”と一目散に逃げることにしました。



「権現谷林道」は8月盆頃の大雨で土砂崩れで通行禁止になっていた道で、この日も土砂崩れの跡が生々しく残っている状態でした。
山は怖いなぁと感じる瞬間でしたが、あの轟音と連続して落ちてくる大きな落石は本当に怖かった。

河内集落まで戻ってきてホッとしましたが、かつて舗装もされていない山道を生活道路として移動していた人達はさぞ大変だったことでしょう。
山道にあるお地蔵さんに手を合わせて、旅の安堵を祈られた気持ちが少しだけ理解できました。



「下ノ地蔵尊」は大きな岩に浮彫された地蔵尊です。
県道をかなり下ったところに祀られていて、お顔はかなり風化していますが、とても穏やかな表情に見えたのは、無事戻ってこられた安堵感からだったのでしょう。



山麓の集落へ行くと、かつて大雨が続き、山が鳴き出した後、土砂崩れが起こり土石流が集落に流れ込んだといった話を聞きます。
権現谷で聞いた地響きするような轟音は、「山が鳴く」という現象だったのでしょうか。
まさに山は生き物。“お前はここへは来るな!”と山から追い出されたのかもしれません。



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