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“男のためのガーデニング”改め

『ぴかっtoアート展-それぞれのカタチ-』湖北巡回展~長浜市 北国街道 安藤家~

2020-09-21 16:46:15 | アート・ライブ・読書
 障がいのある人による公募作品展『ぴかっtoアート展-それぞれのカタチ-』の湖北巡回展が長浜市の北国街道 安藤家で開催されています。
「ぴかっtoアート展」は滋賀県内の知的障がい者が心のおもむくままに作った作品を公募し、発表することにより作者に生きがいを持ってもらい、地域社会に理解してもらうことを目的としています。

北国街道 安藤家で開催された美術展は、昨年イオンモール草津で開催された「第9回 障害のある人による公募作品展」の受賞作品から14作品を公開する湖北巡回展となる。
令和2年度も11月27日より「第10回ぴかっtoアート展」が開催される模様で、入賞した作品は来年また巡回展で公開されるのかと思います。



会場となる安藤家は、明治38年から大正4年にかけて建てられた近代和風建築の家で、北大路魯山人が逗留して、書や篆刻の制作に打ち込んでいた時期があったことで有名です。
魯山人は、篆刻家・画家・陶芸家・書道家・漆芸家・料理家・美食家と様々な顔を持つ人物で、安藤家の離れの書院「小蘭亭」の美術装飾を施したとされます。



「小蘭亭」の襖に描かれた『長楽未央千秋萬歳』という中国の故事は“楽しみはまだ、これから、いつまでも続く”の意で、今回の湖北巡回展のキャッチコピーにもなっている。
アールブリュットと明治の豪商の建築物との組み合わせは見逃せない美術展ですので、さっそく足を運ぶことになりました。



安藤家は室町時代から長浜に移り住んだ旧家とされ、賤ケ岳の合戦で秀吉に協力して長浜の自治を委ねる「十人衆」となり、江戸時代には十人衆の中から選ばれる「三年寄」となったようです。
安藤家は明治以降は、商人となって東北地方を商圏として、福島県に百貨店・中合を展開したといいます。(百貨店・中合は2020年8月31日に廃業)



安藤家のノレンをくぐって玄関に入ると、正面には「ひきかえる」の大きな置物が置かれている。
この「ひきかえる」は杉の木の一本彫りでは日本一の大きさとされており、台となる松の一枚板は樹齢500年以上のものだと云われている。
“ひきかえる”は、“客を引く”との語呂合わせで、当地方の商家では店先に置くと縁起のいい置物として大切にされているという。





美術展は撮影禁止ですので気になった作品を羅列します。

「ゴリラ」:細い線を重ねて質感を感じさせる作品で迫力満点で、繊細に描かれたゴリラの絵とは対照的に顔の表情に妙な愛嬌があるのが魅力的。(入賞作品)
「カラフルな空模様」:アクリル絵の具と水彩絵の具で青と紫を主として黒と黄色と白を使った抽象画。
興味深いのは絵のあちこちにバターナイフや竹串で突いた穴が開いていること。計算されたものではなく感情由来のものなのだろう。(佳作)

「和服姿の美人女性」:あっと驚く見事なこの作品は小さな紙を爪楊枝で丸め筒形にして、創作した美人画。
美人画の表現力も見事だが、色彩感覚や作り方ゆえ凹凸のある作品の立体感にも魅了されます。(入選)
「やぎくんの目」は約90cm角のパネルにボールペンで無数の目を書き込んだ作品。
大きさゆえの迫力もありますが、描き込まれた目(丸)は力強く、離れて見ると無数のクレーターのようです。(佳作)

他にも陶芸作品やダンボール作品など個性的な作品は多岐に渡り、大賞を取ったのは「パルテノン神殿(展示は写真のみ)」で、この作家の方は2年連続での大賞受賞だとか。
高さ70cm・重量33.7Kgの大作で、いつかパルテノン神殿へ行って採掘したいという想いが作品制作の発想につながったそうです。
神殿が柱だけなのは、見た人が自身の神殿をイメージして欲しいから...とのこと。


パルテノン神殿

安藤家には「古翠園」という庭園があり、布施宇吉という庭師が10年の歳月をかけて作庭したとされます。
庭は玄関から入って広間へ入る時にまず見え、奥の客間の縁側から全体が見渡せる。



更に奥へ進むと離れ書院「小蘭亭」が見えてくる。
小蘭亭は現在非公開のため雨戸が閉められているが、飾り窓や渡り廊下の柵からは異国情緒が漂います。



渡り廊下の入口からは立入禁止となりますが、廊下の床も独特の雰囲気があります。
随分前に一度中へ入ったことがありますが、凝りに凝った美術作品といった感のある書院で、他ではあのような部屋を見たことがない独特の世界観の内装でした。



奥座敷には北大路魯山人による篆刻「呉服」の九尺(2.7m)の大看板が展示されており、「呉」は亀・「服」は鶴を表すという。
北大路魯山人は、美術家としての評価とは裏腹に、傲慢な態度と辛辣な物言いによる悪評も高く、不運な幼少期と早熟な才能からくるのか、かなり気難しい人だったとされています。
ちなみに、漫画「美味しんぼ」に登場する美食家・海原雄山のモデルは北大路魯山人だともいいます。



安藤家には表玄関の他に内玄関があって、そこにも庭が設けられており、さほど広くはない庭ではあるものの、雰囲気は充分です。
豪商の旧家には外からは見えないけど、中には贅を尽くした庭があるようです。



安藤家を出て街を歩いていると道路越しに「長浜タワー」と「開知学校」が見える。
「長浜タワー」は1964年に建てられた5階建てのビルで、好景気だった頃の長浜のシンボルタワーだったが、今は珍名所となっている。
「開知学校」は1874年に町民の寄付によって建てられた学校で、上部に八角形の櫓を設けたモダーンな建物です。



『ぴかっtoアート展-それぞれのカタチ-』に出展されていた作家は、今まで名前を聞いたことのない方ばかりで、滋賀県の障がい者アートの奥行の広さに驚きます。
作品を造る作家の発想は自由。観る方の受け取り方も自由。アールブリュットの一つの魅力です。


コメント
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