超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

北東北を訪れる

2016-09-20 23:19:43 | 職場
 北東北のとある都市に出張することとなった。青森県の東南部太平洋側に位置する港と工業都市で名前くらいしか知らなかったが、東北有数の大都市のようである。その昔、新青森まで訪れたことがあるが、この地の降り立ったことはなかった。今回はかなり大きな規模の施設整備工事があり、特殊な工程も多いことから安全に手順が守られているかどうかも含めて現場の状況を確認しに行くことになったのである。素晴らしく早いもので、北海道まで延びた新函館・北斗行き「はやささ号」に乗ること2時間45分、停車駅は大宮を出ると、仙台、盛岡のみ。他にも行くところと打ち合わせがあるので宿泊となったが、普段だったら当然のように日帰りになるところだ。交通網が整備されるというのは便利なものだが、このせいで私の出張しうる先に「日帰りできないところはない」ことにほぼなってしまい、「ついでに」と見聞を広げる機会が減ってしまったのは正直、ありがた迷惑なことである。

  

今回の現場確認&見学は主に高所で行う作業の安全手順についてが中心だ。高さ2mを超えるところで行うのを高所作業というそうだが、正しいヘルメットの装着はもちろん、梯子などの上り下りの仕方、安全帯の使用、落下防止の措置など山のような決まりがあり、作業者はひとつひとつの手順を列車の運転手のように指差呼称しながら進めていかなければならない。ご本人の安全のためとはいえ、装着する器具・工具は年々重装備になり、確認作業も増え続け、マニュアルだけでもかなりの分厚さになってしまう。私は時速320kmで走る「はやぶさ号」でその文書に目を通した後に(ちゃんと仕事する時もあるのだ)何か複雑な気分になっていた。新幹線の座席にはRトレインショップという、面白、便利、お買い得アイテムをカタログがあり、以前グンマに通勤していた時にはふた月毎に新しくなるのを楽しみにしていた。その中のDIY工具の部があり、4メートルはあろうかと思う脚立に登ったゴム製クリーナーを手にした外国人の女性がてっぺんで2階のガラス窓を拭きながらにっこり笑顔でこちらを振り見ている画像である。

「新幹線の通販カタログで屋根まで届く脚立に登った女性はノーヘルメットで笑っていました。一体我々の安全作業、ルールとは何か?考えさせられますね。むろん、頻度や確率というのはあるでしょうが、ハード(装備)がいくら進化したってソフト(心)なしには役には立ちません。決まりを守らないとペナルティなんていうのは本論じゃないですよね。逆に「ヘルメット装着禁止」としたら、どんな人だって絶対に安全帯をつけて細心の注意をもって正しい手順を踏むでしょう。落ちたら大怪我するのは自分ですから。。。」以前、安全朝礼で「何かしゃべって」と言われてそんなことをグンマで話したことがある。驚いたことに「はやぶさ号」の座席にあったカタログの同じガラスクリーナーの広告では女性がヘルメットを被っていたのである。後に懇親会で「安全作業、と口ではくどく言うよりも、こういう機運の高まりというか、時節の流れってのを肌で感じる方が大事よね」と合流した東北部門のチーフに申し上げておいた。

この街の名を聞くと私が思い浮かべるのは「壬生義士伝」と「B1グランプリ」である。前者は本でも読んだが、南部藩という貧しい国の悲しく健気な国民性と武士というものの性を考えさせられた。中井貴一さんが朴訥さにさらに悲壮感を加えて好演していた映画もDVDで見た。「八戸せんべい汁」はB1グランプリで有名になったが、最初の開催からずーっと3位以内に入っているというからすごい。また熱く燃えたリオ・オリンピックでレスリングの4連覇を成し遂げてめでたく国民栄誉賞受賞となった伊調馨選手の出身地で来週凱旋パレードが行われるそうだ。ちなみに東北部門チーフのクサカリさん(仮称)によると、「戸」というのは軍馬の生産地だったこの地方で鎌倉時代から馬を管理する牧場のあるごとに平泉に近い方から「一戸」「二戸」と名付けられたそうだ。現在は五戸以外は岩手、青森に跨って九戸までちゃんとある。ちなみに八戸市の木は「イチイ」だそうで、駅の入口に大きな木があり、お姉さんが到着客のために「南部煎餅」の試食皿を持って待っていた。息子甘辛の中学時代に感想文の課題となった「怪物はささやく」というちょっと重苦しい図書に出た「怪物」がイチイの木だった。

      

1日目、屋内の作業現場を訪れ、色々とディスカッションした後に「30分くらいだから行ってみよう」と向かったのが「種差海岸」である。太平洋側の海岸というのは割と見慣れているのだが、「柱状節理」に見える険しい岩礁群のすぐそばまで「海岸が一面の芝生」に覆われている光景は初めて見た。ちょうど芝刈りの後らしく所々に刈り取った芝の山が積もっていた。むろん真っ平らえはないが、見事な芝生が続いており、同行したM2号(仮称)は「オレがいつも行く河川敷ゴルフ場よりも綺麗な芝だな」と苦笑いしていた。6〜7月はハマヒルガオやニッコウキスゲなどが咲き乱れたいそう見事だうだ。近くにはウミネコの生息地で有名な蕪島という名所があるそうだ。毎年3月から8月頃まで、ウミネコが飛来し子育てを行い、その数は3万羽か4万羽と言われ、島がウミネコで埋め尽くされるほどだそうだ。残念ながらこの時期は繁殖を終えたウミネコは去ってしまい会うことはできない。この日は十五夜であり、東京では曇り空のため期待薄だったが、こちらの月見は楽しめそうだった。

        

翌日は屋外での危険作業箇所を半日かけて点検し、現場の作業員たちと簡単に意見交換して遅めの昼食となった。「八食センター」という水揚げされたばかりの新鮮な魚介類や生鮮野菜、県南地方の物産やおみやげなどがそろう巨大市場に立ち寄ったのである。この港は「イカの水揚げ日本一」ということだが、それだけでなく地方の市場というのはホントに面白いもので、普段我が家周辺では見たこともない魚がたくさん見られる。市場で買った魚介類や食材を七輪で焼いて食べる「厘村」というのがあり、かなり繁盛していた。つい日本酒も飲みたくなる香りに吸い寄せられそうになったが、減塩作戦中の私に「干物」は厳禁なので諦めた。地元産を使った食堂に入り、皆は海鮮物系を好んで注文していたが、私は未だ食べたことのないB級グルメ代表のせんべい汁セットにした。せんべい汁には南部煎餅を割って入れるものと思っていたが、実際はこの具にすることを前提に作られた白い鍋用煎餅を使用し、歯でやっと噛み割れるくらい固いものだ。私の頼んだノーマルなセットは醤油ベースの鶏や豚の出汁でごぼう、きのこ、ネギ等の具材と共に煮立てるものだったが、濃い味噌ベースに馬肉バージョンというちょっとゲテモノ風のメニューもあった。鍋用煎餅はやたらに硬くて、結構煮込まないと柔らかくならないが、ほどよく出汁を吸ってくると、「すいとん」の歯応えをよくしたような食感になり中々美味だった。

            

最後の打合せを終えると今回の出張スケジュールは一旦完了なのだが、私にはもう一つミッションが残されている。職場で終業後開催される季節の「物産展」に提供する土産を調達しなければならないのである。夏休みなど地方に帰省した人たちがそれぞれの郷里の名産を持ち寄って開催されるのが物産展、今回はタイミングよく北東北出張だったので。首尾よく地元の美味しい(しかもあまり知られていない)銘酒を調達するつもりだったのである。ただ開催日は帰還当日・・・同行のM2号は前夜の痛飲でげっそり疲れてそそくさと大宮で降りてしまったのに、私だけがいわばV字行程で職場に戻ることになっていた。大きな荷物を持って職場到着がちょうど終業時間=物産展開始時間だった・・・
「えー、みなさんお疲れ様です。たった今「はやぶさ」で○戸から戻って参りましたぁ。物産展の数々の銘酒に釣られてきたわけではございません。。。一応勤務時間なので新幹線で『練習』もしておりません。ぶっちゃけ、東北の美味しいお酒は昨晩十分に飲みまくったので、上野でトーカイドーに乗り換えて帰りたかったんですがねー・・・・」始まりの乾杯もそこそこに早速、「物産カウンター」で「クイズ100人に聞きました」の関口宏スタイルでコップに美酒を注ぎ始めてしばらくすると、もう前夜のことは綺麗さっぱり忘れ去ってしまったのだった。

              


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6 コメント

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Unknown (小夏)
2016-09-24 01:31:27
こんばんは!
どこの街かなーと思いましたよ^^私など申し訳ないけれど学校では習ったけど実際馴染みないのに気づきました。あの新幹線で行けるのですね!去年の今頃終着駅あたりで鮭の遡上を見た、、ぐっふっふ、師匠、青森でもすれ違っていたかも(笑)
そこも日帰り圏内になるのですかぁ。そりゃすごいことですねぇ。
ガラスクリーナーの広告の女性、ヘルメットを被っていたって!!わっはっは、師匠でないと気づかないことかもしれませんね^^
お魚センター面白いですねーwwフジツボも!
しかしやや、いや、かなりお値段が、、、観光地価格なのかな。
せんべえ汁、そこの地で食べてみたいものです。
物産展はスパーク、、でいらっしゃったのでしょうね

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Unknown (磯辺太郎)
2016-09-24 15:28:00
小夏さま

私にとってもこの街は初めて訪れた北の街でした。昔ならった東北の暮らしは暗く貧しいイメージが強かったのですが、あか抜けた工業都市であり港街でもありました。
そうそう、師匠は鮭の遡上をご覧になったのでしたね。なるほど終着駅ですね。
東京からだと、新大阪と同じくらいの所要時間なので、がんばれば日帰りですね。。。便利だけど少し慌ただしい?!
ははは、ガラスクリーナーの広告はよくネタに使っていたので、今更のようにヘルメット姿は驚きです。
地方の市場ってホントに色々な魚があって面白いです、フジツボはちょっと食す気にはなりませんが。そうそう、それなりにお値段が張っているようでした。名産のイカも立派でしたが、安くない?!
せんべえ汁、B級グルメ祭では結構有名で、我が町の方でも見たことありますが、ちゃんと食べたのは初めてです。中々美味しいものでした、
むろん物産展はすっかり異次元にワープしてしまいました・・・(もうすっかり東北のことは忘れて)
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Unknown (小夏)
2016-09-27 21:34:36
師匠、ちょいと新幹線に乗っておりまして行きの車内で気づきました。新幹線の通販カタログ、、もしや高級な車両のほうを毎日お使いでいらっしゃったのではと、、あわわ、スルーして申し訳ありませんでしたー
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Unknown (磯辺太郎)
2016-09-28 22:27:49
小夏さま

東海道と東北新幹線の違いはあると思いますが・・・通販のカタログで女性ヘルメット?!お気づき頂けたのなら観劇です!高級な車両?グリーン?毎日?とーんでもない。。。スキー帰りに席が取れなくて、スーパーあずさ2号新宿行のグリーンに乗った以外、経験がございません・・・(あずさ2号は「上り」なんですよねえ)
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Unknown (小夏)
2016-10-01 10:25:59
私は普通車ですので雑誌は常備されていないのですよ^^いつかその雑誌の女性ヘルメット見かけたら悶えてしまいそうです(笑)

あずさ2号@@!狩人!!(岡崎の方だったかしら・・)
かっちりしたジャケット、、後半の振りの揺れ方、、じわじわきます❤
そのあずさ2号が「上り」だなんて@@!うそだーーーーと言いながら駆け出してしまいそうです

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Unknown (磯辺太郎)
2016-10-01 21:37:20
小夏さま

あれれ、東日本の新幹線んいは普通車にカタログが常備されているのですよ。大失敗のカナダグリーン(芝生)もこれで購入しました。

「狩人」というセンセーショナルなグループ名に個性的なジャケット・・・と言えば「裸にジャケット」が印象的だったクリスタルキングの田中さんでしたが。。。
どうもねえ、JRの命名則では東京(起点)発の下りが奇数号で偶数号は上りらしいのですよ。中央本線の新宿行が2号だったようです。(今、あるのかな)
あるようで実はない・・・「東京特許許可局」のようなものですね。
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