中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

上司は最大の職場環境

2019年05月08日 | 情報

3月に刊行された、精神科医の伊藤直氏が著した「精神科医が教える、3秒で部下に好かれる方法」
(文藝春秋社)を拝読しました。

なにしろ、「上司は最大の職場環境」と云われていますので、そのタイトルに惹かれて読んでしまいました。
読後感としては、今日の上司、管理職は「たいへんな」仕事なのだなと改めて実感しました。
一般的に、昔は、少なくとも戦前までは、自分の経験・実績を下敷き・背景にして部下指導・部下教育をすれば、
間違いはありませんでした。ところがどうでしょう。
現在では、自分の経験、実績が部下指導、業務指導に全く役立たない、
むしろ害になっている実態を理解することができました。
この傾向は時代を下るに従い、どんどん加速しているようです。

雑感になりますが、以下印象です。
上司、管理職によって、職場の環境、雰囲気は最悪にもなるし、最善にもなります。
小職は、「上司、管理職は、担当業務に専念すべきであり、
休職者の管理は人事労務部門の担当者や健康管理スタッフに委ねるべきである」と主張しています。
なぜなら、精神疾患にり患する原因が往々にして、上司、管理職にあるからなのです。
ところが、本書には、たびたび上司が顔を出すのですね。
著者が関与している企業における労務管理手法に違和感を覚えました。
また、著者もそのような労務管理手法に異議を唱えていない様子が窺えました。

このことばかりではなく、著者が事例として取り上げている、企業における労務管理手法には、
とても現実感がなく、これでは企業の存立自体が危ぶまれると感じました。
患者や患者の会社関係者の言葉が、著者経由で表現されていますので、ある意味で止むを得ないことなのでしょう。
精神科医は、企業の労務管理、業務の進め方の専門家ではないのですから。

メンタルヘルス問題は、精神科専門医からの視点、産業医からの視点、弁護士からの視点、
社会保険労務士からの視点、それぞれの知識、経験から全く異なる世界に見えるようですね。
ですから、メンタルヘルス問題は、簡単ではないのでしょうね。

ひとつ参考になった記述がありました。
それは、「精神医学的見地から申し上げると、誰でも少しは発達障害の「気」を持っているものです」(153ページ)
という記述です。「気」とは、「気」質だそうです。
これは、精神科専門医が著した文章ですから、当然にエビデンスがあるのでしょうが、
一度文献にあたってみたいと考えます。
小職も発達障害の勉強をしているうちに、人は誰でも発達障害の要素を持っているのではないかということを直感したのです。
文字にするといろいろと問題を惹起することになりますので、当ブログでこのことを指摘したことはありませんが、
小職のセミナーでは、精神医学には全く素人としての個人的な見解として、紹介してきました。
例えば、「個性」はとても大切な要素としてプラス評価されますが、
「個性的」となると、若干マイナスの評価も含まれるように使われる表現ですと。

コメント
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