
イタリア館(+バチカン)の屋上庭園を大屋根リングから見る
20250518
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2025二十五条日記万博(2)大阪関西万博②イタリア館
万博2日間の見学ですが、一番の目的は、イタリア館のアトラスとカラバッジョ、レオナルド・ダ・ビンチです。本物です。
わくわく期待して娘がスマホと格闘して予約確保したイタリア館へ向かいました。
彫刻「ファルネーゼのアトラス」と「レオナルド・ダ・ビンチ」草稿、バチカン所蔵カラヴァッジョ「キリストの埋葬」という実物を見たいというのが、万博見物を決めた一番大きな目的です。
モナリザもミロのヴィーナスも、せっかく日本に来たのに見に行くことができなかった春庭。こんどこそ実物を見ずにおくものか、という願いに、娘はスマホのイタリア館ページを開いて、申し込みサイトの英語に不安になりながらも、11時半の予約がとれました。いざ

イタリア館の前。彫刻家ミンモ・パラディーノによる、長いとげを持つ兜の形をした巨大なアルミ彫刻 「サン・エルモ」がお出迎え。ジブリのアニメに出てきそうな。 館内はコロッセオを模しています。


予約は11時半でしたが、入り口で30分ほど待ち、12時ころ入館。ディズニーリゾートの待ち列、待ち時間が長くても、待っている間も退屈せずに壁のパネルなどを見て楽しんでいられるサービスがある。万博監修者はそのへんをもっと工夫すればいいのに、という娘の感想。そこは「客の満足度が儲けに直結する」「リピーター確保が利益拡大の要」である営利企業の営業努力。大阪関西万博、税金使って「結局だれも責任とろうとしない」半年限りの殿様商売ですから、「こんなとこ二度とくるか!」という客がいても平気、との差でしょう。
言っておきます。イタリア館は何度でも来て見る価値がある。写真撮り放題、「キリストの埋葬」に目の前まで近づける、という大サービス。もし変質者がいて、イエス様にインクぶっかけたりしたら、誰が責任とるんやろ、と心配になりました。
イタリア紹介の動画を映していた画面が、四つに割れて開くと、ファルネーゼのアトラスがドンと目に入る。


古代ローマ時代(AD2世紀)に作られた大理石彫刻。イタリアのファルネーゼ家がルネサンス期に収集した「ファルネーゼ・コレクション」の一つでしたが、現在はナポリ国立考古学博物館蔵。
ギリシャ神話の巨神アトラスを描写したギリシャ彫刻を、ローマ時代に模写した作品(ローマンコピー)です。コピーと言っても、ギリシャ時代のもとの作は失われているので、唯一無二の貴重な彫刻。その貴重な作品重さ2トン、高さ2メートルの作品を、実際に日本に運んできて見せてくれるのですから、他館の映像がどれほどきらびやかでも、実物の魅力にはかないません。
アトラスがかついでいる天球には、ギリシャ神話に登場する星座が克明に刻まれています。




かつぎ続ける天球の重さも、ローブからはみでたプリンとしたおしりも、とても魅力的なアトラスさんでした。今では、天球図だけでなく地図帖を表す一般名詞として人の口にのぼるアトラス。
アトラスは、ギリシャ神話に登場するタイタン神族の一人です。イアペトスとクリュメネの息子。弟は、天界から火を盗んで人類に与えたプロメテウス。オリンポスにゼウスが生まれると、オリンポス神族とタイタン神族の戦いが始まり、アトラスは敗れてしまいました。永遠に天球を支えるという罰を負わされ、彼の支えにより、天は今も地上に落ちてこず、ちゃんと天に広がっているのです。アトラス、えらい!
イタリア館の目玉は、ほかにレオナルド・ダ・ビンチの草稿。アトラスが周囲を一周してゆっくり眺められたのに、草稿は狭い通路のガラスの中に鎮座し、係員が「シャッターを押すのはひとり一回です。一回シャッターを推したら、展示前から離れてください」と、目を光らすので、私もじっくりなど見ていられず、シャッタ―押しただけで、押し出された。でも、レオ様がおんみずからお書きになった草稿を目にできたのですから、ありがたしありがたし。


3つ目のイタリア館展示は、ドメニコ・ティントレットの肖像画「伊東マンショ像」です。2016年夏に東京国立博物館に来日したときは、見ることができませんでした。はるばる東の果ての国からやってきた遣欧使節団の少年たちは、ポルトガルでもイタリアでも大歓迎を受け、教皇へのお目通りもかないました。少年たちの凛々しい物腰は「これぞ王族のふるまい」と称賛され、17歳の伊藤マンショは、大ティントレットの息子25歳のドメニコの手で肖像が残されました。衣服はむろん、顔立ちも欧風になっていますが、なかなかイケメンです。会えてよかった。

イタリア館の中にバチカンブースがあり、カラヴァッジョの「キリストの埋葬」(1603-1604制作)が展示されていました。キリスト教絵画に詳しくない日本の観客のために、絵の人物の名前の解説もあり、三人のマリアも区別がつきます。右側がクロパの妻マリア。両手をあげている。真ん中はマグダラのマリア、後列中央のイエスの母マリアは尼僧姿。イエスの遺体を抱える弟子ふたり。上半身を抱きかかえるのは、福音を書いたヨハネ、足を持つのがニコモデ。埋葬というと、日本人は土の中に埋めると思うけれど、ジュリエットが死んだあと、ロミオに会ったときは、墓室に横たわっていただけで、ベッドに寝ている状態と同じでした。埋めるのではなく、遺体の下にある石板の上に横たえて、墓室に安置する。子供のころ、クリスマス会のお菓子欲しさに出かけた教会で、イエス様は墓地から復活したと聞かされて、地面の土を掘り飛ばし墓石押し倒して出てくるイエス様を想像して、ちょっと怖かったけれど、石板に横たわっているだけなら、マリアたちがたっぷり塗りこめたという香油が防腐剤となっていて復活もしやすい。

クロパの妻マリアが万歳している両手も、イエスの母マリアがヨハネの肩越しに伸ばした左手も、顔の大きさに比べて大きすぎると思いました。この手で香油をたっぷり塗ったのでしょう。愛です。
イエスを育てた養父ナザレのヨセフが大工カーペンターだったと聞くと、やはり日本人の印象では、ノコギリやカンナを持っている感じがするけれど、ナザレで家を建てるなら石を積み上げる石工がカーペンターです。イエスも30歳までは説法に出歩いたりすることなく養父を手伝って石運びなどしたでしょうから、ニコモデが抱きかかえるイエスの足も福音書ヨハネが抱く上半身も、肩の筋骨盛り上がっていて、肉体労働をしてきた男の体です。カラヴァッジョは筋骨隆々イエスとしてボディを描きました。
ぶどう持っているバッカスも酒杯もっているバッカスも、ちょいバカっぽい顔に描いているカラバッジョですが、埋葬されるイエスは、目を閉じていてもなかなかものをしっかり考えてきたお顔です。磔になる前は、天の父に向って「なぜ私を見捨てるのか」と恨み言を叫んだけれど、安置された石板の上では、復活後に弟子たちにかけることばなど選んでいたに違いない、と思える静かな思索に満ちたお顔です。
私は直行便で極楽浄土へ行くので、煉獄で最後の審判を待つ時間はないと思うけれど、たくさんの人々をお救いください、とお祈りしてきました。ここに描かれた埋葬のころは世界中集めても人口2億人程度だったそうですが、今じゃ80億人がひしめく地球。宇宙は広いから煉獄が込み合うこともないでしょうが、審判待ち時間は、万博に持つ検査の列なんか目じゃないくらい長い列になると思います。みな仲良く天国に迎えられますように。
イタリア館の天井には、飛行機模型がつってあります。1920年にアルトゥーロ・フェラーリンがジーノ・カッパニーニと共にローマ-東京間を飛行した際に使用したSVA9型機を、オリジナルの技術図面に基づいて忠実に再現したもの。
ほかにも、現代美術の心臓がぐるりと輪になっているのとか、ミラノ・オリンピックの聖火リレートーチなどを眺めることができました。

東京オリンピックトーチのレプリカ展示が2019年にありました。ディズニーonアイスの会場で「持って見よう」というコーナーがあり、実際にもってみたら思ったより重くて、これ掲げて走るのたいへんだ、と思いました。イタリアミラノトーチも、レプリカでいいから、持ってもいいよコーナーがあったら、私と娘は列に並んだのに、と思いました。実際の体験こそよい思い出になります。
イタリア館の3階はレストランとイタリア庭園。レストランの待ち時間は2時間くらいというので、待つのをあきらめて、庭園の中を通り抜け、次の予約オランダ館へ。
<つづく>
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