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ぽかぽか春庭「オーシャンズ8」

2021-05-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
 
20210523
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2021シネマ夏(3)オーシャンズ8
 
 「37セカンズ」で身障者問題、「スパイの妻」で国家による戦時犯罪について考えてしまった春庭。もうちょっと気軽に楽しく映画をみるべきだ、というのも私のホンネ。
 
 楽しく何も考えずにワハハと痛快に見終わりたいと選んだ映画は、「オーシャンズ8」
『オーシャンズ8』(オーシャンズ・エイト、Ocean's Eight)は、2018年のアメリカ合衆国の犯罪映画。『オーシャンズ11』に始まる『オーシャンズ』シリーズのスピンオフ作品で、時系列上は『オーシャンズ13』から続くストーリー。主人公のデビーは、前作「オーシャンズ13」の主人公ダニーの妹 という設定になっています。
 物語は「オーシャンズ13」との関連はなく、「オーシャンズ11」の女性版リメイク。
 シリーズ監督のソダーバーグはプロデュースを務め、のゲイリー・ロス(「ハンガー・ゲーム」など)がメガホンをとりました。  
 
 以下、ラストまでのネタバレ含みますので、未見のかたはご注意を。
  • デビー・オーシャン:サンドラ・ブロック(ダニ ーの妹。服役中に美術館からの宝石泥棒を計画する)
  • ルー・ミラー:ケイト・ブランシェット(デビーの親友にして相棒。沈着冷静)
  • ダフネ・クルーガー: アン・ハサウェイ(美術館でのファッション展示に招かれた女優)
  • アミータ: ミンディ・カリング(インド系の凄腕宝石加工職人)
  • タミー: サラ・ポールソン(息子の母としてまっとうな生活しているようにみえるが、元盗品ディーラーだった腕は鈍っていない)
  • コンスタンス: オークワフィナ(アジア系。表向きは手の器用さを生かした手品師だが、実はスリの達人)
  • ナインボール : リアーナ(アフリカ系。天才ハッカー。忍び込めないコンピュータはない)
  • ローズ:ヘレナ・ボナム=カーター(かっては人気デザイナーだったが、現在は借金がかさむ一方)
  • クロード・ベッカー : リチャード・アーミティッジ(ギャラリー経営。デビーの元カレ)
  • ジョン・フレイジャー:- ジェームズ・コーデン(保険会社の敏腕調査員)
  • ペネロペ・スターン: ダコタ・ファニング
  • ルーベン・ティシュコフ: エリオット・グールド
  • イエン : シャオボー・チン
  • ローレンス : リチャード・ロビショー
  • ユーリ : ジェームズ・ビベリー
  • イーディ: イーディ・キーナン
  • ヴェロニカ :ナターニャ・アレクサンダー
  • カイル:ギデオン・グリック
  • ギレルモ :ミグス・ゴベア
  • エイプリル:ミドリ・フランシス
  • レネ:マーロ・トーマス
 泥棒集団のカリスマ的リーダー、ダニー・オーシャンの妹デビーは、ある事件の犯人とされ、5年余りの刑に服役していました。5年8ヶ月と12日の服役中に練りに練った計画をもって仮出所。持って出た財産は12ドルですが、シャバに出てしまえば、暮らしに心配なし。万引きも置き引きもお手のもの。
 
 まずデビーが会ったのは、かつての相棒ルー。ニューヨークの美術館(MET)で開催される世界的なファッションの祭典メットガラで、宝石を盗み出すという壮大な計画です。宝石はトゥースという名を持つ1億5千万円(165億円)のダイヤモンドネックレス。
 
 デビーとルーは、この計画を実行に移すべく次々と仲間をスカウトしていきます。が、計画には宝石を盗み出すという目的のほか、ある目的があることは、相棒のルーにも秘密。
 秘密の目的のために、デビーは元カレのクロード に会います。相変わらず自信満々でギャラリーを経営しているクロードですが、デビーは彼を利用する計画を秘めているのです。
 
 デビーとルーは、一芸名人プロフェッショナルである6人の女性に声をかけ、ニューヨークの美術館METで開催されるファッションイベント「メットガラ」の会場で、大勢の観客の目の前で1億5000万ドルの宝石を盗み出すという不可能と思われる計画をすすめていきます。
 
 7人の仲間、それぞれの役割により、着々と計画が進行。女優ダフネに宝石を身につけさせるために選ばれたのは、高名だけれど実際には借金まみれのデザイナー、ローズ。
 カルティエの倉庫の奥深くにしまわれたまま、世に姿をみせることがなかったダイヤのネックレス「トゥース」を女優ダフネに貸し出すようカルティエと交渉し、成功します。トゥースは特殊な鍵で接続部を開け閉めするようになっており、その鍵がなければ首からはずすことができない仕組み。カルティエ側は、安全に貸し出せることに自信を持っています。
 
 天才ハッカー・ナインボールは、ホテルのセキュリティを完全に掌握。宝石加工の天才アミータは、ジルコニア製のイミテーションを作ったあと、本物のネックレスを解体して運び出すために待機します。
 
 完全な準備の末、メットガラ当日。トゥースを身につけたダフネをエスコートするのは、ギャラリー経営者クロード。7人はウエイトレスやシェフなどさまざまなホテル関係者として働きながら計画を実行していきます。
 
 トゥースを身につけたダフネ
 
 シェフに化けて会場に入り込んでいたルーは、ダフネの皿に下剤を仕込みます。ダフネはたちまちトイレに駆け込みます。デビーはトイレ前で、ほかの人がトイレに入らないよう邪魔をします。
 
 コンスタンスは、吐きもどすダフネを介抱しながら、特殊な鍵のイミテーションでネックレスをはずしてしまいます。
 
 トイレからもどったダフネの首にネックレスがないことから大騒ぎがはじまります。ファッションガラに来ていたゲストたちは、一カ所に集められます。宝石や王族衣装などを展示していた展示室は封鎖。
 大捜索のはて、プールの中から、ダフネの首からはずれて落ちたと思われるトゥースが見つかり、一件落着。
 
 特殊な鍵がなければ外すことができない仕組みのネックレスが、どうしてダフネの首からはずれて落ちたのか、というところに、だれも疑問を持たなかった、というのが唯一脚本の穴。カルティエ側の責任者が会場にいたかどうか、私の目にはわかりませんでした。あまりにたくさんの有名人が会場にいたので。
 
 テニスのシャラポワほか有名人が「自分自身の役」として集まっているパーティー会場
 
 イベントが終わり、トゥースはカルティエの倉庫に戻ることに。ところが、戻されたトゥースは、ジルコニアで作られたまっかな偽物。
 保険会社が調査に乗り出します。保険会社が怪しいと目をつけたのは、ダフネをエスコートし、ずっといっしょだったギャラリー経営者クロード。クロードのギャラリー経営不振も判明し、お金を必要としていた事情もわかりました。
 
 トゥース盗難の犯人として、警察がクロードを逮捕したという報を聞き、デビーは喝采します。デビーが5年余り服役したのは、クロードが仕組んだ絵画詐欺の主犯として逮捕されたからでした。クロードは自分は被害者だと主張し、デビーひとりの犯罪とされた、といういきさつがありました。トゥースを盗む計画は、クロードへの復讐計画でもありました。
 
 アジトに集まった7人の前に、8人目の仲間が現れます。トゥースを盗まれた側のダフネです。ダフネはこの計画のからくりに気づきましたが、警察に訴えても何の得もない。8人目の仲間として分け前にありつくほうを選んだのです。
 7人で分ける予定だった1億5千万ドル(165億円)。8人になったら分け前が減る?
 デビーは仲間に打ち明けます。トゥース捜索のために、宝石衣装の展示会場は閉鎖されました。防犯の赤外線が張り巡らされた会場をかいぐぐりながら展示品を次々に盗んでいったのは、イエン。
 おかげで、最終的な分け前は予定よりも大幅増。イエンはいくら分け前をもらったのだろうか。
 
 ここで疑問が。防犯赤外線を避けながら、会場の宝飾を盗み出すイエンの役を女性にしなかったのはなぜかな。このアクロバットみたいな盗みを行う身体能力を持った女優もハリウッドにはいただろうに。その場合は、「オーシャンズ9」というタイトルにすればいい。
 
 結局、保険会社が損をしただけ。保険会社は、顧客から高い保険料をうけとっているので、盗まれた金額を保証するのは当然のこと。
 で、カルティエも美術館もだれも損をしておらず、唯一損をしたクロードは、デビーを陥れた罰を受けることになった、という痛快な犯罪映画でした。
 
 映画のストーリーは、痛快無比、面白かったのですが、2018年の映画として不満な点がひとつ。2015年以後、ハリウッドにもMetoo運動が沸き起こり、映画の中でも、セクハラや女性差別の問題が起きました。せっかく8人の女優が出演したのに、もうちょっと差別やセクハラにもの申すというストーリーを入れ込めなかったかなあ、と思います。
 
 デビーの元カレへの復讐譚のほか、アミータは「親がきめてしまい、娘に決定権のない結婚」への反発をもっと描いてほしかったし、ナインボールが本名を名乗らない理由など、ナインボールの妹がちらっと出てきたけれど、家族が受ける差別や家族の事情などは語られませんでした。コンスタンスが受けるアジア系への差別など、それぞれの女性が抱える葛藤を、ワンシーンでもいいから出してくれたら、彼女たちがなぜ犯罪の仲間になったかが重層的に描けたのではないか、と思います。
 
 気軽な犯罪映画に、重い内容は詰め込みたくない、というプロデュース側の事情もわかりますが、復讐を望むデビー、親友と組みたいルー、借金まみれのローズのほか、なぜ「失敗すれば監獄行き」の犯罪に加担したのか、わからないところに不満が残りました。
 オークワフィナなど、そこにいるだけで「複雑な移民事情を抱えているのじゃないか」って雰囲気を持っているのに、どんな事情を抱えて生きてきたのかわかりませんでした。人間描写がもう少し深ければよかったのだけれど、残念。
 
 8人そろって地下鉄に乗る
 
<つづく>
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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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コンティジョン (まっき~)
2021-05-23 16:16:10
目に楽しい映画ではありましたね。

今回はプロデュースにまわったソダーバーグさんは、大人数をさばくことに長けているひと。
金曜ロードショーがタイタニックやグーニーズを放映してくれることに映画ファンは盛り上がっているのですけど、いまこそ、ソダーバーグの演出が冴えたパンデミック映画『コンティジョン』を放映すべきだと思うんですけどね、春さんは観たのかな。
返信する
まっき~さん (春庭)
2021-05-23 16:45:25
 ソダーバーグは、私的には1位ソラリス (2002)と2位オーシャンズ12 (2004)で、残念ながら『コンティジョン』未見。スリラー・ホラー映画という評判だけで、「こわいのはイヤ」と見なかった。
 ウイルスの恐怖っていまこそ見ておくべき映画ですね。

 今月は、みどりの日に鳩山邸見学、12日に飯田橋ギンレイに出かけたほかは、週末も家にいて自粛中。早く心おきなくお出かけしたいです。
あさってからワクチン予約に挑戦します。いつごろ予約できるかしら。
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コウモリ、ブタ、ヒト (まっき~)
2021-05-24 09:32:07
ホラー的な要素はまったくないので、ぜひ。

コウモリからブタ、ブタからヒトへ感染していく流れとか、ワクチンが出来るまで、その争奪戦などなど、今回のケースとよく似ていて驚きます。
しっかりリサーチして、なおかつ想像力も働かせてという、フィクションの理想型というか。

というわけで37セカンズについて、もう少し。

自分も脚本の穴ぽこが気になって大絶賛というわけにはいかないのですけど…
きっと永遠に答えが出ないであろう「作家は経験したことでしか傑作をものに出来ないのか」というテーマについて、監督が自問自答しているように見えたんですね。
そこに打たれたところはあります。
返信する
ついしん。 (まっき~)
2021-05-24 09:36:12
父親からLINEで、予約を入れたと。

その午後、義母が吐血したと連絡が入って、まぁ落ち着いたようなのですけど、気が気じゃありません。
このご時世、東京の人間が帰省するのはよくないのでしょうし、行ったところで父親さえ面会不可なわけで。
なんかちょっと、医療ミスっぽいところがあったようで・・・。
返信する
まっき~さん (春庭)
2021-05-24 22:19:43
お義母さん、お見舞いに行けぬのでは心配はつのるでしょうが、ラインなどでこまめに交流を。お大事にね。
父上、ワクチン予約でき祝着。私もあしたがんばろう。
「コンティジョン」ホラーじゃないのなら、機会があったらぜひ。

HIKARI監督、次回作が楽しみですね。賞をとったことで、次回作の制作費は集まるでしょうから。

「作家は経験したことでしか傑作をものに出来なのか」というテーマについて、監督は、ユマが性体験を持たないで作品を書くという結果にしました。編集長がユマに作家としての能力を認めた、と言う結果のラストでしたが、あれって、性描写を含む作品だったのかな。
体験していないことでも傑作を生み出せる人が作家です。でも、編集長が「体験して実感を」とユマに求めたのは、人を求めるヒリヒリした痛みだったのだと私は思いました。
ひかりさん、いい作品を続けていってほしいです。
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