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ぽかぽか春庭「サインアート夏の夜の夢」

2017-11-26 00:00:01 | エッセイ、コラム
20171126
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記11月(8)サインアート夏の夜の夢

 11月24日、視覚障害者が演劇を楽しむ活動を続けているアコさんに誘われて、池袋アウルスポットで上演中の演劇のガイドボランティアを務めました。

 大阪から上京したアコさんが泊まっている赤羽駅内で待ち合わせて池袋へ。池袋で、アコさんの友人の視覚障害者タキちゃんと合流。
 昼ご飯を軽く食べてから東池袋の豊島区立の施設(舞台芸術交流センター)のアウルスポットへ。客席300席ほどですが、単に貸し出しホールというにとどまらず、いろいろな企画によって、池袋を「演劇の街」としていきたい区長以下の努力で、意欲的な演劇公演が行われています。

 今回観覧するのは、視覚障害者も聴覚障害者もともに楽しむことができるという「サイン アート プロジェクト.アジアンvol.6 Rock Crnival『夏の夜の夢』」という舞台です。音声ガイド付きの舞台も手話通訳付きの舞台も見たことがありますが、視覚障害者と聴覚障害者と健常者がそれぞれに楽しめる舞台ということなので、いったいどんな演劇なのか、興味津々でした。

 シェークスピアの『真夏の夜の夢』
・原作:W・シェイクスピア 翻訳:小田島雄志 構成・演出:野﨑美子 振付:香瑠鼓

 振付師は、香瑠鼓(かおるこ)さん。CMの振り付けで活躍し、だれもテレビで知らぬ間に香瑠鼓さんの振り付けを見たことあると思います。一方香瑠鼓さんは、バリアフリーアートにも力を入れ、障害あるなし関係なく身体を動かして楽しめるダンスの振り付けと指導に力を入れています。どんな振り付けなのか、こちらも興味がありました。

池袋アウルスポット前のポスター

 白い衣装の役者さんのうち、一番上にいて、サングラスをかけている人がウォルフィ佐野さん。

 出演者は、聴覚障害を持ち、手話で演じる役者さん、低身長症(侏儒症)の役者さん、視覚障害のサキソフォン奏者ウォルフィ佐野さん。アコさんやタキちゃんは、この方と知り合いで、佐野さんの応援のための観劇でした。

 舞台にバンドがいて、音楽は大音量で流れます。アコさんたち視覚障害の方々には、音声ガイドのラジオが貸し出されて、舞台上で行われていることの見た目の説明をします。しかし、演劇を見慣れているアコさんには、不評でした。

 アコさんが言うには、舞台で役者が台詞を言っているときにも、解説者がしゃべってしまうので、セリフが聞き取りにくく、舞台進行が理解しにくかったとのこと。解説者の独演会を聞きたい人にはいいだろうけれど、セリフをちゃんと聞きたい人にはうるさすぎた。しかも、スピーカーからの音量が大きすぎて、バンド音が鳴ると音声ガイドの声は聞こえなくなる。いろいろ不満はあったみたいです。

 「サイン アート プロジェクト.アジアン」は、主催者がデフアクター(聴覚障害の役者さん)で。聴覚障害の方が楽しめる舞台から出発したようです。
 今回の公演、全方向バリアフリー演劇を目指した意欲は買いますが、アコさんに言わせると「視覚障害者には中途半端にしか楽しめなかった」ということなので、まだだま改良点はありそうです。

 全員で歌って踊るとき、手話を取り入れながら踊った点、聴覚障害の方にはわかりやすいと思いましたが、夏の夜の恋人役のひとりヘレナをデフアクターの女性が演じたとき、後ろに字幕が出るはずが、機器の不具合か何かで字幕が出ずに、手話がわからない観客にはヘレナの台詞がまったくわからなかったりしました。
 「夏の夜の夢は、だれでもそのストーリーは知っている」という前提があるのかもしれませんが、主役のひとりの台詞が手話を知らない観客に伝わらなかったのは、残念なことでした。

 パック役はふたりいて、ひとりが音声で台詞を言い、もうひとりが手話で伝えるという方式でした。 妖精の王オベロンが台詞を言うと女王が手話でそれを伝え、女王が台詞を言うときはオベロンが手話で伝えるなどの演出もあり、字幕で伝えるときもありました。
 アコさんは「それも中途半端。全部字幕を出すか、全部手話通訳を出すか、徹底したほうが聴覚障害者も楽しめるのではないか」という意見でした。 
 
 視覚障害のミュージシャンウォルフィー佐野さんが、長台詞をラップや浪曲などをまじえて語ったのは見事でしたし、デフアクターのみなさんも熱演でした。香瑠鼓さんの振り付けたダンスも楽しかったです。
 しかし、全方向バリアフリーというのが、いかに難しいことなのか、ということはよくわかった舞台でした。
 「サイン アート プロジェクト.アジアン」は10年目とか。いろいろご苦労はあるでしょうが、がんばって楽しい舞台をめざしてほしいです。


 
 夏の夜の夢という劇は、祝祭的なにぎやかな舞台です。いろいろな演出方法があるから、私は、今回の「サインアート」は、演出のひとつとしてよい舞台であったと思いますが、残念ながらアコさんは「同じ入場料を払うのなら、次はやはり昴の台詞劇を観劇したい」という意見でした。

 入場料金は、視覚障害者とガイドヘルパーはセットで4500円。アコさんはいっしょにきたエミちゃんと折半して2250円ずつ払っていました。私は池袋からアウルスポットまでアコさんの友人のたきちゃんをガイドヘルプしてきたのですが、ヘルパー扱いにはならず、シルバー料金3500円を払いました。アコさんがよく知らないという人が「チケット扱いのとりまとめ役」をしていて、その人がガイドヘルパー料金で入場しているので、私の分はヘルパー扱いにはならなかった、とのこと。その人は舞台が終わるとさっさと先に帰り、帰りのガイドヘルプもしないようなので、ナンダカナーと思いました。ボランティアにはいろいろな役目があって、チケット取り扱い係、というのもボランティアなのでしょうが。

 水戸に帰るエミちゃんは上野で乗り換え、私は新幹線で大阪に帰るアコさんと東京駅まで。東京駅エキュート内にあるあんぱん屋さんでおみやげのあんぱんを買って帰りたいというアコさんの希望で、店をさがしたのですが、駅構内に立っている案内係の説明がいろいろで、同じところをぐるぐる回ってしまいました。方向音痴のガイドペルパーで申し訳なかったです。

 次は「昴の朗読劇『クリスマスキャロル』を聞きたい」というアコさん。12月にはまた上京するかもしれないけれど、まだ予定は未定というアコさんを新幹線の改札の係員に託し、バイバイしました。

<つづく>
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