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ぽかぽか春庭「白川義員写真展永遠の日本 in 東京写真美術館」

2021-06-01 00:00:01 | エッセイ、コラム

20210601
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩早春~春(8)白川義員写真展永遠の in 東京写真美術館

 私が白川義員(1935~)の名を知ったのは、70年代のパロディモンタージュ写真の裁判報道によって。それまで白川の山岳写真を雑誌などで目にしていたとしてもページのすみっこのほうに小さく出ているクレジットだけでは目に入っていなかった。
 白川がオーストラリアの山で撮影したスキーシュプールの跡が美しい写真を、マッドアマノが白川に無断で元写真をモンタージュとして取り込み、スキーシュプールをタイヤ跡に変えて発表したことに対して、著作権侵害が提訴されました。マッドアマノ側は、自動車社会を風刺するための引用にすぎず、著作権侵害には当たらないとして、著作権と「パロディの表現の自由」との大問題となり裁判は長引きました。

 白川の名前を知ったあと、雑誌などで美しい風景写真を見て、ああ、あの白川さんか、と思うだけで、写真展などに出かけることはなく、今回が初めての白川義員展の観覧です。私と娘が見たのは、前期日程の「永遠の日本」シルバー券350円。


 第一期 永遠の日本 2021年2月27日(土)-4月4日(日)
 第二期 天地創造 2021年4月6日(火)-5月9日(日)
 
  最初は、娘と3階ロビーのモニターで白川義員のインタビュー映像を見ました。(12分)娘は、白川のことをまったく知らなかったので、人物を知ってから写真観覧。私もパロディ裁判のこと以外に何も知らないのです。1935年生まれの白川、2021年には86歳と思われますが、とても若々しく写真への情熱を語っていました。
 
 白川は学生時代に、塚本閤治(1896-1965 大正-昭和時代の写真家,映画製作者。山岳写真、山岳映画の先駆者)に出会い、山に誘われました。日本大学藝術学部写真学科卒業後、山岳写真家として身を立てていきます。

 山を撮り始めたころ、いきなり穂高や剱岳など3000m級の山から撮り始めたのだそうです。当時、カラーフィルムで撮った朝日夕日の山岳写真は世界に1枚も無かったので、白川は「私はいつも前人未踏の写真を撮ってきた」と語っていました。
 youtubeで、インタビューの一部を見ることができます。
 白川義員写真展「永遠の日本」 - YouTube
 インタビュー中の白川義員。日本の美しい自然を残していかなければならないと力強い口調で語っていました。

 白川は「最初は朝日夕日を狙って撮影した」とインタビューで語っていました。白み始めた空が、紫色になるころはまだ光が弱く、朝日が昇ってしまうと、赤色はきれいにで色がでない。日がさす直前の15秒が勝負なのだそうです。山や峡谷、美しい色の朝日夕日、そして燃えあがる紅葉が見事でした。

展示室

 第1部 名山・名瀑 第2部 湖沼・森林・渓谷 第3部 高原・湿原   第4部 海浜・島嶼  (各部の順序通りの掲載ではありません。画像借り物を含む)

 「雌阿寒岳夕照」

 「浅間山噴火口鳥瞰」

「桜島噴火」

「流氷と知床連山」

「熊野灘橋杭岩暁天」

「新舞子浜夜明け」

「剣岳白景」

「 」

「」

「青龍洞」


 配布された「永遠の日本」出品目録に白川自身の「撮影メモ」が書かれていました。白川が繰り返し述べているのは、「撮影は一瞬の出会い」ということと、自然破壊への強い怒りです。「醜悪な自動車道」「西面に出ると登山道や車道やいたる所にスキー場があって見たくもない風景になる(浅間山)」「対岸にも遊歩道があるが、そちらからの眺めは建物が一杯目に入って醜悪になる(志賀高原蓮池)」など、強い口調で自然を自然のままにしておけない人間のしわざを憤っています。白川が撮影したのち、すでにその姿を見ることができなくなった風景もあります。

 白川が「永遠の日本」に写し取った日本の光景、「天地創造」で撮影した世界各地の山々。インタビューの中で、白川は「生涯に12シリーズの写真集を出版したいと思って仕事を続けてきた」と語っていました。「天地創造」は、その12番目のシリーズ写真集です。12シリーズの中で撮影したコマ数は膨大なものであったでしょう。
 2002(平成14)年には、白川の12シリーズ作品の代表的な写真が国際連合郵政局から記念切手として発行されたことも含め、人類の宝として残っていくと思います。
 こののち、白川が願っているように、人間による自然破壊が進みませんように。

<つづく>
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