ガンや潰瘍性大腸炎、自己免疫疾患、その他の疾患では、炎症因子のTNF-αの血中濃度の異常が観察されています。潰瘍性大腸炎では血中TNF-α値が対照に比べて大変高くなっており、TNF-αを阻害する薬剤が治療に使われていると、報告されています。しかし一方、米国での研究によると、ビタミンCや乳酸菌などプロバイオティクスのTNF-α阻害作用も報告されています。また、ガン細胞でも同様にTNF-α値が高く、ガンの主たる炎症因子となっています。そこで、ビタミンCやプロバイオティクスでガン細胞のTNF-α値をコントロールできないかという発想が浮かんできます。
Son EW博士らの研究によると、ビタミンCがヒト神経芽細胞腫(ガンの一種)でのTNF-α(炎症因子の中心)誘起によるNF-kB(核内因子kBのことで、転写因子として働くたんぱく質複合体)の活性化とICAM-1(免疫系の細胞間相互作用を司る接着分子の一つ)発現をブロックすることが分かりました。このことはガン細胞の活動を抑制することに繋がると、考えられます。
細胞接着分子の相互作用は、炎症の媒体において重要な役割を演じます。炎症促進サイトカインのTNF-αは、NF-kBシグナル経路を活性化し、ICAM-1の発現をもたらします。ヒト神経芽細胞腫において、ビタミンCの作用では、その濃度依存による投与量では、TNF-αの誘起によるICAM-1の上方発現の阻害とmRNAの下方調整がもたらされ、さらにゲルシフト分析では、ビタミンC濃度依存による投与量では、TNF-α誘起によるNF-kB活性化が阻害されました。
これらの結果から、ビタミンCが、NF-kB活性化の阻害により、TNF-αにより誘起されたICAM-1発現を下方調整することが示唆されます。また、他の研究では、ビタミンCやビタミンD3、乳酸菌などプロバイオティクスは、TNF-αの過剰産生を低下さす作用があることが報告され、上記疾患への栄養医学的対策の手段になる可能性があると、報告されています。
References
Son EW, et al. VitaminC blocks TNF-α-induced NK-kB activation and ICAM-1 expression in human neuroblastoma cells. Arch Pharm Res. 2004 Oct;27(10)
Yuanyuan Chen, et al.VitaminC mitigates oxidative stress and TNF-α in severe community-acquired pneumonia and LSP-induced macrophages. Mediators of Inflammation. 2014
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