医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

脳卒中発作の予防のための魚油(EPA,DHA)の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-02-25 23:04:41 | 健康・病気

頸動脈プラ―クが溜まり、そこが破裂し、脳卒中発作になり、致命傷になることから魚油(EPA,DHAを含む)が防いでくれる可能性が、ニュ―オルリンズ大学とエール大学の連携研究により見えてきました。

ニュ―オルリンズ大学のHernan A. Bazan博士らの連携研究では、破裂や脳卒中発作の危険性がある不安定な頸動脈プラ―クは、無症候性プラ―クよりはオメガ―3不飽和脂肪酸が著しく少なく、炎症がより激しいことがわかりました。このことから、頸動脈プラークに対しオメガー3不飽和脂肪酸値を高めてやることにより、脳卒中発作を防ぐか、治療上の安全性を改善することができるかを、示唆しています。このことは、オメガー3不飽和脂肪酸の豊富な食物の摂取を増やすことにより、達成が可能です(最近のVascular Pharmacology誌より)。

我々の体は少量のオメガー3不飽和脂肪酸を産生し、必要とするそれのほとんどは、魚(鮭、マグロ、タラ、ニシンなど)や栄養サプリメントなどのオメガー3不飽和脂肪酸(以前はビタミンFと呼ばれていた)を摂取することから得られます。オメガー3不飽和脂肪酸は、米国に多い心臓血管系疾患、特に、心臓発作や突然の心臓死に対し、予防効果を示すようです。頸動脈を破裂さす、傷つきやすいプラ―クは、一時的虚血性発作、脳卒中発作、網膜動脈への影響による視力障害などをもたらす可能性があります。プラ―クの破裂をもたらすメカニズムは、十分わかっていませんが、プラークの炎症が、その破裂の重要な原因として知られ始めています。

Bazan博士らは、頸動脈のプラ―クの集まった塊を取り除くために、頸動脈内膜切除術を実施した41名の患者のプラ―クを分析しました。24名の患者は無症候性で、17名は症候性で神経症状を有していました。プラークの脂肪のすべては、質量分光計で分析されました。Bazan博士のチ―ムは、DHA量とEPA量を測定しました。無症候性患者のプラークは、症候性患者の2倍以上のDHA量を含んでおり、EPA量は約1.5倍でした。無症候群患者のアテローム性動脈硬化によるプラ―クには、炎症は著しく少ないようでした。

将来、食事性オメガー3不飽和脂肪酸を補ってやることが、中等度もしくは強度の頸動脈狭窄の患者の頸動脈が関係した症状を防ぎ、脳卒中発作の予防となる治療上の標的となるかどうか、の答えの一助となる、とBazan博士は述べています。更なる研究により、オメガー3不飽和脂肪酸が脳卒中発作予防のための武器となることを期待しています。もちろん、他の栄養素も複雑なメカニズムで協働して脳卒中を予防している、と考えています。

References

Fish oil may protect against  stroke from ruptured carotid artery plaques:Science Daily,
Nov.1,2009

新医化学:山村雄一、南山堂

Vascular Pharmacology