グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

「大島山火記」

2023年08月13日 | 火山・ジオパーク
大島古文書研究会編集の「大島山火記」が発売されたので、購入しました。

伊豆諸島を管轄していた韮山代官所の代官が、江戸時代(安永)の噴火を報告した時の記録のようです。(1777年に始まった噴火は、マグマのしぶきを積み上げて三原山を作り、東側の海まで溶岩を流した大噴火でした)

冊子には下記写真のような「原文・解読」が一行ずつ、何行も並んで掲載され

その後「読み下し」「現代語訳(原文の一つ一つの語句にこだわらずに読者が事実をくみとれるよう意訳したもの)」と続きます。
私でも理解できる現代語訳の内容が興味深かったので、印象に残った部分を少しだけ紹介します。(青の小文字は、冊子からの抜き書きです)

噴火の始まり!
「7月29日の夕方、噴火が始まり、空一面に赤い炎が立ち昇り、ものすごい爆発音がひっきりなしに聞こえました。しばしば地震があり、時々髪の毛よりも細い、黒白の長さが3センチから10センチほどの火山毛と、小さいかなくそのような火山灰が降りました。
8月6日は朝から夜中までずっと大雨が降りましたが、なおも爆発音が強く、翌7日には特別に強くなり、降灰も地震も度々ありました。11日までこの状態が続いたので、島中の男も女も家の仕事ができませんでした。」

江戸時代に大きな噴火が起き、火山灰被害が大変だったということは知っていましたが、リアルな描写に「将来自分も経験するかもしれないこと」という実感が湧きました。

ペレの毛が、いっぱい降ったらしい!
「毛よりも細い灰は、5つの村すべてに降りました。降る量には差がありました。けれども小さなものはほとんど残っておらず、多く降った所でもクモの巣のように残っているだけです」


髪の毛よりも細い「ペレの毛」と呼ばれる火山ガラス。(実物を見たい方はこちら
ハワイでは細くて金色でとても脆い物をたくさん目にしましたが、大島で見たことがあるものは、下の写真のような“黒い短毛”という感じの物ばかりで

「溶岩の粘性の違いかな?」と思っていました。でも実は江戸時代にたくさん降って、壊れてしまっていたのですね!!

食べ物に苦労!
「以前は土の中から芋を掘り出して食料としていたのですが、芋の出来がとても悪くなっております。またムロアジ漁の最盛期なのですが、噴火の影響で島の近くの海には魚が寄り付かず、漁は全くすることができません。」、「(溶岩が流れた場所の近くの畑は)火の勢いで農作物が残らず枯れてしまいました。」

当時の暮らしは、この噴火で本当に大変なことになったのだなぁと、身につまされました😢

正体不明の地響きが怖すぎる!
「1778年9月8日、昼も夜も相当に噴火が激しく、夜中でもとても明るく、噴煙が高く立ち昇り、音はぞっとするほどものすごく、大きな石を落としたように大地が響きました。そこから溶岩は赤沢と言う沢に流れ出しました。大きな石が崩れ落ち、沢を埋めその辺の草木は残らず焼けてなくなりました。」

「赤沢」というのは、今の「赤ダレ」と呼ばれる沢でしょうか?

この景色の下には、とても厚い溶岩が残っています。草木を残らず焼き尽くした溶岩だったのですね…。

真ん中あたりに点のように写っている人(私ですが)の身長から想像するに、15mぐらいの厚みがありそうな溶岩です…。

また、裏砂漠に行くと、黒い地面に白っぽい石が散らばっている場所があり、火山研究者の方から「たぶん1777年に始まった爆発的噴火で飛んだ物だろう」と聞いていました。

文章を読んで「こんな硬くて重い石が上空から降ってきて地面にめり込んだら、大地の響きが集落まで伝わるだろうな…」と、想像しました。あくまでも、私の勝手な想像ですが、どこで何が起こっているか分からない状況で、振動だけ響いてきたら怖いだろうなぁと思いました。

身を清めて祈るのみ!
「木々の葉が焼けて、灰が島中の5つの村に降りました。「噴火は神の日だ」との言い伝えがあるので、村々の男も女も夜明けから浜に出て、身を清め、その村の鎮守様に行って祈願をしているとのことでございます。」


海に入って、体を清めてから噴火鎮静を祈願するという記述は、複数出てきました。
今のような火山観測体制がなかった江戸時代…。人間ができることは、祈ることだけだったのですね(今も、最終的には、避難すること以外は、祈ることしかできない気がしますが…)

溶岩は海に流れ込んだ!
「波打ち際から沖に向かって100メートルほど海面から炎が激しく燃え上がり、高さ4から5メートル、幅4キロ位にわたって大きな石が積み重なっている状態です。それだけでなく爆発音は昼夜を問わず大きな雷のようになり、地響きは強烈で、夜中も周りは明るく、ものすごい噴煙が島全体を覆いました」

溶岩が、島北東部の海に流れ込む時の噴火は、相当凄かったようです。
でも文字記録がないだけで、海に囲まれた島では、何度もこのような光景が繰り広げられてきたはずです。

この冊子を読んで、将来この島で起こるであろう現実を、自分ごととして感じることができました。

時間と労力のかかる作業を継続され、まとめられた「大島古文書研究会」の方々に、心から感謝します。

冊子は元町にある藤井工房で、1冊1,200円で購入できます。
送料実費で郵送もしてくださるようです。
希望される方は、島藤井工房(090-4026-0645)まで。

(かな)
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