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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 766 週間リポート ヤクルトスワローズ

2022年11月16日 | 1977 年 



巨人け落とすには1番がカギ
広岡監督が珍しくナゾカケを出した。「1番になれるかどうかは1番が1番より先に復活することだよ」よくよく聞かないと分からないナゾカケ。正解は「1番」を3回言ったが最初は首位躍進の事で、次は若松選手の事。最後は王選手の事だ。阪神と抜きつ抜かれつの2位争いをしているヤクルト。「今のウチに首位になれるだけの力はないが仮に首位になったら選手は大変な自信を得られる。首位を狙うには先ずは阪神を倒して巨人への挑戦権を得なくては(広岡監督)」と5月21日からの対阪神3連戦に臨んだが結果は1勝2敗に終わった。冒頭のナゾカケは負け越しが決まった後に飛び出したモノだった。

打率4割を超える猛打で首位打者争いのトップを快走していた若松選手だったが阪神戦の前の広島戦あたりから調子を崩し打率は急降下。肝心の阪神戦でもバットは湿ったままで打率4割を切っただけでなく同僚の大杉選手に抜かれてしまった。大杉選手が好調なのは心強いが、あくまでもチームリーダーは生え抜きの若松選手なのだ。その若松選手の打撃に陰りが出始めたら、ただでさえ凡打を繰り返す両外人が当てにならないヤクルトにとってお家の一大事なのだ。もう一人の「1番」である王選手は22打席ノーヒットの惨状で巨人も6連敗中。どんなに強いチームや選手も長いシーズンではスランプはある。要は如何にスランプの波を小さく抑えるかだ。

「あっち(巨人)の1番はいずれ打ち出すだろうが、願わくば復活は先延ばしして欲しいね。ウチの1番にはそんな悠長なことは言っておられんよ」と広岡監督が本音を漏らしたその日(5月23日)の神宮球場の試合で若松選手は4打席ノーヒットでチームは負け、王選手は近所の後楽園球場で23打席ぶりにヒットを放ち巨人は再び連勝街道に走り出した。首位と若松選手にかけた「1番」への思いは明けて24日からの巨人戦で明暗がはっきり出た。王選手の48打席ぶりの打点でヤクルトは負け、翌日の試合では本塁打を許した。若松選手が再び打ち出すまで広岡監督の「イチ、イチ、イチ」の呟きは止みそうにない。


外人が " 害人 " を返上したぜ!
マニエル、ロジャーの2人がようやく " 害人 " から脱して本来のガイジンパワーを見せるようになった。神宮球場での巨人戦、中日と帯同遠征した長崎・熊本の九州シリーズで3試合連続本塁打したマニエル選手。ロジャー選手も熊本での中日戦で苦手の左腕・松本投手から一発を放つなど遅まきながらエンジンがかかってきた。「働くどころかチームの雰囲気を悪くする害人なんていらん!」と言い続けてきた広岡監督だが、ようやく本領発揮の2人の助っ人に前言を撤回せざるを得ない。「オールジャパンじゃやっぱり迫力不足だものなぁ」と苦笑しながら最近は2人をスタメンで起用し続けている。

「なぜ我々を使わないのか」という両外人の抗議に広岡監督はひとつひとつ細かに凡プレーを列挙して起用しない理由を説いた。マニエル・ロジャー選手が菅原通済なみに三悪(打てない・守れない・走れない)追放を実践するようになったのは、このままでは広岡監督に見放されてクビになる危機感を実感したからだ。2人は自主的に特訓を志願し、ロジャー選手が欠点である低目の変化球に手を出さないよう心がけ、マニエル選手は走り込みに精を出した。こうなると福冨選手や山下選手らジャパニーズがいくらハッスルしても " 脱害人 " の2人には敵わない。「やっとお灸が効いてきたかな」と広岡監督はニンマリ。


あなたはどう表現しますか?
奇跡は二度起きた。柳の下にドジョウは二匹いた。どんな表現をしても若松選手の " 2試合連続代打サヨナラ本塁打 " の快挙は言い尽くせない。6月11日・12日の広島戦2試合とも若松選手のワンスイングで決着がついた。ヤクルトナインは勿論、冷静でなる広岡監督も狂喜乱舞だ。首位打者争いトップの若松選手が代打で出場すること自体が不思議なのだが、実は6月5日の中日戦で脇腹を痛めてスタメンを外れていた。新井トレーナーによると筋肉痛でもかなりの重症で全治まで2週間は必要との診断で、登録を抹消して治療に専念するくらいの怪我だったが若松選手はベンチ入りを志願し、代打での一振りに賭けていた。

素振りをしてみたがズキンと痛みが走った。ファールが続いてもダメ。文字通り「一振り」に全身全霊を集中させるしかなかった。若松選手の気持ちを読み取った広岡監督は「土壇場の勝負所に限って使ってみよう」と決めた。若松選手は「ファーストストライクを思い切って振る。仕留められずファールになったら潔く降参(見逃し三振)だ」と一か八かの大勝負に賭けるあたりは昔の神風特攻隊の精神。「チャンスはワンスイングのみ。当たって砕けろの精神で挑んだが狙っていたホームランが打てるとは自分でもビックリしている」と若松選手が一番驚いているがそれが2日も続くとは。まさに筋書きのないドラマとはこのことだ。

3割打者でも10回中7回は凡退する。1試合平均4打席が回って来ても安打できるのは2回はない。ましてや本塁打を計算通りに打てるものではない。しかも1試合フルに出場して投手の球筋をじっくり見極め、配球を読み取って狙い球を絞るのとは違ってワンチャンスの代打勝負は打てる確率はグンと低くなる。2試合連続代打サヨナラ本塁打は昭和43年、ヤクルトの前身サンケイの豊田泰光選手が中日戦で2試合とも同じ中山投手から放って以来二度目の出来事。「同じ場面でもう1回打てるかって?無理、無理(若松)」は本音だろう。まさに神がかりの一発、いや二発だった。

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