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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 767 週間リポート 大洋ホエールズ

2022年11月23日 | 1977 年 



オッ!目を覚ましたぞオバQ
田代選手が5月4日の巨人戦で小川投手から13号本塁打を放って以来、実に20日ぶり試合数では14試合目の対阪神戦で61打席ぶりとなる14号を放った。実はプロ入りしてからこれまで阪神戦では本塁打はゼロで、この一発でセ・リーグ全球団から放ったことになる。開幕以来、プロ野球界にオバQ旋風なるものを起こしホームランダービーのトップを突っ走ってきた田代選手だが「僕はまだホームラン王って器じゃないですよ。追い抜かれるのは時間の問題です」と謙虚だ。その言葉通り阪神のブリーデン選手が5月23日の大洋戦で14・15号を連発し田代選手はトップの座を明け渡した。

ところがところが、翌日にはブリーデン選手の目の前で15・16号を連発し再びトップに返り咲いた。「なんかモヤモヤしていたものが吹き飛びました。気分がスカッーとしました」と久しく見られなかった笑顔に。「最近はホームランが出なくて周りから『これで何試合出てないな』と言われましたけど自分ではヒットは打ててたので焦りは無かった。でもこれでしばらくはホームランのことも言われなくなるかな」と。本塁打を放った後のタバコの味は格別だという田代選手は旨そうに一服しながら意地悪っぽく片目をつむっておどけた。

5月26日現在、本塁打はブリーデン選手と並び16号で同数1位。打率は3割7分3厘で若松選手に1分6厘離して単独1位。打点はトップのブリーデン選手と1打点差の2位ともはや三冠王も視野に入っていると言っても過言ではない。「いい感じですよ。軽く当てただけであそこまで飛んで行きましたから」と15号本塁打が対阪神戦プロ入り初ホーマーなら、その試合の4打数4安打もプロ初だ。三冠王はともかく弱冠22歳、年俸340万円の安サラリーでこの快進撃はとても痛快である。やっぱり君はオバQだよ、田代くん。


洋子、見てくれオレの笑顔
ガラスのエースこと平松政次投手が6月3日にやっと今季初勝利をあげた。ヤクルト相手に7安打・2失点で完投勝利。昨年10月11日に同じくヤクルト戦で勝利して以来、7ヶ月ぶりの笑顔だ。試合後の第一声は「あ~疲れた」だった。久しぶりの勝利に星野投手(中日)はマウンドで男泣き、池谷投手(広島)も復活劇で涙を流したのと対照的に平松投手は笑顔・笑顔だ。昨秋に女学生(フェリス女学院大学)の洋子さんと結婚し、第二の人生を歩き出し今年に賭ける意気込みは例年以上だったが出だしから平松投手にとって暗い出来事が続いた。自主トレの初日に孫のように可愛がってもらった中部謙吉オーナーが突然の死去。

「何としてもオーナーの墓前に好成績を報告したい」と決意しハードトレーニングをしたが裏目となり気持ちに身体がついて行かなかった。自主トレ中に腰痛を発症しキャンプに参加できず多摩川で二軍の選手に混じり練習する羽目に。腰痛が完治したのは開幕1週間前。オープン戦登板は僅か3イニングだけでペナントレースに突入することになった。その後も連日の投げ込みに精を出したがこれまた裏目に。肩が張っていたのに無理に続けた為に今度は肩痛になってしまった。プロ入り11年目となる平松投手も度重なるアクシデントに焦らずにはいられなかったのである。今季初勝利に「これでもう大丈夫。腰も肩も足も全て完治しました。2勝目も間近ですからその時また話をさせて頂きます」と口の方も滑らかな平松投手。


うらめしやウイニングボール
「嬉しくて嬉しくて思わずウイニングボールをスタンドに投げ込んでしまいました」感激のあまり日頃のウイニングボール収集の趣味を忘れてしまい後悔する斎藤明雄投手。プロ入り初勝利は5月8日の阪神戦(甲子園)で先発し、7回を投げ高橋投手の救援であげた。2勝目は5月11日の巨人戦(川崎)で二番手投手として登板し4回を投げて、初勝利と同じく小谷投手の救援のお世話になった。合宿所にはこの2個のウイニングボールが飾られているが斎藤本人としては是非ともウイニングボールを自分の手で掴みたいと思っていた。「先輩から手渡されるのではなく自ら手にしたい」と。それが6月12日の巨人戦(川崎)で実現することになる。

4対2とリードした6回表に高橋投手が一死二・三塁の場面で代打の淡口選手に右翼場外に特大の逆転3ランを打たれた後に斎藤投手が登板し後続を抑えた。その裏の攻撃で二死一・二塁のチャンスに打席に入った斎藤投手。プロ入り以来、未だに無安打とあって「代打だなと思ってました。そうしたら監督さんに『新浦投手の球は速いから右方向へおっつけて打て』と言われて驚きましたが必死に球に食らいつきました」と無我夢中で打った斎藤投手の打球は右前打となりプロ初安打が初打点を記録し同点に追いついた。更に続く代打の伊藤選手の適時打で逆転に成功した。この虎の子の1点のリードを斎藤投手が最後まで守り、最後の打者・王選手を二ゴロに仕留めて勝利した。

念願通りウイニングボールを受け取った斎藤投手は興奮のあまりその球を一塁側のスタンドへ投げ入れてしまった。大勢の記者に囲まれてヒーローインタビューに応じているところにスタンドでウイニングボールを手にしたファンが斎藤投手のサインを貰おうとやって来た。気分良さそうに『斎藤明雄・3勝目』と書いて渡した。記者団から解放されてロッカールームで一息ついた斎藤投手だったが、プロ入り初安打・初打点で勝って手にしたウイニングボールを手放したことに少々恨めしそう。「でもまぁいいや。これが最後というわけでもないし、これからもっと頑張ればいいさ」と気持ちを入れ替えた。

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