前回の版もそうだったのですが,第2版では各分担翻訳や監訳の先生方による訳注が充実しています。 どんなときに訳注をつけるか?翻訳書なので,もとの本文を読むだけでは理解が難しそうな部分ということになります。少なくともが私が「訳注」をつけた基準は,自分で読んでも十分理解できず,周辺情報を調べてみてやっと理解できたような場合でしょうか。それとサパイラではしばしば見られる皮肉を込めた反語的な表現で,顔面通りに通り読んでも補足しないと理解しにくいだろうと判断した場合などです。
それぞれ担当した先生方によってもこだわりがあって,○○徴候といった人名のついた所見では,冠名の元となった医師について詳細に説明してある場合があります。訳注にも翻訳者の個性がでていて思わずニヤリとさせられることもしばしばです。
また実は「ど〜でもいいかも」といった情報もあります。例えば19章静脈で私が訳注を追加した部分がそうです。頸静脈の見え方を解説した図19−2で,3人の人名(ピタゴラス氏,スカーレット嬢,マスタード大佐)が挙げてあります。ピタゴラスはご存知のように古代ギリシアの数学者です。この後,頸静脈の高さの説明に「ピタゴラスの定理」を使って解説があるので,それにちなんで使ったのでしょう。では「スカーレット嬢,マスタード大佐」って誰よ?と思いますよね。私はこれが気になって仕方がありませんでした。それでネットで散々調べてみて「英国発症の有名な古典的傑作ボードゲームの登場人物である」と突き止めました。こんなの別になくても本文を読むのに何の支障もありません。でもちょっと面白いと思って訳注に追加したのでした。
これは,ほんの一例です。もっとも凄いのは10章「眼」です。訳注の総数,なんと125!総ページ数が多い26章「神経」で訳注が91ですから,これは凄い分量です。内科医にも分かるように眼科的な細かいことまで補足解説がされています。こんなことまで!といったことにも解説が追加されています。
訳注を探して拾い読みするだけでも,各章それぞれ担当された先生方のこだわりが伺い知ることができて面白いですよ。