H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

In My Resident Life! (リバイバル 10年前の記事)

2020-01-15 | 臨床研修

この時期になると週間医学界新聞のレジデント号に掲載される「In My Resident Life」という企画。いろんな先生方の若い頃のアンチ武勇伝が載っていて楽しみにしています。10年ほど前に私も頼まれて書いたことがあります。今読んでも面白い経験だったなぁと思います。せっかくなので,リバイバルで魚拓がわりにこちらに再掲させてもらいます。
(さすがに古い記事だから医学書院さん許してね・・・笑)

 

------<週間医学界新聞 レジデント版 2011年1月10日より>-----------

1)研修医時代の失敗談ー深夜に大音響で鳴り響いた火災報知器

レジデント時代は,とにかく常に睡眠不足だった。カルテを書きながら病棟やICUの机で寝てしまうのは日常茶飯事。スタッフの先生から説教を受けている最中に居眠りをして,さらに叱られたこともあった。夕食を食べそびれたある日の深夜,医局でカップラーメンを食べようと湯を沸かそうとしたときのことである。コンロの付け火の調子が悪いらしく何度も点火を試みていたところ,狭い調理室に一瞬ぼわっと大きな炎と煙が立ち上った。次の瞬間・・・病院全館に大音響で非常ベルの音が鳴り響いた。「何,何なんだ?このベルは?」とカップラーメンを手にして首をかしげていると,当直婦長や事務当直が自分に向かって走ってくる。「そこだ〜!」と大騒ぎになって火災報知器が感知されたことを知った。消防署へ誤報の連絡をしてもらったり,婦長さんには大目玉をくらうわ,散々であったのは言うまでもない。

 

2)忘れえぬ出会いー素手で受け取った赤ちゃん

1年目の産婦人科ローテーション中のことである。その日はER当番であったが,産科病棟から「先生!!大至急来てくださいっ!」と緊迫したコールが入る。当時産婦人科では,原則として毎日オンコールで夜間にお産があれば駆けつけることになっていた。ただしER当直の夜は例外で,その日はコールがないはずだった。ただならぬ様子に(何で呼ばれるんだよ・・)と少しむっとしながらも病棟に急ぐ。しかし,そこで目にした光景にそんな気分もふっとぶ。陣痛室からうめき声が聞こえ,産気づいた妊婦さんが車いすに乗っている。足の間からすでに赤ん坊の頭が見え始めている。こちらも大慌てで「落ち着いてっ!!ゆっくり息をして・・」などと声をかけるが,陣痛が始まった妊婦さんにはこちらの制止は聞こえていない。分娩台にのせる余裕もない。患者さんの足下にしゃがみ込んだ次の瞬間,赤ちゃんが「つるん」と出てきてしまった。手袋をはめる間もなかった。(うわあっ!!落としてはいけない!!)と必死の思いで赤ちゃんを素手で受け取った。その時の「ぬるん」とした感触と落とさないでヨカッタ・・という安堵感は今も鮮明に覚えている。臍帯の処理をして赤ちゃんを看護婦さんに手渡した,まさにその時,連絡を受けた産婦人科スタッフの先生が到着したのであった。あの時の赤ちゃんも,とうに成人しているはずだが,どうしてるだろうかと今でも時々思うことがある。

 

3)あの頃にタイムスリップ! 思い出の曲

大瀧詠一「君は天然色」今年3月にそのアルバム「A LONG VACATION」の30周年記念版が出る予定。もちろん予約済み。

 

4)研修医・医学生へのメッセージ

自分が好きなことをやること。そして自分がしていることを好きになること。何をやりたいのか,それを探しつづけること。見つけたら後はふり返らないこと。レジデント時代は辛いことも多かったが,自分は不思議にやめたいと思ったことは一度もない。「その時点で」自分が選んだ道が最良の選択である。たとえその時には分からなくとも,どんなことにも意味があり後で役に立つ。そう信じることである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 嬉しい再会と送られてきたカ... | トップ | 東君平さんと「くんぺい童話... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

臨床研修」カテゴリの最新記事