H's monologue

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野口善令先生の『診断推論奥義伝授』

2019-09-20 | 臨床研修

名古屋第二赤十字病院の野口善令先生が,名著『誰も教えてくれなかった診断学』の続編を上梓されました。献本感謝です!

『誰も教えてくれなかった診断学』は,当時この分野に関してちゃんとした書籍がなかった時代に画期的な本だったと思います。初めて手にとったときに興奮して読んだ覚えがあります。

『診断推論奥義伝授』は野口先生によれば,時代に即して新しい内容も追加して大幅にバージョン・アップした内容,いわば「臨床推論」上級編を目指した本だそうです。実際,志水太郎先生が唱えられた "pivot and cluster" とか,"horizontal & vertical tracing" といった考え方にも言及されています。

「ゲシュタルトを鍛える」という項目のなかで,PMRの患者さんが起き上がるときの様子を私が「まず横向きになりベッド柵に手をかけてゆっくりと起き上がる動作をとる」という表現をしたことを引用して下さっています。これは以前,山中克郎先生が主催の諏訪湖畔で行われた「野獣合宿」でご一緒したときにお話したことだったと思います。

私が臨床推論に興味を持ち始めたのはチーフレジデントの頃(1989〜1990年頃)で,当時は「臨床決断分析」と呼ばれる分野のひとつでした(まだEBMという言葉もなかった頃です)。そしてNEJMのClinical-problem solvingの連載が開始されたのが1992年でした。これを初めて読んだ時は「エキスパートの脳みその中が分かる!」という感じで,本当に興奮したものです。これを教材にして,研修医向けにカンファレンスを散々やりました。それが,のちに東海大学に異動して始まった小田急沿線腎臓内科交流会という勉強会や,さらに現在も続いている大船GIMカンファレンスに繋がります。今ではCPSスタイルのカンファレンスは珍しくもないですが,当時から考えると隔世の感があります。

CPSについての名著は,『Learning Clinical Reasoning』という本があります。これは唯一無二の本と言ってもいいくらいです。第2版を岩田健太郎先生が翻訳されており,以前このブログでも紹介したことがあります。

今では,臨床推論についてはごく一般的になっていますが,意外にちゃんと勉強しようとすると手頃な本がありません。そういった意味では基本的な内容から高度なことまで触れられている素晴らしい本だと思いました。最後にコラムでAIについても解説されており,とても勉強になりました。超オススメです。

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