H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

市立大町総合病院

2018-09-07 | 臨床研修

信州大学総合診療科 関口健二先生のお招きで,長野県大町市にある市立大町総合病院に伺いました。中規模の地域病院で総合診療を実践されている先生方に,自分の経験が少しでもお役に立てばと思いました。また近隣2病院の研修医の皆さんが初めて参加くださったというのも嬉しいことでした。

テーマは『On Bedside Teaching 〜ベッドサイドは学びの宝庫〜』

 まずイントロで,ベッドサイド回診について,そこから学べること,そこでしか学べないことについて,症例の動画や画像を交えてお話。もちろんLaCombe先生の「On Bedside Teaching」の紹介もしました。その後,実際に病棟へ。当初,カンファレンスルームで症例提示を聞いてから病棟に,と言われましたが,ここはLaComebe先生ばりに,最初から病棟に向かいました。
1例目は,脳梗塞後遺症のある高齢男性に起こったネフローゼ症候群の方について。診断というよりも今後の治療につきどうするか,難しい問題でした。
2例目は朝から後頭部,頸部が痛くて動けなくなった高齢女性。もともとはご主人とともに毎日畑仕事をして自給自足で生活しているほどお元気な方が,急に頸部の痛みで動けなくなったとのことでした。当初は脳神経外科に入院になったものの原因不明のため,直前に内科に転科になったばかりでした。このため担当の先生もまだ十分に情報は把握できていない状況とのこと,それではと実際に患者さんのお部屋にみんなで伺って,症状の経過を最初から聴きだして,その場で考えることにしました。簡単な自己紹介をしたあと「大町はいいところですね」と話かけると「あら嬉しいわ・・」と思ったよりもお元気な応答があり,そこから症状をゆっくり症状を聴きだしてゆきます。途中で診察を交えながら話を続けます。ある日の朝から,首が痛くなり動かせなくなった。頭痛はない,咽頭痛もない。明らかな筋肉痛もない。最初,高齢女性の急性発症の後頸部痛(さらに当初脳外を受診してMRI, LPまで行われて異常なし)というキーワードから,即座にCrowned dens syndrome(CDS)が想起されました。これは担当の3年目の先生も考えていたようで素晴らしい!症状から側頭動脈炎,PMR, 咽後膿瘍,石灰化頸長筋腱炎などを除外することを意識して話を続け,診察してゆきます。浅側頭動脈の圧痛は左右ともに認めず。後頸部のLNは触知せず。自覚的な嚥下痛はない。内頸動脈に,おや?少し圧痛がある?でも再現性には乏しいか。血管雑音は認めない。頸部は痛みのため回せない。顎跛行の症状はなさそう。視野障害など目の症状もない。回診の時点で,発熱がみられました。炎症反応は予想通り高値。SAHや髄膜炎が実質上否定されていることも含めて,ほとんどの情報がCDSを示唆します。頚椎のthin sliceのCTが必要で,おそらくNSAIDがよく効くでしょうねとの結論になりました。患者さんとの会話はとても楽しく,大町での生活などにつきもっとお話を伺いたかったのですが,発熱していることもあり,そのあたりで切り上げることにしました。
 その後,再びカンファレンス・ルームにもどって回診の際の診察内容の振り返り,時間が少し余ったので心音の基本的な話(どうやって自分で意識して勉強するか)をさせていただきました。終了間際に,先ほどの患者さんのCTの検査で,典型的な石灰化があってCDSの診断が確定したことを聞きました。終了後の懇親会でも,皆さんと楽しいひとときを過ごしました。




 市立大町総合病院の研修を拝見して,やはり中規模のCommunity Hospitalでの研修が,自分にとって考える理想的な研修の形だなあと再確認しました。自分の病院ともほぼ近い規模で行われている研修は,その利点だけでなく難しい点も含めて,非常に親しみを感じました。関口健二先生,その他のスタッフおよび研修医の皆さん,本当にありがとうございました。
コメント
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