面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「孤独のススメ」

2016年05月17日 | よもやま
オランダの田舎町。
妻に先立たれ、家を出た息子とは疎遠なまま、ひとり静かに暮らす初老の男フレッド(トン・カス)。
毎週日曜日の礼拝以外は近所づきあいも避けて、ひっそりと毎日を送っていた。

ある日、言葉が不自由で意思の疎通がままならない謎の男テオ(ルネ・ファント・ホフ)と関わりを持ち、身寄りのない様子の彼を自宅に引き取るように同居をはじめる。
フレッドはテオに、自分の生活スタイルを押し付けるように“指導”していったが、やがて二人の間に奇妙な友情が芽生えてくる。
そして、ルールに縛られるように生きてきたフレッドの日常が少しずつ変化しはじめる。

フレッドの味気ない日常に“彩り”が出てきたある日、保守的な田舎町の住民たちは、彼らを訝しがるようになる…


信仰の篤い保守的な田舎町を舞台に、家族を失って自らを日々のルーティンに縛りつけるように生きてきた男が、何ものにも縛られることなく風のように生きる男との出会いによって生まれる変化を描く。
自由な男に触れることで、自らを解き放つことができたフレッドは、“人間らしさ”を取り戻すように、表情さえ変わってくる。

何かに縛られて生きることは、手に入れられる幸福を逃すだけでなく、今ある幸せをも失うことにつながるのではないだろうか。
“心の縛り”は、誰にでも生じるものであり、誰もが知らぬ間に作り上げていることも多い。
その不自由さから自己を解放すれば、心も身体も軽くなるというもの。
必要最小限の“しがらみ”にのみ従って生きることで、毎日が明るく、楽しくなるものだと再認識。


ロッテルダム国際映画祭観客賞を始め、世界各国の映画祭で数々の賞に輝いたのもうなずける。
テオと彼を温かく見守る人に、自らを解放することの大切さ、楽しさを感じさせてくれる佳作。


孤独のススメ
2013年/オランダ  監督:ディーデリク・エビンゲ
出演:トン・カス、ルネ・ファント・ホフ、ポーギー・フランセン、アリアーヌ・シュルター


最新の画像もっと見る

コメントを投稿