面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「放課後ミッドナイターズ」

2012年08月29日 | 映画
名門・聖クレア小学校の理科室は、取り壊し予定になっていた。
「危険だから入ってはいけない」と言われた、学校見学会にやってきたスーパー幼稚園児のマコ(声:戸松遥)、ミーコ(声:雨蘭咲木子)、ムツコ(声:寿美菜子)の3人が、おとなしくその場を立ち去るワケは無い。
オトナ達がいなくなればそのまま忍び込むのは当然。
見たことの無い不思議なものがいっぱいあって楽しんでいた3人は、人体模型を見つけると、体中に好き放題に落書きをして飾り立てた。

その夜。
パッチリまつ毛に青ひげ、鼻には花を飾られ、股間にかわいらしい象の絵…
体中さんざんに落書きされた人体模型のキュンストレーキ(声:山寺宏一)は、クソガキどものあまりの仕業にキレた。
しかしただキレるだけではないのが、長年理科室に立ち続けてきて、天才的な科学知識を身に付けたキュンストレーキのイイところ。
3人をパーティに招待するふりをしてお仕置きを企てる。
しかもただお仕置きするだけではなく、3人に伝説のメダルを集めさせ、理科室の取り壊し阻止を図ることにしたのは、相棒の骨格標本・ゴス(声:田口浩正)の提案。
こうして、あったまイイ~二人(…二体?)は、学校中の“ミッドナイターズ”を呼び覚まして3人を待ちうける、「放課後ミッドナイトパーティ」作戦を敢行することにしたのだった!

そして、“罠”(…ゲーム?)が仕掛けられているとも知らずに、マコ、ミーコ、ムツコのスーパー幼稚園児3人組は、パーティの招待状を手に、真夜中の聖クレア小学校へとやって来た……!


MOMA美術館のコレクションに加えられた短編『BANANA』で世界的に注目されている、映像作家・竹清仁が監督を務める初の長編アニメーション。
夜な夜な歩きだす人体模型や骨格標本に、目をぎょろぎょろさせる音楽室の肖像画。
「学校の七不思議」と呼ばれる“伝説”をモチーフに、3人の“スーパー幼稚園児”と“異形のモノたち”が、真夜中の学校を舞台に繰り広げるロールプレイング・ゲーム的要素も盛り込まれたハイテンション・ムービー。
モーションキャプチャーによる滑らかな動きと、程良くデフォルメされたデザインのマッチングが、非常に親しみやすくて心地よい。
子供の頃、東映アニメの「孫悟空」を見たときの、なめらかな動きのアニメーションに対する感動と畏敬の念が、自分の頭の中には刷り込まれているからだろうか。

主にハリウッド作品に見られるCGアニメーションでは、実写のような立体感と“質感”のある映像が追求されている。
二次元であるアニメーションの中に、いかに三次元を表現するかを追求し続けている。
しかしアニメーションと名を変えても、「絵」はあくまでも「絵」であり、二次元の“空間”に広がる世界でしかない。
そこに、どれだけ三次元の空間を描いてみても、「すごい」「本物のよう」と感心はするが、それ以上の感動や親しみの感情は湧いてこない(ストーリーからの感動などはあるが)。
二次元の世界にいくら精緻な“三次元的”映像が描かれても、結局は「それなら実写にすればいい」と思ってしまうのである。

その点、本作のアニメーションはあくまでも漫画としての“絵”であり、そこに二次元の世界としての安心感があって親しみが湧く。
昔ながらの「セル画」に対する親しみやすさを残しつつ、モーションキャプチャーによる滑らかな(ホンモノの、“実写”のような滑らかな)動きで会話や動きの「間(ま)」が良く、物語に心地よいテンポを生みだしている。
敢えてアニメーションと謳わずにプロモーションが展開されているということだが、むしろアニメーションの進化系として、「これはアニメです」と打ちだしてもいいのではなかろうか。


あくまでも二次元としての面白さが楽しい、ハイテンションに突っ走るアトラクション・ファンタジー!

宣伝用ムービーも爆笑モノにつき、一篇たりとも、くれぐれもお見逃しのないよう。


放課後ミッドナイターズ
2012年/日本  監督:竹清仁
声の出演:山寺宏一、田口浩正、戸松遥、雨蘭咲木子、寿美菜子