面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「エイトレンジャー」

2012年08月22日 | 映画
2035年の日本。
繰り返し天変地異が襲い、経済状況は回復の兆しをみせず、超少子高齢化社会が到来していた。
人口は減少し続け、とうとう7500万人にまで減ってしまった。
徹底的に「小さな政府」への移行が推し進められた結果、あらゆることが民営化され、国民の生活コストは高まるばかり。
警察さえも民間業者となった日本で、重い金銭的負担に耐えうるセレブが集まる、トウキョウシティ、オオサカシティ、ナゴヤシティなどの大都市だけは治安が維持され、市民は平穏に暮らしていた。
国から見捨てられた地方都市にはテロリストがはびこり、略奪や誘拐、人身売買などの犯罪行為は日常茶飯事。
トウキョウシティに近い八萬市(エイトシティー)も他の地方都市同様に荒れ果て、全国組織のテロリスト集団「ダーククルセイド」の第3部隊が暗躍していた。

ある日、借金取りに追い詰められていた横峯誠(横山裕)は、エイトシティーの自警組織「ヒーロー協会」の会長・三枝信太郎(石橋蓮司)によって窮地を救われる。
三枝からヒーローにスカウトされた誠は、ニートから脱して借金返済が叶うならと協会を訪れると、彼を歓迎した三枝から、いきなり協会に所属するヒーロー達のリーダーに指名された。
とまどう横峯をよそに紹介されたのは、何の変哲もない6人の青年。
アルコール依存症の渋沢薫(渋谷すばる)。
メンズエステや歯の矯正など自分磨きに余念が無く、それが高じて借金を抱える村岡雄貴(村上信五)。
ネットショップのとりこになって依存症となり、借金にまみれた丸之内正悟(丸山隆平)。
片っ端から青い物を買い漁って借金に追われる安原俊(安田章大)。
一度だけ売れたときの栄光が忘れられず、自身のオリジナルグッズを自費で作って借金を背負う、ストリートミュージシャンの錦野徹朗(錦戸亮)。
鹿児島の田舎育ちで、あまりに純粋過ぎて人を疑うことを知らず、「振り込め詐欺」から格好の餌食にされて借金を重ねている大川良介(大川忠義)。
6人は「エイトレンジャー」としてヒーローに指名されているのだが、それぞれ金を稼げると聞いて協会に集まっただけで、ヒーローとしての自覚もヤル気も全く無かった。

一方、もはや警察としての機能を有していない八萬署に、正義感あふれる熱血刑事・鬼頭桃子(ベッキー)が着任した。
エイトシティーにおける伝説のヒーローであるキャプテン・シルバー(舘ひろし)に憧れる新米刑事・仁科遥(蓮佛美沙子)は、桃子と共に市民を守ろうという思いを強くしていた。
しかし彼女らの奮闘もむなしく、ダーククルセイドは犯罪行為で蓄財しながら無職の市民を次々に取り込み、着々と勢力を増していた。
エイトレンジャーはダーククルセイドに立ち向かうべく、キャプテン・シルバーに付いて修業を積むことになるが…


悪がはびこる近未来の日本を舞台に、“バイト感覚”ヒーローの「エイトレンジャー」達がやがて正義に目覚め、キャプテン・シルバーの導きによって真のヒーローへと変貌を遂げる、若者達の成長を描いたアクションヒーロードラマ。
そもそも「エイトレンジャー」というキャラクターが、関ジャニ∞がコンサートで見せるコントからきているとは知らなかった!
いかにも関西人的な“お遊び”で面白い企画だが、そんな彼らの大阪弁で言うところの“ちょけた”部分が、「TRICK」や「SPEC」を撮ってきた堤幸彦監督が繰り出すギャグとうまく融合して笑いを誘い、更に彼らのサービス精神が相まって化学反応を起こし、今までの堤作品よりもナチュラルな面白さを醸し出している。
「堤ワールド」を本当に面白くさせるには、彼らのように根っから「人を笑わせたい」という思いを持ったキャストでなくてはならない。
「ギャグなんだから笑えよ」という立ち位置からの演技では、観客から“素の笑い”を引き出すことはできないのである。


停滞する経済状況の中で格差社会が広がり、国民生活は不安の色を濃くしていくばかりで混迷の度合いを増していく日本において、このままの状態が続けば、こんな日本になっていくのではないか…!?
極端にデフォルメされた世界が描かれてはいるが、「もしかしたら、ありうるかも」というリアルさが滲む。
堤監督ならではの独特の世界観が広がるが、現代社会の問題点を“笑い”のオブラートに包みながらも鋭くエグく描きだす。
ラストシーンに登場する泣き顔の子供の姿に、「えっ!?」となって「うーむ…」と唸らされた。。


ほとんどスタントを使わずにアクションをこなした関ジャニ∞の身体能力も素晴らしい、「堤ワールド」全開の楽しい“近未来”SF娯楽アクション♪


エイトレンジャー
2012年/日本  監督:堤幸彦
出演:横山裕、渋谷すばる、村上信五、丸山隆平、安田章大、錦戸亮、大倉忠義、ベッキー、蓮佛美沙子、竹中直人、田山涼成、石橋蓮司、舘ひろし