面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ミレニアム2 火と戯れる女」

2011年02月07日 | 映画
小柄で華奢な体格で背中一面にタトゥーを入れ、ピアスを施した外見に無愛想極まりない態度ながら、凄まじく明晰な頭脳と映像記憶能力と鍛え抜かれた運動能力を持つ天才ハッカー、リスベット・サランデルの活躍を描く、スティーグ・ラーソンのベストセラーミステリー『ミレニアム』3部作の映画化・第2章。


少女売春の取材を進めていた社会派雑誌ミレニアム」の記者2人が惨殺された。
現場で、リスベット(ノオミ・ラパス)の指紋が付いた拳銃が発見される。
その後、彼女の後見人も射殺死体で発見され、3人の人間を殺した殺人容疑を掛けられてしまう。
リスベットは、捜査の網をかいくぐるべく身を隠しながら、独自に調査を進めた。
一方、彼女と共に富豪ヴァンゲル家の少女失踪事件を解決した「ミレニアム」の発行人ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)は彼女の無実を確信し、独自の方法で調査を始めながら、事件以消息を絶っていた彼女との接触を図る。
自分とも必要最小限にしかコミュニケーションを取ろうとはしないリスベットだが、彼は彼女の能力を高く評価する良き理解者だった。

真相に迫っていくリスベットの前に、謎の殺し屋が現れる。
身長2メートルあまりの屈強な肉体と、痛みを感じない特異体質を武器に、邪魔になるものはことごとく“排除”しながら、執拗にリスベットを狙う。
そしてミカエルは、少女買春の顧客リストから、ザラという男をあぶりだした。
そこから彼は、数十年前に公安警察内部に存在した特殊機関と強大な権力が、事件の背後に隠れていることを知る…


普通に言葉を交わせないほど、他人に対して強烈な不信感を抱くリスベットが、なぜそうなってしまったのか。
たまたま巻き込まれてしまった殺人事件をきっかけに、自らの忌まわしい過去と向き合い、巨大な陰謀に立ち向かうことになる。
全編に張り巡らされた伏線と壮大な仕掛けで、よりミステリー色の強い本作は、灰色に曇る冬の空のように、重く寒々とした雰囲気を漂わせる。

感情を露わにすることなく、相手から受けるパンチやキックなどの攻撃はおろか、スタンガンさえ効かない“謎の殺し屋”はまるでゾンビのようで、他の映画でも見たことのないような不気味さを漂わせる。
リスベットとザラの関係、ミカエルが突き止めたザラの犯罪組織と不穏な動きを見せる官僚達の謎など、物語が進むに連れて驚愕の事実が次々と明らかになり、スクリーンから目が離せない。
クライマックスで繰り広げられる“死闘”に思わず息を呑み、全身に力が入って緊張が極限に達したところで登場するミカエルに安堵するが、リスベットと共にボロボロになった気分に襲われた。


脅威の生命力で深手を負いながらも再び立ち上がるリスベットの姿は、応援せずにはいられない!
その勇姿にホセ・メンドーサに対峙する矢吹ジョーを彷彿とさせるのは自分だけか!?
(自分だけだろう)

第3章の結末を観ないことには気分が晴れない心持になる、“to be continued”ながらも上質のサスペンス。


ミレニアム2 火と戯れる女
2009年/スウェーデン=デンマーク=ドイツ  監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:ノオミ・ラパス、ミカエル・ニュークヴィスト、レナ・エンドレ、ペーテル・アンデション、パール・オスカーソン、アニカ・ハリン、パオロ・ロバート、ヤスミン・ガービ、ヤコブ・エリクソン、アレクサンドラ・エイゼンシュテイン、ニクラス・ユールストレム、ラルフ・カールソン、ハンス・クリスチャン・チューリン