面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ジーン・ワルツ」

2011年02月06日 | 映画
帝華大学病院・産婦人科医にして帝華大学医学部助教でもある曾根崎理恵(菅野美穂)。
大学で講義を受け持つ彼女は、時に体外人工受精や代理母出産の必要性を説く。
官庁との関係が深い、上司にあたる屋敷教授(西村雅彦)からは“要注意人物”とみなされ、講義を途中で止められることも。
大学当局からは煙たがられる存在となっている彼女を、准教授・清川吾郎(田辺誠一)は複雑な思いで見守っていた。

理恵と吾郎は、かつて産科医院・マリアクリニックで、院長である三枝茉莉亜(浅丘ルリ子)の一人息子・久広(大森南朋)と共に、三人で医学を学んでいた。
しかし後に医院は、久広が医療過誤により逮捕されるという大事件に見舞われ、更には茉莉亜も末期ガンに蝕まれたため、近く閉院する予定になっていたのだった。
理恵は、帝華大学に勤めながらマリアクリニックの院長代理として、医院に通う4人の妊婦を見守っていた。
身ごもった胎児が“無脳症”であると判明した27歳の甘利みね子(白石美帆)、未婚で妊娠し、安易な中絶を望む20歳の青井ユミ(桐谷美玲)、長年にわたる不妊治療の末、ようやく悲願の妊娠をした39歳の荒木浩子(南果歩)、顕微授精により双子を妊娠している55歳の山咲みどり(風吹ジュン)。
そんな理恵を、ジャーナリストの田中美紀(片瀬那奈)が頻繁に訪れていた。

ある日、ニュース番組で不妊治療や代理母出産についてインタビューを受ける理恵の姿が映し出され、帝華大学は大騒ぎに。
しかしそれは、彼女が密かに進めてきたある計画が、実現へと向かう序章に過ぎなかった…


「チーム・バチスタの栄光」では、高度な医療技術を誇るチームにおける確執を描きつつ、不眠不休で働く医師の過酷な労働状況を描き、「ジェネラル・ルージュの凱旋」では救急救命医療の現状を明らかにし、医療界の現状における諸問題を我々に教えてくれる海堂尊原作の医療ドラマ最新作。
今回は、産科医療における諸問題をテーマに、医療の原点ともいえる「命の大切さ」を我々に投げかける。

諸外国では認められているものの日本では制度の確立が進まない代理母出産の問題を中心に、産婦人科医が直面している療過誤問題や妊婦のたらい回し事件などの話題を散りばめ、我々に様々な問題点を提示する。
海堂尊作品の“お約束事”である、次から次へと災難が押し寄せるクライマックス・シーンは健在!
そして今回のクライマックスでは、生まれ来る新たな命が持つ“大いなる力”が奇跡を起こして感動を呼ぶ。


怒濤の展開の後に訪れる穏やかなラストシーンに、小田和正が歌う「こたえ」が見事にマッチし、感動を盛り上げる。
今回も最後の最後までスクリーンに目が釘付けになったまま、あっと言う間にエンドロールを迎えた。

理恵が医学生たちに語りかける、「生命の誕生は、それ自体が奇跡なのです」という言葉が観客の胸にも染みる、医療ドラマの傑作。


ジーン・ワルツ
2011年/日本  監督:大谷健太郎
出演:菅野美穂、田辺誠一、大森南朋、南果歩、白石美帆、桐谷美玲、須賀貴匡、濱田マリ、大杉漣、西村雅彦、片瀬那奈、風吹ジュン、浅丘ルリ子