功夫電影専科

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【Gメン82in香港カラテ①】『燃えよ!香港少林寺』&『吼えろ!香港少林寺』

2010-04-14 22:21:10 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「燃えよ!香港少林寺」
「吼えろ!香港少林寺」
製作:1982年

▼去年は『Gメン75』の香港ロケ編を特集で紹介しましたが、まだまだGメンの香港カラテシリーズは数が尽きません。そんなわけで(?)、今回は『Gメン82』の香港編を3回に渡ってレビューしていきたいと思います。

 長年親しまれてきた人気刑事ドラマ『Gメン75』だが、その物語も一応の区切りをつける時がやって来た。そして『75』終了から程なくして、『Gメン82』はブラウン管へと帰って来た。
新規参入のニューフェイス、重厚なストーリーなどは前作から変わらなかったが、対抗馬として『西部警察PART2』が存在した事で、Gメンたちは苦境に立たされてしまう。野性味溢れるアクションと派手なスタントシーンで一世を風靡した『西部警察』…ハードボイルド路線を貫いていた『Gメン』にとって、どんな犯罪組織よりも手強い強敵の出現であった。
『Gメン82』は様々な試みに挑むことで対抗していたが、人気が延びずに17話で終了してしまう。その1クールちょっとの中に、香港カラテシリーズは4本も製作されている。
いわゆる「テコ入れ」というやつだが、それまで『Gメン75』が得意としてきた李小龍(ブルース・リー)的なアクションは、1982年の時点では完全に時代遅れとなっていた。当時はジャッキーがコミックカンフー路線で活躍し、李連杰(リー・リンチェイ)が本場の功夫で登場していた時期にあたる。そこで『Gメン82』でも、タイトルに少林寺の名を冠することで流れに乗ろうと画策していたようだが…。

■日本で500万ドルの宝石を強奪した堀田真三&中田譲治ら兄弟(なんて濃い兄弟だ・笑)は、宝石鑑定士を殺して香港へ逃走。Gメンの篠田三郎・清水健太郎・三浦浩一の3人は、強盗殺人犯の兄弟を追って香港へと渡った。
今回はフレンドリーな香港警察&陳觀泰(チェン・カンタイ)の協力を得て、Gメンはあっさりと中田の逮捕に成功する。しかし、堀田が香港シンジケートに「中田を助けてくれ」と依頼したことから、事態はGメンとの全面抗争に発展してしまう。香港シンジケートのボス・陳惠敏(チャーリー・チャン)の元には、ストロング金剛、楊斯(ヤン・スェ)、竜咲隼人らカラテ使いの殺し屋たちがいた。まず陳惠敏は中田を奪い返すために、なんと警察署を真正面から襲撃!これによって陳觀泰の兄が人質にされてしまった…って展開が無茶すぎるぞ!(笑
 立てこもったストロング金剛らは、中田の釈放を要求。篠田たちは無視を決め込むが、結局は釈放を許してしまう。なんとか陳觀泰の兄は救出されたが、代わりに人質となった清水が窮地に立たされてしまった。しかし、そこに謎の女ドラゴン・三妹(誰?)が救援に現れ、陳觀泰もまんまと楊斯から宝石を奪い返した。
そして、三妹が陳觀泰の兄弟弟子であり、日本で殺された宝石鑑定士の娘であり、被害者かと思われた宝石商が香港シンジケートの仲間だったことが判明する。陳觀泰の兄は宝石商を始末するが、堀田と中田の手によって殺されてしまう。怒りに燃える陳觀泰は、三妹やGメンたちと共に敵地へ乗り込むと、カラテ使いたちを一網打尽にするのだった。

 …だが、これで引き下がる香港シンジケートではない。顔に泥を塗られた陳惠敏は、Gメンから500万ドルの宝石を奪い返そうと動き出していた。今回は逮捕されたカラテ使いたちに代わって、新たに唐天希(タン・テンシー…『小覇王』のハゲヤクザ)が参戦。香港へ立ち寄った警視庁副総監の娘を誘拐し、奪い返された宝石とカラテ使いたちの解放を目論んだのだ。
その後、楊斯とストロング金剛は牢獄から解き放たれ、宝石もGメンの江波杏子が受け渡しに向かうこととなった。ところが、身代金の宝石は突然現れた陳觀泰によって奪われてしまう。この陳觀泰、自分の境遇に絶望して自暴自棄になっていたようで、三妹はそんな陳觀泰を叱咤する。宝石は三妹が取り返してくれたので事なきを得たが、実はこの事件には内通者がいたのだ。その内通者というのが、誰であろう香港警察の本部長その人であった。
事が露見し、Gメンや副総監の説得で改心した本部長だったが、その直後に香港シンジケートの刃に貫かれてしまう。陳觀泰が現場に復帰し、香港シンジケートから取り引きの最後通告が言い渡される中、Gメンと香港シンジケートの最終決戦の幕が切って落とされた。ストロング金剛・唐天希を一蹴し、陳觀泰VS陳惠敏&三妹VS楊斯の死闘が始まる!

▲色々と疑問の尽きない作品だが、あえて言わせてもらいたい…どうしてこうなった!?(涙
まず最初にストーリー面の評価をしたいが、今回のGメンはあまりにも役立たずだ。これまでの香港カラテシリーズでもないがしろにされることの多かったGメンだが、この前後編での扱いは特に酷い。『燃えよ!香港少林寺』では、香港の警察署に襲撃を受けた際に人質の命をスルーし(銃で撃たれて死にそうになっている警官もいるのに)、なすすべ無く犯人を返還。もし三妹が助けに入らなければ、人質になった清水も死んでいた可能性が非常に高い。
『吼えろ!香港少林寺』では更に悪化していて、いとも簡単に副総監の娘を奪われる江波から始まって、三浦と清水が尾行に失敗し、陳觀泰にあっさり宝石を横取りされ、最終決戦には江波を除いて誰も参加しない(!)など、その醜態は目を覆うばかりだ。香港警察の本部長は「彼ら(Gメン)に一体何ができる?」「なぜ人質を助けない?」と発言していたが、まったくもってその通りだ。
 そんな役立たずのGメンに代わって、本筋を引っ張るのが陳觀泰と三妹なのだが、こちらもまた魅力に乏しい。
陳觀泰は身を持ち崩してギャンブル漬けになっているというキャラで、自分の殻にこもっているという点では『Gメン75』に登場した梁小龍(ブルース・リャン)に近いと言えなくもない。だが、よく解らない目的で宝石を奪ったり、途中で三妹に負けてしまったりするなど、完全にダメ中年にしか見えない。三妹もそんなに可愛くないし、いくらなんでもこれはなぁ…。
香港警察の本部長が裏切り者だったという展開や、陳觀泰の兄が家族のことを語った次の場面で殺されるあたりも強引だし、全体的にぼやけた作りになっているのは本当に残念だ。こんなテコ入れじゃ、人気が出なかった理由が何となく分かる気がする。

 功夫アクションはそこそこ頑張っているが、一番のネックは陳觀泰の存在だ。今までの香港カラテシリーズでは、旬の過ぎたスターが出ることもあったが、それなりの技量を見せてクオリティを保っていた。しかし、この作品の陳觀泰は腹が出ていて、技のキレも全盛期と比べて格段に劣っている。同期のスターである陳惠敏と比較すれば一目瞭然で、これでは盛り上がるものも盛り上がれない。
また、楊斯がメインの悪役になっていないことも問題ではないだろうか。『Gメン82』には初登場となる楊斯だが、唐天希やストロング金剛などと同格の扱われ方をしていて、ラストバトルでは陳觀泰に相手をさせてもらうことすら許されていない。楊斯にとって、この前後編は『Gメン82』に出演した唯一のエピソードだっただけに、この仕打ちは不可解だ。
あんまり動けていないストロング金剛の存在意義、出番が少なすぎる陳惠敏など、問題を挙げていけばキリが無いが、『Gメン』の香港カラテシリーズってこんなに質が低かったっけ?最初の香港ロケがこんな出来じゃ、先が思いやられるというか何というか…(爆

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