功夫電影専科

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【Gメン75in香港カラテ②】『Gメン対香港の人喰い虎』前後編

2009-12-08 21:45:14 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「Gメン対香港の人喰い虎」
「Gメン対香港の人喰い虎&PART2」
製作:1979年

▼『Gメン75』と香港の麻薬組織の戦いは、第175~176話『香港カラテ対Gメン』前後編で、より本格化していく。この前後編で楊斯(ボロ・ヤン)はついに最後の強敵へと昇格し、倉田保昭との激闘を繰り広げるのだ。ちなみに後編で楊斯の前に倉田と闘う2人組は、倉田の弟子である竜咲隼人と中村勇。竜咲はショウブラ作品の『少林寺VS忍者』で劉家輝(ゴードン・リュー)と戦い、中村勇は『激突!少林拳VS忍者』で忍者となって奮戦している。
 だが、第201~202話『Gメン対香港カラテ軍団』前後編で、遂に倉田がGメンから去る日が来てしまう。『少林寺VS忍者』の水野結花が登場し、『香港カラテ対Gメン』の楊斯の弟・楊斯(ややっこしい・笑)が立ちはだかるなど、盛り上がりを見せたエピソードであったのだが、ここで倉田の後釜はどうすべきかという問題が浮上する。勿論、Gメンらしい配役である事が第一だが、「香港カラテシリーズ」を続行するのならアクションの出来る俳優が必要となってくる。果たして、日本でJAC以外にあそこまでの格闘シーンを演じ切れる俳優がいるのだろうか?
 そこで白羽の矢が当たったのは、特撮俳優としても知られる宮内洋であった。空手三段・柔道初段という来歴、丹波哲郎との親交が深かった事と、大人気刑事ドラマ『キイハンター』への出演歴が宮内の起用という流れに繋がったのだろう。この『Gメン対香港の人喰い虎』前後編(第227~228話)は、Gメンデビューを果たした宮内をプッシュするために彼を中心として作られ、それに合わせて香港側のキャストもグレードアップしている。だが、本作を経た「香港カラテシリーズ」は再び方向転換せざるを得なくなってしまうのだ。

■黄金の三角地帯が打撃を受けて麻薬市場が高騰していた頃、香港では韓英傑(ハン・インチェ)率いる香港コネクションが動き出していた。
韓英傑は中崎康貴(『少林寺VS忍者』のサイ使い)に1億ドルの麻薬を日本へ密輸するよう指示するが、香港には麻薬捜査官の石田信之が潜入していた。すぐに運び屋の情報はGメンの知るところとなるが、監視役のジョニー大倉によって香港にスパイが潜んでいると気付かれてしまう。石田の仲介役だった2人の協力者は、組織の飼う猛虎シーザー(『武闘拳 猛虎激殺』で倉田保昭と対決した虎と恐らく同一人物)の牙に露と消えた。
程なくして石田も捕らえられ、石田の兄である宮内は警視・川津祐介の要請で香港へ発った。そのころ、Gメンがマークしていた運び屋はジョニーによって殺害されるも、1億ドルの麻薬はGメンの手に渡った。一方、宮内は石田の行方を追って香港コネクションに接近を図るが、闘いのさなかに中崎を死なせてしまい、当局に逮捕されてしまう。当然、組織の人間を殺した宮内も命を狙われる羽目になり、刺客の石橋雅史を倒して獄中を脱したが、韓英傑の部下である楊斯と蕭錦(『Mr.Boo!』の巨人)の拳に叩きのめされた。
 川津は「宮内が殺人容疑で指名手配されている。これは香港コネクションの罠に違いない!」と、事の解決をGメンに依頼。伊吹剛・千葉裕・夏木マリの3人が、宮内と石田を追って香港にはせ参じた。恒例の香港警察門前払いを済ませ(ちなみに『マカオの殺し屋』と本作では香港警察が悪いような描かれ方をしているが、彼らの言い分にも一理ある)、宮内の行方を捜すGメンの3人。だが、当の石田は猛虎シーザーの恐怖に負け、組織の言いなりになって夏木を陥れてしまう。
復活した宮内は伊吹と千葉に出会うが、組織が「麻薬返せや!」と夏木を人質に要求してきた。そんな中、石田と恋仲だった女の口から彼の居場所が判明するが、石田の身柄を拘束していたジョニーが、実は宮内の弟であったことが明らかとなる(それにしてもムチャな三兄弟だ・苦笑)。ジョニーから「俺たちの仲間になれ」と囁かれ、心の揺れる宮内。辞表を書くところまで至ったが、川津の「君は刑事だ」の言葉に動かされ、一転してジョニーに反旗を翻した。
 なんとか夏木を助け出した一行だが、彼女の口から出た猛虎シーザーの名に宮内はひどく動揺した。実は、シーザーはかつてベトナムに住んでいた宮内ら三兄弟の飼っていた虎であり、現在は血に飢えた死刑執行人と化していたのだ。石田とその恋人もシーザーに殺され、宮内を加えたGメンは敵のアジト(毎度おなじみタイガーパーム・ガーデン)に突入する。そこで宮内を待っていたのは、宮内と決別したジョニーとシーザーであった。
ジョニーはシーザーに宮内を殺せと差し向けるが、ベトナム時代を思い出したシーザーはジョニーに襲いかかる。シーザーの牙がジョニーを裂き、ジョニーのナイフがシーザーの腹を突き刺した。息絶えるシーザーとジョニー…2人の亡骸を後に牢から脱出した宮内は、Gメンたちと共に香港のカラテ使いたちと死闘を展開する!

▲「田口逃げろ!こいつらは俺たちが倒せる相手じゃない!」
 ↑は伊吹剛が後編の冒頭に発した言葉だが、これが本作の全てを物語っている。確かに本作での宮内の奮闘ぶりは眼の覚めるものであり、三兄弟の行く末などはグッとくるものがあった。が、功夫アクションはどうもしっくりこないのだ。宮内も十二分に頑張ってはいるが、どちらかというと格闘シーンは千葉裕の方が上手かった気がするし、香港側のキャストも立ち回りでは遠慮している感がある。やはり倉田が抜けた穴は大きく、達人不在という状況がこの結果を招いてしまったのだろう。
そのためか、ラストバトルの結末は非常に冴えないものとなった。蕭錦は台車に押し潰されて死に、楊斯はドアに挟まれて死に、韓英傑に至ってはそのへんに突き出ていた鉄串に刺さって死んでしまう。ここまでの豪華キャストを動員していて、この結末はさすがに腰砕けだ(余談だが、前編の予告ではタイガーパーム・ガーデンで宮内と韓英傑が闘っている映像があったが、作中に使用されていない)。
 製作側もこれではインパクトが薄いと判断したのか、猛虎シーザーを呼んで作品の底上げを講じている。しかし今回はこれで乗り切る事が出来たものの、次からの「香港カラテシリーズ」で同じ事を繰り返すわけにはいかない。浮上する達人不在問題、迫られる方向転換。そしてシリーズは新たな局面へ向けて動き出すのだが、それはまた次回の講釈で…。

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『Gメン対世界最強の香港カラテ』前後編をお送りします。

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