功夫電影専科

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「酔拳」に挑んだ男たち(5)『醉八仙拳』

2014-03-20 23:40:04 | カンフー映画:珍作
醉八仙拳
英題:Kung Fu of Eight Drunkards/Drunken Art's Tricks
製作:1980年

●酔いどれ師匠の雷鳴から修行を受けていた孟飛(メン・フェイ)は、あるときコソドロの午馬(ウー・マ)とトラブった勢いで武術大会に乱入し、そこで大立ち回りを演じるはめになる。習い覚えた酔拳で闘う孟飛だが、彼の使用する形を見た馬場は顔色を変えた。
この馬場という男は悪党グループの一員で、雷鳴とは浅からぬ因縁があったのだ。敵は孟飛が雷鳴の行方を知っていると確信し、様々な方法で揺さぶりをかけていく。
 どうにか孟飛は馬場を倒すものの、叔父の古錚はトラブルメーカーの彼を叱ってばかり。そうこうしているうちに第2の刺客・陸一龍の計略によって、孟飛たちの住んでいた食堂が立ち退かされてしまう。激怒した彼は陸一龍に詰め寄るが、力の差は歴然としていた。
午馬に助けられた孟飛は、追ってきた第3の刺客・龍飛(ロン・フェイ)を雷鳴のバックアップで撃破する。師匠から事情を聞いた彼は修行の練り直しを敢行。メキメキと実力を付けていくが、敵は姑息にも古錚とその娘を誘拐するのだった。
 孟飛は陸一龍にリベンジを果たし、午馬とともに家族の捜索を続けた。2人の知り合いである蛇拳使いの司馬玉嬌は、自分の父親がこの一件を仕組んだのだと知り、すぐに止めさせるよう直談判をする。
実は彼女の父親こそが悪党グループの親玉・陳星(チン・セイ)であった。司馬玉嬌は2人と古錚たちを引き合わせようとするが、それを許さない陳星はなおも襲いかかってくる。果たして戦いの勝敗は…?

 『酔拳』は香港映画界に一大ムーブメントを引き起こし、暗いイメージの強かった功夫片の世界をコメディ一色に変えました。多くの業界人がこの流行に同調しており、既に名声を得ていたベテラン俳優たちもコメディ系の作品に主演しています。
『酔馬拳・クレージーホース』の戚冠軍、『通天小子紅槍客』の汪禹、『小子有種』の傅聲などなど…。あの劉家良も『マッドクンフー・猿拳』で便乗しているのですから、いかにコメディ功夫片が注目されていたかが解ります。
 本作では方世玉俳優として名を馳せ、武侠片スターに大成していた孟飛が主演を飾っています。今にして思うと、明るい笑顔と確かなアクション・センスを持ちあわせた孟飛は、コメディ功夫片と相性のいい俳優だったのかもしれません。
しかし本作は孟飛の魅力をあまり生かせておらず、コメディの度合いが低い作品に仕上がっています。後半に差し掛かるとアクションから完全に笑いが消え、悲劇的な展開の果てに笑いを誘うオチを持ってきたりと、内容に大きなブレが生じていました。
ロミオとジュリエット的なキャラの司馬玉嬌、身なりは汚いが友達思いの午馬(本作の監督も兼任…残念ながら今年の2月に逝去)など、人物描写は悪くなかっただけにストーリーの雑さが惜しまれます。
 アクションは一定の質こそ保っていますが、全体的に作りこみの甘さが目立ちました。中盤でしか披露されないジャッキー風の小道具アクション、単調で似たような形ばかりの酔拳はその最たる例です。
いい素材は揃っているのにパッとしない出来となった本作。孟飛が主演した『酔拳』タイプの作品が、後にも先にもこれ一本しかない(『飛竜カンフー』は助演なので除外)と考えると、なんだか勿体ない気分になってしまいますね。
そんなわけで、長々とお送りしてきた「『酔拳』に挑んだ男たち」も終盤戦に突入。次回はキャスティング面ではなく、取り扱ったテーマについての検証を行います。『酔拳』といえば黄飛鴻、黄飛鴻といえば……??

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