功夫電影専科

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『通天小子紅槍客』

2011-11-13 09:47:16 | ショウ・ブラザーズ
通天小子紅槍客
英題:The Kid with a Tattoo/Claw of the Eagle
製作:1980年

▼前回前々回と監督の名前でセレクトしてきたので、今日も著名な監督の作品を取り上げていきます。本作は武侠片を撮らせたら天下一品の職人監督・孫仲(スン・チュン)の監督作です。日本でも『冷血十三鷹』『カンフー風林火山』等の傑作がリリースされていますが、どちらの作品もシリアスなタッチで描かれていました。
しかし、本作では当時のコメディ功夫片ブームのあおりを受け、明るいタッチで仕上がっています。主演は元祖コメディ功夫スターの汪禹(ワン・ユー)で、このほかにも王龍威元華(ユン・ワー)といった孫仲作品おなじみの俳優が顔を連ねています。果たして、孫仲はどのようなコメディを描いているのでしょうか?

■汪禹は紡績工場の社長である谷峰の一人息子。彼は謎の乞食・元彬に師事し、勉強そっちのけで功夫修行に明け暮れる日々を送っていた。一方、こちらは刺客集団の長・元華。彼は運送会社を隠れ蓑にしている麻薬組織の王龍威と兄弟分なのだが、秘密捜査官が近くを嗅ぎまわっているとの情報を聞き、目を光らせていた。
一見すると無関係に見える両者だったが、その秘密捜査官というのが元彬であった。元華は手下を率いて彼を襲い、自慢の槍で刺殺。今わの際に元彬は「麻薬組織を率いているのは誰だ?」と聞き、元華は首領の名を告げた。その様子を隠れて見ていた汪禹は、名前の似ている谷峰が関与していると勘違いしてしまう(笑
 邪魔者を始末した元華は、殺害現場を目撃していた汪禹を次のターゲットに定めた。そんな中、元彬の盟友だった捜査官・狄威(ディック・ウェイ)が町に現れ、元彬殺しの下手人を探そうとしていた。この捜査の過程で王龍威側の人間が死んだため、王龍威と元華の関係に亀裂が生じていくのだが…。
そのころ、汪禹もまた王龍威に近付こうとしていたが、元華の登場によって窮地に陥ってしまう。敵は彼の自宅にまで攻め込み、遂には汪禹VS元華の対決に発展。狄威が介入したことで事なきを得たが、度重なる失敗に業を煮やした王龍威の手により、元華は粛清されるのだった。…後日、敵陣に侵入した汪禹は、そこで意外な事実を知る!

▲本作はコメディ描写が多く、功夫アクションも豊富にあるのですが、どちらもいまいち決め手に欠けていました。コメディシーンはやたら尺が長く、それでいてインパクトは薄め。ギャグを入れるタイミングもおかしく、元彬が殺されるという悲劇的なシークエンスでさえ軽く処理されています。
作中、汪禹は目の前で元彬が殺される場面に遭遇するのですが、汪禹のリアクションはとても控え目。元彬が死んでもあまり悲しまず、それどころか何事もなかったかのように淡々とギャグパートが進行していくので、さすがに見ていて違和感がありすぎました(爆
 アクションでは躍動感のあるカメラワークが印象的だったのですが(撮影は『孔雀王』の藍乃才)、殺陣自体はこれといって特色が無く、いささかボリューム不足な気がします。武術指導を担当したのは、武侠片で幾多の名勝負を演出したベテラン指導家・唐佳ですが、やはり彼は武侠片でこそ真価を発揮する人なのだと再認識しました。
失敗作であることは確かですが、『酔拳』の黄正利を意識した姿の元華、珍しく大きな役を貰っている狄威など、悪役スターたちの初々しい姿は一見の価値があるかもしれません。なお、後に孫仲は本作のキャストとスタッフを動員し、よりコメデイ描写を徹底させた『小子有種』で本作の雪辱を見事に晴らしています。

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