功夫電影専科

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「酔拳」に挑んだ男たち(6)『豬肉榮』

2014-03-25 22:20:12 | カンフー映画:佳作
豬肉榮
英題:Butcher Wing/Death Stroke
製作:1979年

▼(※画像は本作を収録したDVDセットの物です)
 皆さんもご存知のように、『酔拳』は実在した英雄である黄飛鴻を主人公としています。昔から黄飛鴻は映画の世界で親しまれてきましたが、『酔拳』では従来の老成した人格者というイメージを廃し、ヤンチャでお調子者の現代っ子として描写しました。
この思い切った試みは香港の観客たちを爆笑の渦に叩き込み、映画を大ヒットに導く一因となったのです。当然、2匹目のドジョウを狙った作品も数多く製作され、少林英雄を扱ったコメディ功夫片が続々と誕生していくことになります。
 代表的なところでは、広東十虎の1人である鐵橋三を扱った『廣東鐵橋三』、同じく広東十虎の1人・王隠林に梁小龍が扮した『鶴拳』、あの蘇乞兒の青年期をモチーフにした『少年蘇乞兒』なんてのもありましたね(笑
この手の作品で最も有名なのは、黄飛鴻の高弟・林世榮が主役の『燃えよデブゴン7』でしょう。洪家班と袁家班が手を組んだ奇跡的な作品であり、黄飛鴻俳優の祖である關徳興の出演も見逃せません。
本作は同じ林世榮をテーマにした作品で、主演は七小福のメンバーだった呉明才(ウ・ミンサイ)が担当。『燃えよデブゴン7』から李海生(リー・ホイサン)も参加しているため、どちらかというと『酔拳』よりデブゴン映画の匂いを感じさせる一本です。

■肉屋を経営する呉明才は、友人の韓國材(ハン・クォツァイ)とともに悪どい武勝館の連中をこらしめた。一味のボスである李海生は、手下の宋金來を向かわせて2人に報復を実行する。
案の定ボコボコにされる呉明才と韓國材だが、その窮地を救ったのは医師の白彪(バイ・ピョウ)だった。2人は彼に弟子入りを志願するも、「功夫は復讐の道具ではない」と諭されてあしらわれた。
 その後、再び現れた宋金來を退けたまでは良かったが、続いて現れた唐炎燦(トン・ウェンチャイ)の前に呉明才たちは完敗。住んでいた豚小屋を放火された2人は、願いを聞き入れてくれた白彪のもとで修行を開始する。
そんなある日、呉明才は森の中で大量のアヘンを発見した。このアヘンは李海生たちが密売している品物で、さっそく2人は警察に通報した。が、回収したはずのアヘンは手違いで見つからず、商品を奪われた武勝館は攻勢に転じていく。
その最中に呉明才と一緒に住んでいた少年が殺され、李海生の罠によって白彪も重傷を負った。仇討ちを誓った呉明才と韓國材は、大草原で最後の戦いを挑む!

▲『燃えよデブゴン7』はアクションこそ芸術の域に達していたものの、復讐が復讐を呼ぶ陰惨なストーリーで著しく評価を落としていました。本作にもその気があり、全体的に笑える作りになっているのですが、話が進むにつれて血生臭さが増していきます。
最後の戦いは明るいものになってはいますが、よくよく考えると宋金來や他の手下たちはまだ健在だし、アヘンがどうなったのかも不明のまま。私としては最後まで楽しい作風を徹底して欲しかったので、この結末は残念に思えました。
 その反面、功夫アクションは腕に覚えのある俳優が揃っているため、動作自体は充実したものとなっています。実を言うと、私は呉明才の主演した作品を見るのは今回が初めてなのですが、ルックスはともかくキビキビした動きは目を見張るものがあり、さすがは七小福!と思うに足るものがありました。
また、本作の呉明才と韓國材は大した実力を持っていないため、苦戦に陥ると機転を利かせて状況を打破していくという点もユニークでした。この演出は最後のVS李海生でも生かされ、笑いとスリルが混じったファイトに仕上がっています。欲を言えば、今回とても面白いキャラだった鄭富雄にも活躍して欲しかったなぁ…。
さてさて、6回にわたって『酔拳』の便乗作を追ってきた本シリーズも、次回でようやくファイナルを迎えます。当初のキャスティングに関する考察から離れ、なんだか迷走気味になっているような気もしますが(苦笑)、そんな特集の最後を飾るのは…ずばり、韓国の『酔拳』フォロワーです!

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