功夫電影専科

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『一山五虎』

2014-12-22 22:43:28 | カンフー映画:佳作
一山五虎
英題:Bravest Fist
製作:1974年

●囚人の染野行雄は、手錠で繋がれた仲間と共謀して脱獄を決行するも、意見の相違から対立。殴り合いの末に相手を殺害し、何処ともなく行方をくらました…。
それから数年後、こちらは船着場の労働者である陳惠敏(チャーリー・チャン)。正義感と腕っぷしの強い彼は、今日も難癖をつけてきた悪党どもを蹴散らしていたが、妹から「母の体調が思わしくない」と知らされる。
 さっそく実家に帰ることになった陳惠敏は、途中で悪党どもの賭場で袋叩きにされていた石天(ディーン・セキ)と出会い、これを助けた。悪党のボスに収まっていた染野は、悪質な手段で報復を開始していく。
まず最初に船着場の監督を従わせようと拷問にかけ、彼が死亡すると船着場の買収に乗り出した。それを知った陳惠敏は「証拠はないが絶対お前らの仕業だろ!」と殴り込み、タイマン勝負を挑んだ染野はボロ負けしてしまう。
 そこで彼は功夫の達人コンビを雇うが、今度は妻が手下の陳耀林と不倫していることが判明。激怒した染野は陳耀林を撲殺し、まったく本筋と関係のない戦いを制した(苦笑
そのころ、襲撃を受けた陳惠敏は監督の娘とその彼氏(曾江)を連れ、実家に身を寄せていた。つかの間の平和を噛みしめる一行だが、陳惠敏が石天に呼び出されている間に敵が侵入し、彼の妹と監督の娘を誘拐されてしまった。
 陳惠敏の母も重傷を負い、怒りを爆発させた陳惠敏は敵のアジトに突撃! 染野たちを追って別荘に向かうが、そこには何故か石天の姿が…?
「あんたのせいで俺の妹たちが!」と詰め寄る陳惠敏だが、敵に見つかったため一緒に戦うこととなる。果たして彼らは悪を倒し、正義を示すことが出来るのだろうか?

 『怒れ!タイガー/必殺空手拳』『空手ヘラクレス』の陳惠敏が、コメディ俳優の石天と共演した作品です。石天といえば『酔拳』『蛇拳』などで観客を大いに笑わせた名優であり、後年は映画プロデューサーとしても腕をふるいました。
そんな彼が陳惠敏とどう絡むのか気になるところですが、残念ながら思ったほどはっちゃけた活躍は見せてくれません(ギャグも一切なし)。当時はシリアス系の功夫片が主流だったので、こればかりは仕方ないと思うしかないでしょう。
とはいえ、本作の石天は弱々しい賭場の客と思わせて…という比較的重要な役で、ラストバトルでは大立ち回りを披露。最後にはちょっとしたサプライズもあり、当時としては扱いが大きかったと言えます。

 しかし個人的には、染野さん扮する不運すぎるボスが印象に残りました。まずオープニングでバトルを繰り広げるも、内容的にはゲスト出演と思しき方野VS江島が充実しており、インパクトで食われてしまいます。
その後も通りすがりの陳惠敏に賭場を潰されるわ、普通なら勝って一泡吹かせそうなタイマンバトルで惨敗するわ、戦力強化を図った矢先に妻の不倫が発覚するわ、突然現れた妻の兄に苦戦するわと受難が続くのです。
 彼の不幸はこれだけで終わらず、ラストバトルで陳惠敏にリベンジできるかと思いきや、なんの遺恨や因縁もない石天の相手をするはめに。それでもなんとか相手を倒そうとするも、警官隊に踏み込まれてあっさりと逮捕されていました。
功夫片のボスなら、普通は主人公にトドメを刺されるのが当たり前なのに、それさえもお預けにされるなんて…。最後に連行される染野さんの姿に、どことなく哀愁めいたものを感じたのは自分だけではないと思います(涙

 ちなみにアクションは陳惠敏と張午郎(ジョン・チャン)が指導しており、先述のオープニング戦と最終決戦では小手先の技術などにこだわらない、勢い重視のファイトが堪能できます。
また、典型的ながら李小龍作品の物真似をしないストーリーや、主人公サイドの犠牲が最小限で済んでいる(=作品が陰惨になりすぎていない)ことも見逃せません。取るに足らない作品ではありますが、私はけっこう好きですね。

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