猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

新型コロナで「確率で語れ」は時期尚早、それより実態調査が必要

2020-07-11 22:28:46 | 新型コロナウイルス


7月11日現在、東京都との新型コロナの感染者は3日続けて200人超えである。小池百合子は、まだ、制御下だと言い続けているが、明らかに増加の傾向にあり、もはや、保健所職員によるクラスター(集団感染)対策だけで十分ではないだろう。

私のいる横浜市でいうと、平日の昼間、緑道を歩いている現役世代を見なくなった。テレワークをやめて、みんな職場に復帰したと思われる。平日の朝や夕方の市営地下鉄は高校生で混んでいる。横浜市の安売りのスーパーは人でごった返しである。社会的距離など無視されている。きのう、定期検査で、大学病院に行ったが、入り口で検温しているにもかかわらず、血液検査所や診察待合所で咳をしている人が複数いた。

私は、会社を退職して、NPOで働いているので、都心に行くこともない。きっと、通勤電車はすごく混んでいるのであろう。

政府の人命優先から経済優先へのかじ取りで、何かのタガがはずれ、新型コロナ流行以前に戻っている。水際対策(空港や港などの検疫)に失敗した日本の新型コロナ対策は、市民の行動変容に大きく依存していたはずなのに。

きょうの朝日新聞に、ウイルス学者の西村秀和へのインタビュー『新型コロナ 専門家は確率を語れ』がのっていた。この記事は誤解されると、人命優先から経済優先への流れを押すものと なりかねないので、私が気づいた点を書きつづりたい。

まず、「確率を語れ」といっても、実態を調査しないと「確率」なんて語れない。そして、めったに起こらないことの「確率」を語るというのは難しいことである。たとえば、福島第1原発の事故は、アメリカの原発メーカが言っていた確率では起こり得ないことだった。

いっぽう、過度の自粛は、西村のいうように、みんなの負担が大きく、これから、1年か数年か、しばらく、新型コロナとともに生活していくには、負担が軽くて効果のある「行動変容」を広めていくしかないだろう。また、個人の自粛ではできないことを、政府や自治体が責任をもっておこなわないといけない。

インタビューで、西村は、感染者の遺体を、遺族に合わせなくて、焼却することを、不要だと言う。理由は

〈息をしないご遺体からウイルスは排出されません。皮膚に残っていたとしてもお清めをするか体に触れなければよい〉

からと言う。そうだろうと思う。しかし、この西村の話しに、どこにも、確率は出てこない。ウイルスの種類によって、それぞれ特性があるが、コロナウイルスはアルコールや消毒薬に弱いという仮定から論理的に不要と西村は推定しているのだ。いまのところ、この仮定を否定するような事実はでてきていないから、正しそうだが。

西村は、また、なんでもかんでもアルコール消毒をする必要がないという。その理由として、つぎのように言う。

〈感染者のせきでウイルス1万個が飛んだと仮定しても、多くは空気の流れに乗って散らばり、机などに落下する1センチ四方あたり数個。では、それが手につく数は?鼻に入る確率は?時間経過でもウイルスは減る。〉

感染者と机との位置関係によって、また机の場所によって、落下する個数は異なるだろう。感染者が机の前に座っているなら、場所によって、1センチ四方あたり1000個を超えてもおかしくない。だから、条件によっては、さわって感染してもおかしくない。

なんでもかんでもアルコール消毒する必要がないが、出入りが激しくて誰がいたかわからないときは、消毒するにこしたことはない。

西村は、また、つぎのように言う。

〈ウイルスは、呼吸で体内に達する方が物を介するより、はるかに少ない数で感染する特性をもちます〉

呼吸系感染症のウイルスなら当然そうだろう。しかし、ここでも、ウイルスの種と状況によって「はるかに少ない」の程度が変わるから、条件抜きでそれを確率で語ることはできない。

最近、空気感染をいう医療関係者がアメリカで出てきたが、そうかそうでないかは、感染予防という立場から重要な問題で、確かな知見があるなら、西村に空気感染を否定してほしかった。

また、西村は、病院と一般社会を分けて考えるべきだとし、つぎのように言う。

〈厚生労働省が6月実施した抗体検査で、東京の保有率は0.10%でした。そこから推測すれば、街中そこかしこでウイルスに遭うことはありません〉

これは、「厚労省は6月16日、東京、大阪、宮城の住民約8千人に抗体検査を実施した結果を発表した。アボットとロシュという二つのメーカーの検査試薬で検査し、いずれのメーカーの試薬でも陽性と判断された人は東京は0.10%、大阪は0.17%、宮城は0.03%だった」という抗体検査のことである。

じつは、7月2日の朝日新聞デジタルで、免疫学者の宮坂昌之が、回復者の3分の1が抗体を失っているという。抗体検査の精力的に行っている東大先端研の児玉龍彦も同じことを言っている。抗体にはIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類があり、感染最初に出現するIgA、感染中に発現するIgM、回復期のIgGの検査薬が発売されている。いずれも、時間の経過とともに、他のウイルスよりも早く、抗体の量が、減るのである。

また、「いずれのメーカーの試薬でも陽性と判断された人」というところも気になる。偽陽性は減るが、偽陰性は増加する。政治的な発表である。

それに、0.17%の大阪より、0.10%の東京の方が、現在、感染者が急拡大している。そして、新宿や池袋のホストでない人の感染が急拡大している。

すなわち、6月の厚生省の抗体検査の結果は、どの程度意味あるかは、まだわからない状態である。「確率で語る」時期ではない。

首都圏では「市中で感染者に遭う」と思っていた方がよい。その場合でも感染しないためには どうしたら良いかを知っていることが だいじである。

専門家が「確率で語る」ことよりも、PCR検査、抗体検査の数をふやすことがまず前提である。「確率で語る」のではなく、「データで語る」が先である。「確率」の話しは、政治的な心理操作におちいりやすい。

そして、新型コロナ対策班が、個々の感染者から感染過程(体験談)をしっかり聞き取り、研究者とともに、新型コロナ感染のメカニズムの仮説を洗練していくことがだいじである。感染者自身がもっとも感染理由に心当たりがあるはずだと思う。

政府が新型コロナウイルス対策専門家会議を廃止したのは、誤りである。政府が最初から結論をもっていると みんなが わかれば、感染対策班の誰も真剣に働かなくなる。

[追記]
7月12日も、東京の新規感染者数が200人を超えた。4日連続の200人超えである。
7月16日は、東京の新規感染者数が286人、7月17日は293人と、これまで、記録を続けて破った。