猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

サル人間でシラミのように群れ油断のならない日本人―アメリカ政府のもつ偏見

2022-10-15 22:10:52 | 日本の外交

きょうの朝日新聞に読書面に、ニクソン元アメリカ大統領が、「日本人は、アジアのいたるところのでシラミのように群れをなしている」という発言が紹介されていた。ニクソンはそれに加えて、「日本人は感情に流されやすく状況次第でころころと立ち位置を変える一筋縄ではいかない国民」と言い、核兵器を持たせたり、自主独立の路線を取らせたりしないよう、常にチェックがいると考えていたという。

こう評した保坂正康は、この発言の背景を書いていないが、元首相の田中角栄が北京に乗りこみ中国と外交関係を結んだときのことでないか、と私は思う。このとき、日本政府は、はじめて独自外交をおこなった。そうでなければ、「アジアのいたるところで」と「アジア」というキーワードが出てこない。それまでは、佐藤栄作が韓国と平和条約を結んだのも、アメリカ政府の要請であった。

田中角栄の日中友好以降、日本政府の独自外交は二度と見られていない。

「日本人は」に限らず、「××人は」という言い方は明らかに偏見である。人種で人をみている。

ニクソン元大統領は「日本人」を「シラミ」にたとえたとあるが、ジョン・ダワーは『敗北を抱きしめて』の中で、日米戦争時に、アメリカのメディアが日本人を「サル」や「黄疸にかかったヒヒ」にたとえたと書く。もっとも、戦時中は日本も「鬼畜米英」と言っていたが、これは憎しみの表現で、アメリカのメディアは日本人を劣等人種と見なしていたのである。

戦後しばらく、アメリカの占領軍は日本の「民主化・非軍事化」をはかったが、ジョン・ダワーによれば、これは、幸運にも、日本の無条件降伏の前に、アメリカの国務省内で、日本通の専門家たちがアジア派に負けた結果であるという。日本通の専門家は、日本人は遅れた人種で「民主化」は無理だと考えていた。彼らが負けなければ、日本の戦後は「非軍事化」だけで終わったかもしれない。

アメリカ政府は、「民主化」を掲げたことによる、思いもよらない日本人の草根の民主化運動の高まりと、東西冷戦の始まりとをうけ、「民主化」を抑え込む方針に転換する。ニクソンのように「サル人間」の日本人は油断のできない国民とアメリカ政府は考えるようになった。

いっぽう、アメリカ政府の思惑に反し、日本の草の根「民主化」運動は私の二十代までつづいた。私の大学時代には日本社会にまだ解放感があった。1980年代が日本の「民主化」の曲がり角だったと思う。開放感を知らない今の若者は可哀そうである。


菅義偉はイギリスでのG7でどう振るまえばよいか

2021-06-13 22:40:20 | 日本の外交

きょう、日曜日の朝から、イギリスでのG7でテレビが持ちきりである。菅義偉がG7に参加しているが、予測されたように、ひとりだけ孤立して、可哀そうだという報道である。

G7とは“Group of Seven”の略である。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本の7ヵ国と欧州連合の首脳らで毎年開催される国際会議のことである。

国連があるのに、一部の国の首脳らが集まって会議を行うのは、何らかの意図をもって集まる、分派活動である。今回のG7のねらいは、中国の封じ込みへの自由主義陣営諸国の団結の誇示であろう。

したがって、G7に出席した菅のこの態度を、欧米諸国への日本人の劣等感と受け取るのか、それとも、中国問題への日本人の態度不鮮明と受け取るのか、人によって異なってくる。

標準的日本人には、語学コンプレックスがある。しかし、変な発音の英語で、限られた語彙の英語でも、会話することができる。だいじな問題で、自分の答えをもっていれば、堂々としていることができる。言葉少なくして、本質を話せば、「極東の賢人」だと思われる。英語が話せなくても、G7での居心地はそんなに悪くない。

私は、英語に限らず、日本語でも、発音がはっきりしない。しかし、そんなことで、しょぼくれたいとは、思わない。

最近知ったのであるが、福沢諭吉の英語の会話能力は、日本語混じりで、とてもレベルの低いものだったようだ。彼を知る当時の外国人は、ユニークな英語を話すとして、だからと言って、バカにしなかったようだ。

今回、菅義偉は、もち札が、東京オリンピック開催の約束を守るということだけのようであった。中国への足並みを揃えようという他のG7諸国の首脳らと、関心が合うはずがない。

中国の台湾問題、ウイグル人問題をどう対処していくのか、基本的姿勢と戦略が定まっていないところに、菅の居心地の悪さがあったのではないか、と思う。宿題をやってなくて授業に参加する小学生の居心地の悪さである。

考えてみれば、G7諸国の対中国姿勢の足並みがそろっていないから、G7が開かれるのである。だから、足並みがそろわない理由を明らかにし、どのような選択肢があるか、示すだけで、菅は「極東の賢人」と思われただろう。中国が抱える問題点を整理し、中国との交渉役を日本が果たすというなら、歓迎される「極東の賢人」と評されるだろう。G7の他の諸国の首脳らも、戦争に持ち込みたくないはずである。

佐藤俊樹は、きのうの朝日新聞のインタビューで、日本は「大国」ではないと答えていた。日本は昔から「大国」でなく、また、今も「大国」でない。10年前、ドイツ大使がBSフジの『プライムニュース』にでて、ドイツは「大国」でないし、「大国」になりたいと思っていないと答えた。私は賢いと思った。「大国」であろうとすると、他国を従えようと思いだし、他国と協力し合えない国になってしまう。せいぜいが中程度の国であればよく、世界征服の野心をもつことは要らない。

日本はふつうの国として、誠実でつつましくあって、問われば、思慮ある答えをすれば良いと思う。

[関連ブログ]


ジョー・バイデンに菅義偉が押されっぱなしの日米共同声明

2021-04-18 23:34:55 | 日本の外交


けさ、日米首脳共同声明を読んで、あまりにも広範囲な事柄に言及しているのに驚いた。菅義偉は何に言及しているかわからずに、ジョー・バイデンに押しまくれたのではないか。事前に菅の意図していたことは、「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認」、「辺野古における普天間飛行場代替施設の建設」、「安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅総理の努力を支持」だけではないか、と感じた。

各新聞社は、日米首脳共同声明全文(日本語)を載せているが、これは日本政府外務省の仮訳をそのままのせたものである。英文が正式な声明である。

仮訳の「量子科学」とは“quantum information sciences”の訳である。日本社会では「量子計算」とか「量子情報科学」のいわれているものである。新しい高速コンピューターを可能にする技術と一般に期待されているが、個人的には私は信用していない。
また、仮訳の「地域的なサージ・キャパシティ」は“regional surge capacity”の訳である。これは「地域緊急医療体制(態勢)」のことである。
仮訳の「安全」は“security”の訳で、バイデンは「米国の軍事的防衛」だけでなく「米国産業の防衛」という意味を含めている。
「グローバル・デジタル連結性パートナーシップ」は“Global Digital Connectivity Partnership”の訳だが、何のことか私は知らない。

外務省の役人は、バイデンが何に言及しているのか、わかって、菅をサポートできたのだろうか。なにか、こころもとない。

ダニエル・L・エヴェレットは、『言語の起源 人類の最も偉大な発明』(白揚社)の第9章に、文化的背景が異なる集団が取引するときの誤解とそれにもとづく不信について書いている。具体的には、アメリカ先住民とアメリカ連邦政府との条約が生んだ悲劇である。

昨年の11月、「甘いもの好きでバイデンと菅がウマがあう」という番組構成にパックンが怒っていた。これは、トップの個人的友好関係で国と国との関係が動くと、アメリカの国民が考えていないということだ。

バイデンはたくさんのことをアメリカ国民に約束している。そして、日本と違い、当選したら、その約束を実行しようと努力する。少なくとも、彼の側近は実行しようと努力する。それは、トランプでも同じだった。

バイデンは「老いぼれ政治屋さん、やるじぁないの(Old Pol, New Tricks)」とコラムニストに言われるほど、老体に鞭打って、攻撃的になっている。

当然、バイデンは約束したことを共同声明に盛り込もうとする。それは、外務省の役人が予測できることであった。菅は、16日の共同声明で、あのように多くのことにコミットすべきではなかった。あとで、「共同声明」での多くのコミットメントが、日本の外交の足を引っ張るだろう。

バイデンは、中国を敵視している。これは、「自由と民主主義」の理念からだけでなく、アメリカ国民の経済的利益を守ろうとしている。これは、声明のつぎの言及からも裏付けられる。

《知的財産権の侵害、強制技術移転、過剰生産能力問題、貿易歪曲的な産業補助金の利用を含む、非市場的及びその他の不公正な貿易慣行に対処するため引き続き協力していく。》

《開かれた民主的な原則にのっとり、透明な貿易ルール及び規則並びに高い労働・環境基準によって支えられ、低炭素の未来と整合的な経済成長を生み出すだろう。》

この「高い労働・環境基準」は“high labor and environmental standards”の訳である。
バイデンは、民主党の昔ながらの基盤、産業労働者の支持を共和党から奪い返そうとして、これらを声明に含めた。そして、これらは、将来、日本の経済政策を砲撃する弾となる。1980年代の日米経済摩擦を思い起こせばわかることだ。

また、「在日米軍駐留経費負担に関する有意義な多年度の合意」「世界貿易機関(WTO)改革」「世界保健機関(WHO)を改革」「新型コロナウイルスの起源(の検証)」まで、菅はコミットしている。

菅首相は、アメリカの大統領となにを取引すべきか、わかっていないようである。

[関連ブログ]

バイデンの発言「尖閣諸島は日米安保5条の適用範囲」に憂いる

2020-11-17 21:41:45 | 日本の外交

けさ、TBSの『羽鳥慎一モーニングショー』で、5日前の菅義偉とジョー・バイデン氏の電話会談で、バイデンが「尖閣諸島は日米安保5条の適用範囲である」と言ったことが話題になっていた。番組全体としては、バイデンが日本びいきだから、そう言ったのだろうという雰囲気だったが、玉川徹だけが違っていた。尖閣列島に中国が上陸し米軍が動けば、米軍基地のある日本は、米中戦争に日本が巻き込まれると玉川は言った。

加藤陽子の『戦争まで』(朝日出版社)は、リットン報告書、三国軍事同盟交渉、日米交渉を史料からたどり、どのように、1941年12月8日、日米戦争に至ったかを明らかにしている。

当時、日本側は、とくに陸軍は、日中戦争ですでに疲弊しており、積極的に米国と戦争したくなかった。海軍も、予算をもらっている以上、戦争をしないとは正面をきって言えなかったが、アメリカとの国力の差から勝てるとは思わず、戦争を避けたかった。

米国も、ドイツと闘うイギリスを物資で支援しつづけるために、太平洋側で戦争を起こしたくなかった。

三国軍事同盟を急いだドイツは、イギリスを支援するアメリカの背後でアメリカを日本が脅かすことを期待していた。しかし、本当にことを起こすとは考えていなかった。

積極的に戦争する必要がないはずの状況で、日本側から開戦を宣告し、その直後にハワイの米軍基地、真珠湾を攻撃した。日本側からみれば油断していた米軍を襲ったわけである。日本のサムライ間の戦争は昔から奇襲攻撃が伝統である。

私は、昔、武士の末裔から、寝ている人の枕を蹴ってから殺せば、闇討ちでないと聞いている。サムライはクソなのだ。

加藤陽子の本は、「政府や軍部が誘導した世論」に押され、「勝てると思ってない戦争」に政府と軍部は踏み込んだ、と主張しているように私には思える。

トランプ大統領は、これまで、中国の悪口をアメリカの国民に言いまくってきた。アメリカの労働者が職を失うのは、中国人が安い賃金で働くからだ。中国の先端科学技術は米国から盗んだものだ。新型コロナ感染の大流行でさえ、情報を正しく伝えなかった中国のせいだ。

今回の大統領選で、トランプは負けたといえども、前回より得票数を伸ばしているのだ。したがって、現在、中国憎しというアメリカ人が大量にいると考えるべきだろう。

そこで、ジョー・バイデンが中国をどう考えているかであるが、今回の菅との電話会談で明らかになったのは、中国を敵視していることだ。

米国を統治する人々は、お金儲けはよいことだ、と考える。だから、反共産主義、反社会主義である。加藤陽子の本が述べるように、戦前は、米国と日本とは、ソ連と中国共産とが共同の敵だった。それがゆえに、日米交渉や日独交渉が成立した。戦後も、岸信介、安倍晋三が米国議会でスピーチして拍手を受けるのは、反共を訴えるときである。

米軍は中国の南進を警戒している。それが故に、沖縄の米軍基地が重要であり、尖閣列島が日本領であることが重要なのである。

トランプは中国に経済戦争をしかけた。40年前の日米経済戦争との違いは、アメリカの同盟国にもその経済戦争の参加を呼び掛けていることだ。この経済戦争は、軍事的戦争の一歩手前である。

したがって、バイデンが「尖閣諸島は日米安保5条の適用範囲である」と言ったことを、日本びいきな発言と喜んではいけない。米中戦争を起こしてもいけないし、米中戦争に巻き込まれてもいけない。メディアが、政府の中国脅威説に加担してもいけない。

戦争は国民が起こすのではなく、政府が誘導した世論に押されて政府が戦争を起こすのである。

中東への自衛隊派遣はトランプ大統領へのへつらいだ

2020-01-10 23:42:01 | 日本の外交
 
きょう、1月10日、河野太郎防衛大臣が命令した中東の自衛隊派遣は、安倍晋三の政治的な思惑からのもので、それ以外の何か意味があるわけではない。
 
あす11日にP3C哨戒機2機を約3か月の任務に派遣し、来月上旬には護衛艦を派遣する計画である。
 
今回の派遣の名目は、中東海域で航行する日本関係船舶の安全確保のための調査・研究だが、P3C哨戒機や護衛艦を派遣しても何の役にたたない。調査・研究は戦闘服を着ない諜報部隊の仕事である。
 
見当違いの「調査・研究」としたのは、国会議決をへずに、ペルシア湾・ホルムズ海峡に自衛隊を派遣するためである。防衛省設置法第4条18項「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」にもとづき行ったという。
 
それなら、「所掌事務の遂行」とは何か、「必要な調査及び研究」とは何かを、具体的に明らかにしないといけない。
 
「調査及び研究」に何の役にたたないP3C哨戒機や護衛艦を中東に派遣するとは、派遣すること自体が目的で、武力を自衛にかぎってきた日本の枠組みをなし崩しにするものといえる。
 
自衛隊派遣のきっかけは、トランプ米大統領が、ペルシア湾・ホルムズ海峡のタンカー航行を守る有志連合を結成し、各国に参加を求めたことだ、という。日本の有志連合への参加は、これまでのイランとの友好関係を壊すので、有志連合に参加せず、日本独自に航行を守る、とトランプに昨年伝え、評価を受けた。
 
しかし、「所掌事務の遂行」が、ペルシア湾・ホルムズ海峡のタンカー航行を自衛隊が武力で守ることなら、日本の自衛権の拡大解釈ではないか、日本の憲法に違反するのではないか。国会で議論され、国民的合意ができているのか。
 
しかも、イランとアメリカのあいだに戦闘がおきれば、有志連合に参加していなくても、派遣された自衛隊が戦闘に巻き込まれざるをえない。
 
それに、もともと、日本がイランの石油を買い、日本のタンカーをイランに守ってもらえれば、ペルシア湾・ホルムズ海峡のタンカー航行に何の心配もいらない。
 
意味もなく、隊員が犬死するかもしれない、自衛隊の中東派遣には反対である。
 
〔追記〕
哨戒機P-3Cとは、アメリカのロッキード社が開発した軍用機で、潜水艦や小型船舶を監視攻撃する。潜水艦探知用のソノブイ・システム、センサー、レーダー、データ処理用のコンピュータ、キッチン、トイレつきの11人のりのプロペラ機である。航続距離は6,751kmと地球半径より長い。しかし、何日も監視となると、近くに軍事基地が必要になる。
今回は3か月の任務なので、中東の米軍基地から毎回監視に飛び立つことになる。日本は有志連合に参加しなかったが、米軍との共同軍事行為を3ヵ月続けることになる。