猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

田辺俊介が編集した『日本人は右傾化したか』が気になる

2020-01-31 23:24:05 | 思想


「日本人は右傾化したか」はとても気になるテーマである。私自身は、人間はそう変わるものではなく、単にどんな子供時代をおくったか、による世代間の違いが大きいと思っている。

私が間違っているのか、知る意味でも、田辺俊介が編集した『日本人は右傾化したのか データ分析で実像を読み解く』(勁草書房)は興味をそそられる。

しかし、私自身が理系の人間であるので、統計的データ分析手法自体が妥当なのものか、も気になるので、「日本人は右傾化したか」自体を論じるのは控えたい。

もっと、表面的なことについて書く。

まず、日本人の社会意識をデータ分析して、田辺が率いるグループは何をしたいのかが、本書からまだ見えてこない。まさか、日本人の社会意識に操作を加えたいのではないだろうし、操作できることを誰かに売り込みたいのではないだろう。これが私を不安にする。

本書は、10のトピックスに別れ、各章がひとりの担当者によって書かれている。言葉を慎重に選び、意味がはっきりするように、とても巧みに書けている。そういう意味では、各担当者が、優秀な社会科学者であることは、間違いないであろう。しかしグループのなかで、書くに先立ち、どれだけ、互いに罵倒しあっていたかのところが不明である。舞台裏が見えない。これも私を不安にする。

私は、社会科学なんてものは、そもそも無理だと思っている。社会科学では、自分が利害をもつことがらを客観的にデータ分析することは至難のはずである。互いに罵倒しあうぐらいの気持ちで、激論しないと科学として成立することは不可能だと思っている。

私自身、IT会社の研究所にいて、コンサルティング・ビジネスに興味をもっており、また、意思決定に働く因子分析をおこなってきた。コンサルタントが行うこのような分析は、意思決定が行為としてはっきりとわかるものを対象とする。購買行動とか投票行動とかを、コンサルタントは対象とする。「右翼である」というあいまいな意志は、客観的に同定可能なはずがない。

本書では、「右翼的」というものをつぎのように分割し、より具体的なカテゴリーに細分化している。

右派・保守主義
 (1)ナショナリズム
   (1.1)愛国主義
   (1.2)純化主義
   (1.3)排外主義
     (1.3.1)中国人・韓国人排外
     (1.3.2)それ以外
 (2)反自由主義
   (2.1)権威主義
   (2.2)セキュリティ意識
 (3)新自由主義
   (3.1)反平等主義
   (3.2)反福祉主義

このように、カテゴリーを細分することには同意できる。しかし、もしかしたら、別の細分化もあるかもしれない。このようなときには、最初に小規模な調査を行い、妥当なカテゴリー細分かどうかを検討する必要がある。田辺のグループはこれをする代わりに、文献調査で先に社会意識のモデル化を行ったように思える。

これまでの社会科学者全体が思い込み違いをしていれば、文献調査は、小規模調査での予備データ解析の代わりをしない。また、文献調査でグループ内でどんな議論があったかは本書では明らかになっていない。

調査方法は、サンプルとなる個人を選挙人名簿からランダム抽出する。その地区を外国人がどれだけ住んでいるかと参照するキーとして使っている。いっぽう、意思あるいは意識は、アンケートの形で調査している。2009年の調査では全国30市区、2013年の調査では全国51市区、2017年の調査では全国60市区としている。この「市区」とはなんなのか、どういう基準で選んだのか、本書では明らかではない。

排外主義の調査には、アンケートの項目に次のような質問があるべきだったと思う。
(1)あなたは、つぎにかかげる外国人旅行者にあったことがありますか。
(2)あなたの近くに、つぎの在日外国人が住んでいますか。
(3)あなたの職場に、つぎの外国人労働者がいますか。
(4)あなたの友人に、つぎの外国人がいますか。
(5)あなたは、外国に旅行したことがありますか。
(6)あなたは、外国にくらしたことがありますか。
(7)あなたは、つぎの外国語を聞いてわかりますか。

アンケート回答者の住所をキーとしても、上の情報はえられない。

また、「反自由主義」とか「新自由主義」とかのカテゴリー項目を立てる以上、心理的な因子を探る質問をアンケートのなかにひそめておくべきだと思う。

本書は、データ分析の手法の妥当性ではなく、結論を提供することを目的としているという。たしかに、各章の担当者は、図をつかって素晴らしいプレゼンテーションをしている。

しかし、各章には、「重回帰分析」「多変量解析」「主因子法因子分析」「潜在クラス分析」「ロジステック回帰分析」「探索的カテゴリー因子分析」「構造方程式モデリング」「ランダム効果ロジットモデル」「統計的有意」「有意確率水準」「統制変数」「指標」「因子得点」「規定要因」という言葉が散らばっている。

対象をどういう確率モデルにあてはめたかをまとめて説明する章が、本書に欲しかった。さもないと、確率モデルを扱ってきた、私にとって、本書はうさんくさい。文章がたくみだけに、よけい、高学歴の社会科学者がお遊びをやっているだけのように見えてしまう。

一方的な非難をしてしまったが、新聞社やテレビの調査よりは、ずっとレベルの高く、敬意をはらって本書を読ましていただいている。新聞社やテレビの調査では、各アンケート項目の点数化しているだけで、項目間の相関の情報を無視している。田辺のグループは対象に確率モデルを導入し、そのモデル・パラメーターを決定している。導入した確率モデルの妥当性こそがデータ分析の「いのち」である。

ちょっと時間をおいて、次回は、中身について踏み入って、議論したい。

ファーウェイ製品排除に反対、良ければ使えばよい

2020-01-30 22:21:13 | 経済と政治
 
私はいまだにガラケーを使っている。
5G時代になったらサポートしないから、スマホに買い替えよ、とのパンフレットがキャリアから送られてくるようになった。
 
知人がファーウェイのスマホを使っている。見せてもらったがパフォーマンスがすごくよい。買うならファーウェイの製品にしょうと思っている。
 
ところが、送られてくるパンフレットにはファーウェイの製品が載っていない。ドコモ、au、ソフトバンクのキャリア各社は、自主規制をやっていて、すなわち、安倍政権に忖度していて、中国のファーウェイ製品が存在しないかのように、ふるまっている。
 
2年前に、中国のファーウェイ社がアメリカの安全保障をおびやかしているから、ファーウェイ製品を使うなと、トランプ大統領は、親米諸国の政府に告げた。
 
きのうの朝日新聞に、イギリス政府が1月28日、次世代通信規格「5G」の通信網で、中国のファーウェイの機器の一部使用を正式に認めた、という。フランスもドイツも特定のメーカーを排除しない方針という。
 
「アメリカの安全保障をおびやかす」とトランプ大統領が言うが、ファーウェイ社が具体的に何かをしたわけではない。中国のIT技術がアメリカのIT技術をこえたから、トランプがたたいているだけだ。それなのに、IT技術は軍事にも使えるという漠然とした国民の恐怖心を利用して、ファーウェイ製品排除をはかったのである。
 
製品の排除だけでない。ファーウェイ社副社長がカナダで2018年12月1日に逮捕された。アメリカ政府の要請だという。その時点では、副社長はアメリカでまだ起訴もされていず、翌年の1月に、イランを拠点とするスカイコム社が実際はファーウェイの関連企業だったことを理由に起訴した。
 
現在、副社長は保釈されているが、GPSを足につけ、カナダから出国できない状態である。ようやく、今年の1月20日から、アメリカに引き渡すか否かの裁判がカナダで始まった。
カナダ政府もトランプに対して腰がひけている。
 
日本は、トランプにひきずられて、中国企業たたきに巻き込まれないようにすべきだ。産業構造がグローバル化した現在、その国の政治体制にかかわらず、優れた工業製品が各国から出てくるのが当然だ。知識は国境をこえる。政府間の対立から優れた工業製品を市場から排除するのは納得がいかない。市場にまかすべきだ。

被告人の主張、津久井やまゆり園殺傷事件第9回公判

2020-01-29 23:16:49 | 津久井やまゆり園殺傷事件

1月27日 横浜地裁で、津久井やまゆり園殺傷事件の第9回公判があった。弁護側の被告人質問と検察側の被告人質問が行われた。これまでに、2回の審理がキャンセルされ、来週の2月4日の審理もキャンセルされることになった。弁護側が被告の発言の機会をへらすために、このようなキャンセルが続くのではないかの疑義を覚える。

第9回公判のメディア各社の報道は非常に簡単なものになっている。それでも、総合するとかなりの情報が得られる。

27日に、弁護側の被告人質問で下記のやりとりがあった。

(1)被告は「匿名裁判というのが、重度障害者の問題を浮き彫りにしている。(重度障害者は)人の時間と金を奪っている。施設に障害者を預けているのは家族の負担になっている証拠だ」と述べた。

裁判で被害者を匿名にすることに、確かに重度障害者への差別意識がうかがえるが、匿名に反対している被害者の遺族もいる。裁判所が被害者を匿名にしたことが、「施設に障害者を預けるのが家族の負担になっている証拠」とは言えない。

(2)「大麻の使用によって思い浮かんだ一番良いアイデアは何か」との質問に被告は「重度障害者を殺害した方が良いということ」と答えた。

アメリカ精神医学会の診断マニュアルDMS-5には「大麻誘発性精神病障害は大量の大麻使用直後に発症し、通常、被害妄想、顕著な不安、情動不安定、離人感を伴う。障害は通常1日以内に寛解するが、症例の中には2~3日持続するものもある」とある。

被告の「事件の3年ほど前から大麻を週2~4回ほど吸っていた」という程度で、「意思疎通が取れない人を安楽死さすのが正義である」という信念をもったという仮説は無理である。

いっぽう、検察側の被告人質問で下記のやりとりがあった。

(3)被告は2012年12月から3年あまり園で働いた。その経験から「重度障害者はいらない」という差別意識を抱くようになったとのべた。
 被告によると、障害者への同僚の接し方は「口調が命令的で、人として扱っていない」と思ったという。流動食の利用者もおり、「人の食事というより、流し込むだけの作業に見えた」。自らも食事を食べさせる際に利用者の鼻を小突いたことがあり、「しつけと思ったが改善しなかった」と話した。

津久井やまゆり園にどんな問題があったかは、別途、神奈川県知事のもとに委員会を組織し、調査が進められている。

(4)事件を起こした動機について、「重度障害者を殺した方がいいのだと、(社会に)気づいてもらえればと思った」と話した。会話など意思疎通のできない入所者を「できるだけ多く、殺そうと思いました」と説明した。

(5)意思疎通できないと どうやって判断したのかの問いに、被告は「部屋の様子やその人の雰囲気で判断した。部屋に何もないと、自分の考えを伝えられない人だと思った」と述べた。

(6)被告が拘束した職員から「入所者に心はあるんだよ」と言われ、「居心地がいい気はしなかった」が、それでも「人の心とは言えない」と思い、犯行を続けたと述べた。

(7)通報を恐れ、逃走を決意したが、それまでに刺した人数が少ないと思ったため、意思疎通可能かどうかを確かめずに刺したという。

(8)事件後に自ら出頭することで、そうした動機が「(社会に)伝わりやすいと思った」と述べた。なぜ伝わりやすくなるのか尋ねられると、「(自分が)錯乱していないことが(警察にも)分かるから」とした。

(9)「なぜ体を鍛えていたんですか」の問いに、「職員と取っ組み合いになると思っていた」と答えた。また、「職員の少ない夜勤を狙った」「拘束しやすい女性職員のいるホームから狙った」とも語り、職員を拘束する目的で拘束バンドやガムテープを事前に購入したことも含め、周到に準備した上で決行したことを明らかにした。

   ☆   ☆

本件と同じような思想信条からくる大量殺人は、2011年7月22日にノルウェーで起きた。

白人によるヨーロッパ社会が移民によって壊される、移民を受け入れるノルウェー労働党党員を殺すのが正義だという信念から、32歳のブレイビク(Anders Behring Breivik)が77人を殺害した。
首都オスロの政府庁舎で8人を爆死させ、ウトヤ島でノルウェー労働党青年部の集会に集まった10代の青年69人を射殺した。

このとき、極右思想が広まるとまずいと理由で、裁判を非公開にし、しかも、ブレイビクは統合失調症だとして、無罪にし、精神病院に閉じ込めようとした。被害者の遺族がこれに抗議し、結局、2012年に、殺人罪としての最高刑の判決が出された。ノルウェーでの刑法では、それが、禁錮最低10年、最長21年であった。

今回と同じく、ブレイビクは一貫して裁判で自分は統合失調症でないと主張した。

裁判所が極右思想が広まるとまずいとした根拠は、ヒトラーが、ミュンヘン武力革命で起訴されたとき、裁判をユダヤ人排斥思想の宣伝の場に使ったことによる。思想信条による確信犯を裁くとき、検察の弁舌能力がとても大事になる。うまくいけば、検察の弁舌で社会の差別意識を打ち壊すこともできると思う。公判は公開で被告との論戦の場にしないといけない。

左と右、左利きと右利き

2020-01-28 22:39:29 | 脳とニューロンとコンピュータ

私の父は左利きであったという。私の母がそう言うのである。父の父、私の祖父がムリヤリ右利きに矯正したのだと母が言う。確かに、左手が右手と同じように使えるから、そうかもしれない。

母は、祖父がそういうことをしたから、父が気の弱い人間になったと言う。だから、左利きをムリヤリ直してはいけないと言う。

子どもに無理じいしてはいけないと思うが、「気の弱い」というのは、そのまま受け取れない。「押しが弱い」だけだ。別の言い方をすれば、aggressiveでないだけだ。
押しが強いということがそんなに良いことだと思わない。押しが強いということは、誰かを押しつぶすことになる。

母は義父、私の祖父が大嫌いだったから、ちょっと言い過ぎたのだろう。母も父も死んで、いまは、私の記憶の中でだけ生きている。

また、NPOで私の担当した女の子に左利きがいた。左手で字を書くのである。

ある日、その子が、ひとりで漢検の練習のために、右手の人差し指で漢字をなぞっているのをみた。左利きなのに、右手で漢字をなぞるのがとても不思議に思った。どうも、書き順を覚えるのに、はねるところ、とめるところなどを覚えるために、右手でないとダメらしい。

左利きだと、左利き用の道具でないと具合がわるいと よく言われるが、漢字が右利き専用にできていることを、このとき、はじめて理解した。甲骨文字の場合は、左利きでも右利きでも問題がない。ところが、筆で字を書くようになってから、右利き用の書体になった。教科書体や明朝体は、差別的な書体である。

私自身はべつに左利きではない。しかし、どちら側が左か右かが、とっさに出てこない。左か右かの混乱が生じる。

子どもとき、私は、自分の右側の手が、向かい合った人の左側になるのが、理解できなかった。小学校でラジオ体操をするとき、先生と同じように手足を動かしているはずなのに、みんなと反対になってしまう。向かい合っている先生と同じ側の手足を動かしてはいけないのだ。

これがトラウマになって、頭の中で左、右を意識すると、どちら側が左なのか、右なのか、私は困ってしまう。

私の混乱は、数学的には、鏡面対称の問題である。鏡に映った自分は、右手をあげれば、右側の手があがる。大人になって、理屈としては納得できたが、いまでも、混乱する。

津久井やまゆり園殺傷事件の被告をなぜ精神異常とするのか

2020-01-26 18:05:38 | 津久井やまゆり園殺傷事件


私は津久井やまゆり園殺傷事件の被告を異常な人間とみることに反対である。
被告は、自分より弱い者を目の前から取り除きたがる、どこにもでもいる弱者にすぎない。
意思疎通ができなく不幸な人生を送っている弱者を見たくないのである。
自分も弱者であることを認めたくないだけである。
昔からある、若者によるホームレス殺害事件と同じである。

メディアは、不倫した俳優を倫理に背むくと非難し、けっして、精神異常とは言わない。ところが、根底においてイデオロギー(思想)が絡む殺人犯の場合、正面から批判せず、精神異常と片付けてしまう。

被告の言っていることは、安倍晋三が言っていること、トランプが言っていること、自民党や公明党が言っていることと同じである。

メディアは踏み込んで被告を断罪すべきである。自民党や公明に投票する人間は、心において(霊において)被告と同罪である。

1月24日の横浜地裁第8回公判では、弁護人による被告質問があった。産経新聞のウェブサイトに、その詳しい傍聴記録があるので、以下に引用し、補足説明する。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「今、あなたはどこにいるか分かりますか」
 被告人「分かります」
 弁護人「どこですか」
 被告人「裁判所です」
 弁護人「なんの裁判ですか」
 被告人「障害者を殺傷した事件についてです」
 弁護人「あなたのしたことに間違いはありませんか」
 被告人「間違いありません」
 弁護人「その前に、この裁判について、弁護側がどのような主張をしているか知っていますか」
 被告人「心神喪失、心神耗弱(こうじゃく)による無罪を主張しています」
 弁護人「そのことについて、あなたはどう思いますか」
 植松被告「自分は心神喪失ではないと思っています」
 弁護人「正しい考えに基づいて行動したということですか」
 被告人「はい」
   ☆   ☆   ☆
弁護人は、被告が精神異常であることを立証しようと、被告人質問を続けたが、被告の主張は日本社会のどこにでも見られる「弱者に対するヘイト」である。
被告が殺傷行為をしたときと、考えを変えていなければ、当時、心神喪失でも、心神耗弱でもない。罪を犯すことで高揚していただけである。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「トランプ大統領をどう思いますか」
 被告人「勇気を持って真実を話していると思います。メキシコとの国境に壁をつくるというのも、いいことかどうかは分かりませんが、メキシコのマフィアはとても怖いのは事実です」
 弁護人「真実を話しているというのは…」
 被告人「かっこよく生きていると思います。すべてかっこいいと思いました。かっこいいからお金持ちなのだと思います」
 弁護人「そのトランプ大統領は重度障害者を殺していいと言ってますか」
 被告人「いえ、それは私が気付いた真実だと思います」
   ☆   ☆   ☆
トランプの主張をそのまま受け入れているのではなく、ポリティカル・コレクトネス(PC)に反対していること、すなわち、弱者に媚びないことを、被告人は評価しているのだ。まさに保守本流の考えかただ。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「意思疎通が取れない人はなぜ安楽死しなければならないのでしょう」
 被告人「無理心中、介護殺人、社会保障費、難民などで多くの問題を引き起こす元になっているからです」
   ☆   ☆   ☆
被告の言う「安楽死」は「苦しめずに殺害する」ことで、競馬の馬が骨折すると、人間が日常的にやっていることである。人間が人間にたいしても、75年前には「優生学」や「国民共同体」思想のもとに、「安楽死」を行っていた。ここでは、本人の生きたいという意思が無視されている。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「重度障害者にも親、兄弟がいます。その人たちの気持ちを考えたことはありますか」
 被告人「自分の子供を守りたいという気持ちはわかりますが、受け入れることはできません。なぜなら、自分の金と時間を使って面倒を見ることができないからです。彼らの生活は国から支給される金で成り立っており、家族の金ではありません」
 弁護人「それでも、愛情をもって接している家族もいるんですよ」
 被告人「気持ちはわかりますが、他人の金と時間を奪っている限り、守ってはいけないと思います」
   ☆   ☆   ☆
 被告人「安楽死には家族の同意があればいいと思っていましたが、できない人もいると思いました。本人は意思疎通が取れないので必要ありません。問題は家族の同意です。愛している家族はきっと同意できないと思います。でも、金と時間を支給されている限り、それは違うと思うんです」
 弁護人「家族が愛していても死ぬべきだということですか」
 被告人「その通りです」
 弁護人「ヒトラーの影響はありますか」
 被告人「ありません。安楽死のことを思いついてから、ヒトラーのことを知ったからです。ユダヤ人の虐殺は有名ですが、障害者のことは知りませんでした。障害者を虐殺するだけなら間違っていなかったと思います。ただ、虐殺した障害者の中に軽度の方が含まれていたらそれは間違っていたのかもしれませんが…」
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「安楽死を認めると世の中はどうなると思いますか」
 被告人「生き生きと働ける社会になると思います。仕事をしないから動けなくなり、ボケてしまうと思います。仕事をすることが重要です」
 被告人「働けない人を守るから、働かない人が生まれるんだと思います。国から支給された金で生活するのは間違っています」
 被告人「日本が借金だらけで、財政が苦しいことを知ったからです。お金が欲しくて、世界情勢を調べるようになりました。そうしたら、テレビやインターネットで国の借金のことを知ったんです。安楽死させると、借金を減らせると思いました」
   ☆   ☆   ☆
まさに、安倍晋三や自民党が言っていること、「一億総活躍」や「自助の原則」と同じではないか。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「(重度障害者を殺害すると)事件前、何人ぐらいの人に話したのですか」
 被告人「50人ぐらいはいたかと思います。半分以上の方に同意や、理解をしていただいたと思います」
 弁護人「それは、どういう反応をみて?」
 被告人「一番笑いが取れたからです。真実から笑いが起きたと思っています」
   ☆   ☆   ☆
被告の言っていることは、本当だと思う。日本社会の現状はこんなものである。
検察の調書では、少数だが、被告の発言から危険を察知して、津久井やまゆり園に連絡し人々がいる。これを無視した園側にも本件の責任があると思う。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「少し繰り返しになるが、あなた以外の人から事件について『こうしろ』と言われたことは」
 被告人「ありません」
   ☆   ☆   ☆
この質問は、被告に幻聴があったという言葉を弁護人が求めてのものである。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「あなたは何かほしいものがありましたか」
 被告人「お金です」
 弁護人「お金を得るためには何をすればいいですか」
 被告人「人の役に立つか、人を殺すかです」
 弁護人「殺すとはどういう意味ですか」
 被告人「詐欺をしたり、覚醒剤を売ったり、安い賃金で働かせたりすることです」
 弁護人「安い賃金で働かせるというのはどういう意味ですか」
 被告人「正当な報酬ではないということ。搾取するということです」
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「環境については」
 被告人「深刻な環境破壊による温暖化防止のために、遺体を肥料にする森林再生計画に賛同します」
 弁護人「遺体とは」
 被告人「人間の遺体です。捕まってから考えました」
 弁護人「人間の死体をこういうことに使うのは…人間であればよいのですか」
 被告人「はい」
   ☆   ☆   ☆
東日本では土葬という習慣もあり、「遺体を肥料にする森林再生計画」だけで、被告が精神異常だとは言えない。弁護人は、被告に異常な死体愛好があるという裏付けのために、この質問をしたのだと思う。

被告は、思想信条にもとづく確信犯で、正面切って弾劾すべきである。明日から始まる、検察によるレベルの高い被告人質問に期待したい。