猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

宇野重規の朝日新聞《論壇時評》は期待はずれ

2023-04-30 12:34:49 | 思想

宇野重規がこの4月から朝日新聞の《論壇時評》の筆者に加わった。期待して4月27日の彼の初時評『自分と世界つなぐ感触』を読んだが、なにかを警戒してか、はっきりモノを語っていない。まったく期待外れだ。

去年、安倍晋三が殺害されたときも、朝日新聞のインタビューにも「民主主義の危機」というだけで、本音がでてない。日本の政治上の癌である安倍晋三が取り除かれたのだから、この好機を生かして、民主主義(デモクラシ)を取り戻そうと言って欲しかった。

宇野は「わたしたちを圧倒する情報の洪水に立ち向かい、共に議論していくための場を取り戻したい」と言う。確かに、「情報の洪水」が立ちそびえている。しかし、この「情報の洪水」は、無意味な情報の氾濫である。しかも、この洪水は意図的に権力側から意図的に起こされている。

教科書は政府の手に握られている。政府が教科書の検定し、どうどうと子どもの洗脳を行っている。

テレビやラジオは、放送の認可という形で、政府の圧力を受けている。報道が極端か否かを個々の番組ごとに判定すると自民党の高市早苗は放送局に圧力をかけた。高市の後ろ盾の安倍が取り除かれたことで、このことが明るみにでた。

そういえば、安倍が殺害されなければ、自民党と統一教会の癒着は明るみにでなかった。岸田文雄は統一教会との癒着の問題を曖昧化を図っている。

フェクニュースなど悪意のある情報の洪水の前には、命をかけて、率直に意見をいうことがだいじなのだ。そして言い続けることが、信頼を勝ち取る。みんなは信頼できる意見を求めている。

宇野は「自由と民主主義、そして法の支配を守るために、内向きになりがちな米国を支え、世界の秩序回復に貢献すべきであることに異論はない」と言う。なぜ、こんな卑屈な言い方をするのだ。下線の部分は安倍晋三の持論である。なぜ、安倍に異論はないというのだ。

宇野は民主主義(デモクラシ)は平等だと言ってきた。それなら、「自由と平等」というべきではないか。安倍は、「民主主義」を「選挙制度」とすりかえ、自分が選挙に勝てば何をやっても良いという態度で押し通した。そして、選挙に勝つためのバラマキの風土を自民党に植え付けた。

「法の支配」は「善」とは限らない。「法の支配」を徹底したのは、古代中国の秦帝国である。「法の支配」は権力者の命令を徹底させることにつながる。法の中身を吟味せずに「法の支配を守る」とは権力者の横暴を許すことになる。

知識人に求められていることは、権力者と戦う姿勢ではないか。私ような一般人は、闘うための言葉を求めている。

「世界の秩序回復」とは何をいうのか。回復というからは「世界の秩序」があったことになる。それは何なのか。1990年以前は社会主義陣営と資本主義陣営の対峙であり、それ以降は、資本主義国アメリカの一極支配でないか。そのアメリカがアフガニスタン侵略、イラク侵略を行い、中東の不安定化を引き起こした。

いま、起きていることは、アメリカ政府の一極支配に世界が反旗を翻しているのだと思う。「米国を支え」とは、見当違いでないか。戦後、日本政府はずっとアメリカ政府のご機嫌を伺ってばかりで、1980年代に石原慎太郎が指摘したように、「No!」を言わなかった。それこそ、反省すべきことではないか。

宇野重規の『トクヴィル 平等と不平等の理論家』や『民主主義とは何か』を読んで共感していたが、今回の論壇時評には裏切られた感が強い。そんなに東大教授の地位を守りたいのか。


橋爪大三郎の『リスキリング 似た経験した人 過去に見つかる』

2023-04-27 23:58:53 | 働くこと、生きるということ

きのうの朝日新聞夕刊の橋爪大三郎インタビュー記事『リスキリング(学び直し)への心構えは 似た経験した人 過去に見つかる』が面白かった。モヤモヤしたものがすっきりした。だが、タイトルはちょっと不適切である。

橋爪は最初につぎのように言う。

「リスキリング。危ない言葉ですね。」

「経営者も政府も、経営不振や不景気は労働者のせいだ言わんばかり。」

「クビを切られるのは、スキルのないお前の責任だ。こんな言葉がブームになるなるのはおかしいんです。」

私はリスキリング(reskilling)が日本ではやっていたとは知らなかった。これは非常に政治的な言葉だ。こんな言葉を安易に使うやつらがウヨウヨといっぱいいるなんて正気の沙汰でない。

スキル(skill)とは「何かを巧みにこなす能力」のことを言い、もともとは名詞である。これにingをつけてスキリング(skilling)とするから、スキルを動詞として使っている。新しい英語の用法なのだろう。「巧みにこなす能力」が教育で得られるという仮定があって、動詞として使うのだと思う。私自身はここから疑う。教育は表層的な知識をさずけることで、職場での経験がなければスキルはつかない。

リスキリングは、さらにリ(re)がついたのだから、新しい仕事をする能力をつけるという意味になる。労働者をクビにしておいて、労働者にリスキリングしろというのは、無責任である。誰かが雇わなければ、熟練労働者になる機会すらない。雇用者は、労働者を首にしないで、リスキリングする倫理的責任があると考える。

経営者の立場からすると、労働者をリスキリングするのはコストがかかる。とすれば、労働者がもっているスキルを活かした新しい市場に企業が進出するのが、経営者の普通の選択である。じっさい、まともなコンサルタントはそう経営者に進言する。

リスキリングを「お前のスキルはもう古い」という意味で使うのは、人の人生を一方的に否定している。本来は、そんな言葉を軽々しく使うべきではない。

ただ、個人の力や経営者の力だけでは及ばない大きな「時代の転換」は起きるかもしれない。橋爪は「たとえば空襲で町全体が焼けてしまった状況」を「リセット」と呼ぶ。橋爪は日本の敗戦時を思いうかべているのかもしれない。私は地球に大きな隕石が落ち気候の大変動が起きた場面を思いうかべる。こういうときは、みんな平等だから、柔軟な思考でやり直しするしかない。

しかし、それは、「リスキリング(学び直し)」ではないと考える。橋爪のいう「似た経験した人 過去に見つかる」とは過去の人の生き方から「やり直しの勇気」をもらうことであって、「何かを巧みにこなす能力」を過去の人から学ぶことではない。


対話型AI「チャットGPT」への朝日新聞の危惧に同意

2023-04-24 23:46:03 | 脳とニューロンとコンピュータ

数日前のことだが、私が働いているNPOの理事長が、自分の入力した質問文と対話型AI「チャットGPT」の回答文を私に送ってきた。AIの回答に感激したからである。

私から見ると、この生成系AIが、モラルの低いコンサルタントと同じことを行っているだけだ。この対話型AIは、相手の聞きたい回答を、ユーザの質問文から推定し、膨大なデータベースからの情報をもとに、作成している。現在、多くのクライアント(依頼主)は、コンサルタントから真実を聞きたいのではなくて、自分の思いを擁護してくれば、喜んでコンサルタント料を払う。

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ここ数年、朝日新聞は、AI(人工知能)をヨイショしてきた。ヨイショし過ぎであると私は思っていた。ところが、この3月の終わりから今月にかけて、朝日新聞は対話型AIに批判的な記事を載せている。

これまでのAIは、ディープラーニングに見られるように、与えられた目標に向かって、最善の統計的判断を下すことだった。典型的な利用は将棋の情勢判断である。昔は、マシンが統計的判断するには、人間が対象を確率モデル化する必要があったが、ディープラーニングの場合には、確率モデルの作成を必要とせず、マシンに大量のデータを与えるだけでよい。

将棋の場合は、目標が勝ちに導く指し手だから、特別の価値観なぞ不要で、ディープラーニングに向いている。勝つ確率を数値で示せば、プロの棋士も満足して利用する。そして、生身の人間と異なり、感情がないから、パニックになって情勢判断を誤ることもない。

しかし、統計的判断だから、私自身の評価や生に影響を与えることを、AIにしてもらいたいと思わない。統計的判断であるから、判断を誤ることがある。ディープラーニングは、確率モデルが欠如しているから、どうして、そう判断したのか、説明できない。

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対話型AIは、どうも、ユーザの思いを、蓄積されたこれまでの人間たちの行動と質問文とから、判断しているようだ。単なる日本語らしい文を生成してるだけではないようだ。

朝日新聞は、4月11日の《耕論》に、チャットGPTの利用分野、限界を記者がチャットGPT自身に質問し、その回答文を載せている。読んで気づいたのは、チャットGPTが自分自身を防御していることだ。たぶん、質問文の「限界」という言葉や「対話型AIが人間の役割を奪っていくのではないか」にチャットGPTが反応したものと思われる。

これは、対話型AI「チャットGPT」が、質問者の聞きたいことを判断するだけでなく、自分のオーナーの望むことを代弁しようとしていることだ。このことから、対話型AIがペテン師として機能することを、開発者が狙っていると考える。対話型の意味が、古典ギリシアのダイアローグと異なり、デマゴーグに近い。

20年前、私がIT会社の研究所にまだいたとき、AIが、ユーザのネット上の行動から、好みや価値観を判断し、商品を売り込むという研究が流行していた。チャットGPTはこの延長上のように思われる。確かに、現在のビジネス界は儲かればよいという世界で、ペテン師まがいのことをしている輩がいっぱいいる。したがって、チャットGPTの市場は大きいように思える。

私は対話型AIを規制しようとしている欧米の政府は健全な反応をしていると考える。私は、日本政府が対話型AIを景気浮揚の起爆剤にしようとしていることに危惧をいだく。

ダイアローグとデマゴーグとは異なる。対話型AIでフェクニュースが拡散されても困る。


消費者物価高、デフレマインドよりインフレマインドのほうが怖い

2023-04-22 23:22:38 | 経済と政治

けさの朝日新聞2面に『〈時時刻刻〉予想を超す物価ずっしり』という記事が載っていた。

記事によると、コンビニ大手のファミリマートの社長は、今月の決算説明会で「『価格を上回る価値』という商品開発を心掛けて、環境の激変に対応してきた」と振り返ったという。その結果、「同社の売上高は前年より2.2%増え、国内店舗の1日平均売上高は過去最高を更新した」のである。

社長は自慢しているのではなく、じつは利益が減少することを弁解しているのだ。環境の激変とはインフレの加速である。日本の消費者物価は4%台で上昇しているのに、同社の売上高が2.2%しか増えなかったということは、実質売上高は減少しているのだ。

ファミリマートの「看板商品ファミチキはタイ産鶏肉など原材料の上昇で2回値上げし、税込み180円から220円に上がった」にもかからず、売り上げが2.2%しか増加しないということは、売上は減少しているのだ。

私の子ども時代、やはり、インフレの嵐のなかにあった。私の親は商店を経営していた。私の父は商品の値札を何回も付け替え、仕入れ値よりずっと高い値段で売っていた。これは不当なのではないかと疑問に思って、私は父に売値をあげる理由を聞いた。父が言うに、社会全体で物価が上がるとき、仕入れたときの値で売値をつけると、売れたとき、つぎの仕入れをするお金がなくなる、と答えた。仕入れ値と売値との差で利益が出ても、商売の継続が難しくなると言うのだ。

私の子ども時代のインフレは、政府の必死のインフレ抑制策と円高のおかげで、物価が10倍から20倍あがって落ち着いた。30円のラーメンが500円になって落ち着いた。

いま、アメリカ政府が必死になってインフレ抑制のため金利をあげているが、それでもインフレが止まらない。デフレマインドよりインフレマインドのほうが怖いのだ。インフレマインドがいったん広がると、インフレを制御するのが難しくなる。

これは、流通業だけの問題ではない。現在、製造業はどこかから半製品を仕入れて少し加工してどこかに半製品を納めるというサプライチェーンというネット構造から成り立っている。インフレは全産業に名目上だけの売上高の成長をもたらすが、実質経済の成長を保証しない。

記事では、「昨春時点で歴史的なインフレを予想するエコノミストは少なかった」「ロシアやウクライナへの資源依存が日本は少なく、本来なら戦争(ウクライナ侵攻のこと)と日本の物価は大きく関係しない」と述べる。物価高をまねいたのは、円安と「インフレになるとの予想(インフレマインド)」だとする。そして、「今後は物価高が落ち着くとの見方が多い」と述べる。

この見方は甘すぎると私は考える。

私は、インフレの本当の理由を日本政府の莫大な借金だ、と考える。そのため、政府は金利を昔の水準に戻すことができない。円安は当分続く。

それだけでなく、インフレがすすめば、日本政府の借金が紙くずになる、と政府が願っている。借金を踏み倒そうとしている。そのうえ、日本政府は、軍備費を2倍に拡大し、また、選挙対策としてお金をばらまこうとしている。

この日本政府とは、自民党政権のことである。景気対策の財政出動のたびに、国債の発行高を増やしてきた。「暗黒の民主党政権」時は、それでも、まだ良かった。財政出動が景気対策として効果があるか否かの議論があった。本当の暗黒は自民党が政権に返り咲いた2013年にはじまる。お金はどんどん刷れば良いとして、国債を日銀に買わしている。しかも財政出動の恩恵は自民党の支持者にいく仕組みになっていた。

私の妻は女子大出で、同級生の多くは上流や中間層に属する。彼女らは、コロナのときは、働かなくともずいぶん給付してもらったので、今度の選挙では自民党に票を入れると言っている。給付とは、国民一律の給付金でなく、事業者に対する特別給付のことである。

こんな腐敗している日本で良いのか。

岸田が襲われたから「民主主義を守れ」というが、それは自民党政権維持のため、「議会制を守れ」と言っているだけである。

朝日新聞の記事は、政府が、インフレを起こそうとして「賃上げ」「価格転嫁」を言っているとほのめかしている。私は、これが、自民党の本音(真の意図)だと考える。

デフレの原因は、世界的に富が一部の人間に集中していて、購買力が下がっていたからである。富の集中を是正しなくて、インフレで景気対策をしようとするのは、大間違いである。政府の政策を富の再分配に向けないといけない。

横浜市に住んで肌に感ずるのは、家賃が高いことである。モールも多くの店舗が家賃を超える利益を上げることができず、撤退していく。安い家賃の公共住宅、安い家賃のモールを作ることは景気対策になる。

また、株や金融商品からくる利益を個人所得に含めて累進課税を施すことも、税収の拡大、政府の借金縮小に役立つであろう。岸田政権の「資産所得倍増」政策はこれに反する。

インフレ退治は自民党政権退治から始めないといけないようだ。


日本のメディアはドイツ政府の脱原発実施を まず たたえるべき

2023-04-20 13:13:38 | 原発を考える

ドイツ政府は、この4月15日に最後の原発3基の稼働を終え、予定通り、脱原発を実施した。予定通りという意味は、ドイツの国会で決めた脱原発の法律を執行し、国民への約束を守ったということである。

これに対する日本のメディアは、ドイツ政府の誠実さをたたえるのでなく、脱原発を執行することは、経済的リスクがあるとか、法律の執行を遅らせるべきだとの声がドイツ国民のなかに多いとか、ネガティブな論調で脱原発の実施を報道した。

まず、ドイツ政府の勇気をたたえ、ドイツ国民を祝福すべきでないだろうか。

メディアが掲げる懸念の1つは、電力価格の上昇がドイツ産業の国際競争力を損なうということである。なぜ、日本のメディアがそんなことを心配するのか。ドイツ国民に対する友情なのか。私は、日本が脱原発すると、日本の国際競争力を損なうと言いたいために、日本のメディアがドイツ国民を心配しているフリをしている、と考える。

私は、水力、風力、太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーの利用は、政府がその方向性を明確に打ち出さない限り進まないものだと考える。

今から15年前、私は、工学部で光工学を教える機会があり、太陽光発電の技術水準を調べた。その結果、植物が太陽光を吸収してエネルギーの転換する効率4%をはるかに超える効率十数%を普通に実現していた。日本の研究者は50%近くの効率の半導体素子の開発を競争していた。

いっぽう、当時の中国は、太陽光発電の実用化、すなわち、安くて耐久性のある半導体素子生産の研究を進めていた。中国は効率の競争に参加せず、太陽光発電の普及に向かったのである。数年も経ず、2011年の東日本大震災で、福島第1原発の重大事故が起きると、中国の低価格の太陽光発電素子が世界の市場を席巻した。

私が言いたいのは、日本の政府も企業経営者も、再生可能エネルギーによる発電に力を入れれば、いくらでも、電力が安くなるということである。政府がやるべきことは、ドイツにならって、いついつまでに原発を全廃すると決めることである。それによって、民間の研究開発競争が進み、安くて耐久性のある発電設備が市場に出回るようになる。

再生可能エネルギーの発電コストを下げるとともに、また、日本社会が、エネルギーの使用にあまり頼らない産業に移行していくことが大事だと私は考える。これも、政府が明確に方向を打ち出すことで起きることだ。

岸田文雄は、歴史がどの方向に進むべきかの哲学がなく、総理の座を守ることに終始している。メディアは、もっと本気で岸田を叱るべきで、他国の政府のことを心配する暇がないはずである。岸田を守ることは民主主義を守ることにならない。