猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

パレスチナ人とイスラエル人との戦争はナショナリズムが生んだ悲劇

2023-10-31 23:54:03 | ガザ戦争・パレスチナ問題

放送大学名誉教授の高橋和夫は、ハマスとイスラエルの紛争は宗教の争いでなく、土地争いだと言っている。私も宗教戦争と見るのは不適切だと考える。

そもそも、ユダヤ教というものは宗教ではない。ユダヤ教が宗教なら、望む人はユダヤ教に改宗できるはずである。ところが、ほかの宗教と異なり、母がユダヤ人なら子はユダヤ人になれるが、それ以外は国籍を変える以上に困難である。

キリスト教徒がヘブライ語聖書を旧約聖書としたため、多くの人はユダヤ教を宗教と誤解しがちである。じっさいのユダヤ人は、タルムードにしたがって日常の生活を送る。ヘブライ語聖書は自分たちの祖先に関する物語である。古代のヘレニズム世界においては、古い歴史をもっていることが、民族の誇りであった。それゆえ、ヘブライ語聖書は、神が世界を創造した物語から始まるのだ。

ユダヤ教と言われるモノは自分たちをユダヤ人とする信念の具現化である。したがって、タルムードやヘブライ語聖書は、「持ち運びできる国家」と言われる。これによって、ユダヤ人は周りに同化することなく、現代にいたるまで、ユダヤ人であることができた。

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今回、イスラエル首相のベニヤミン・ネタニヤフは、民主主義のイスラエルを支持するのか、それとも、イスラムのハマスを支持するのか、と世界に向かって呼びかけた。ここに、イスラエル国の問題の根がある。イスラエル国は西欧に属し、ハマスなどアラブの国々は野蛮国だ、文化的に劣るのだとネタニヤフが思っている。

イスラエルは1948年にパレスチナの土地に作られた国である。作ったのは、ユダヤ人のなかのシオニストと呼ばれる一派である。シオニストは、自分たちは西欧の文化の担い手で、アラブの人びとは文化とほど遠い野蛮人だと考える。さらに、シオニスト右派のリクード党は、世界は敵と味方しかいない、敵と戦わないものは愚かなものと考える。そして、敵は野蛮人だ、と考える。野蛮人が戦争の犠牲になるのは仕方がないと考える。

ハマスとイスラエルの土地争いは、第2次世界大戦において、イギリスがパレスチナ人にもユダヤ人にもパレスチナの土地を所有を約束したから、と言われている。

これも、ある意味では、誤りである。

私は、その前に、一民族一国家というナショナリズムが、19世紀にロシアを含むヨーロッパに吹き荒れたことが、ユダヤ人の国家を建設しようというシオニストを生んだと考える。国民国家というナショナリズムこそ、人類が犯した間違いである。

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ユダヤ人のパレスチナの地へ移住は1882年に始まる。それまでは、パレスチナの地に少数のユダヤ人しかいなく、多数のアラブ人のなかで、他の少数民族とともに、平和に暮らしていた。パレスチナの地に押し寄せるシオニストが多くなるとともに、もともとの住民とのいさかいが起きだした。

ナチスがユダヤ人を虐殺したから、ユダヤ人のなかで、シオニスト運動が起きたのではない。

第1次世界大戦後、オスマントルコに代わってパレスチナの土地を統治したイギリスは、シオニストとパレスチナ人の争いに巻き込まれ、統治の期限が切れる前に、国連にシオニストとパレスチナ人の争いの解決を持ち込んだ。1947年11月29日に、パレスチナの地をユダヤ人とパレスナ人の国に分割するいう解決策が国連で決議された。アメリカとソ連との共同で作成した解決策である。混在していた民族を、移住させてまで、引き離すというのが、ナショナリズムの非人道的な所である。

しかも、この国連の分割案では、当時の人口で32%のユダヤ人に面積で56%の土地を与えるという、不公平なものだった。1945年3月31日時点で、ユダヤ人の買い取っていた土地は6%である。ユダヤ人を優遇したのは、ユダヤ人は西欧化されており、アラブ人は野蛮人だという偏見が影響したとみる。この国連決議にパレスチナ人やアラブの国々は一斉に反発した。

1948年5月14日にイギリスの統治が終わるとともに、シオニストはイスラエル建国を宣言し、パレスチナ人やアラブの国々との戦争が起きた。第1次中東戦争である。翌年、イスラエルは、この戦争に勝利し、パレスチナの土地の78%を得た。その後、イスラエルは戦争のたびに国土を大きくしており、1973年の第4次中東戦争までに、パレスチナの地のすべてを支配した。

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現在、イスラエルは、ガザ地区とヨルダン川西岸の一部でのパレスチナ人の自治を認めているが、自治といっても塀に囲まれた中の生活で、イスラエル政府の許可がなければ、外の世界と行き来できない。

ガザ地区は地中海に面しているが、イスラエルの監視下にあり、漁をする小船以外、港から出られない。ガザ地区はエジプトとも国境を接しているが、現在、エジプトは軍事独裁国であり、イスラエルと友好関係にあり、イスラエルのガザ地区の封じ込みに積極的に協力している。

ヨルダン川西岸のパレスナ人自治区は、散らばった小領域の集まりで、イスラエル軍の厳しい監視下に置かれている。パレスチナ自治区以外のヨルダン川西岸にあるパレスチナ人の住宅は補修が認められず、何かの理由をつけて取り壊しの対象となっている。

また、自治区以外のイスラエル国内にパレスチナ人が住んでいても、ユダヤ人と同じ人権が認められない。日本の憲法にあたる基本法でイスラエルはユダヤ人の国としているからである。

パレスチナ紛争をパレスチナ人とイスラエル人の土地争いと見ることができなくもないが、両者の間は対等でなく、軍事国家のイスラエルが圧倒的に勝ち続けている。今回の戦争では、イスラエルは、ハマスの抹殺を掲げており、ガザに住むパレスチナ人が死ぬことは仕方のない犠牲だとしている。19世紀のナショナリズムがシオニストという怪物を生んだと言える。

イスラエル政府がガザ地区にしていることは、ナチスと同じ民族浄化である。


朝日新聞の「《耕論》自分らしさ?」は「地上軍ガザ侵攻」を隠すため?

2023-10-28 23:15:26 | こころ

きょうの朝日新聞の《耕論》のテーマは「自分らしさ?」だった。以前にもブログに書いたのだが、「自分らしさ」という意味が私にはわからない。

《耕論》の冒頭の朝日新聞の側の問題提起に「『自分らしく生きよう』というメッセージを目にすることが多い」「なぜ『自分らしさ』を求められるのだろうか」とある。

本当にそんなメッセージが多いのだろうか。誰がそんなことを言うのか。「自分らしさ」には、「女らしさ」「男らしさ」と同じく、うさん臭さ、陰謀臭さを感じる。

ネットで「自分らしく生きる」を検索してみると、「自分らしく生きるとは、周りの目を気にせずにやりたいことや楽しいと思えることを選択して、自分の気持ちに正直に生きることです」と答えが返ってくる。それなら、「自由に生きよう」で良いのではないか。「らしさ」をつけると、何か、「自分の能力にふさわしく生きよう」と聞こえてしまう。

キズキ塾のサイトをみると、「『自分らしさ』に縛られ過ぎず、自分の生き方を探していきましょう」と書いてある。「自分らしさ」とは自分の思い込みのことを言うのだろうか。

「自分らしさ」という言葉には、自分が何をやりたいのか、わからないという状態が想定されている気がする。それで、「自分の意思」ではなく、「自分の気持ち」に忠実に生きようと言っている気がする。自由のために闘わなくていいのだよ、無理しないでいいのだよ、そのままでいいのだよ、と言っているような気がする。

「自分のやりたいことがない」「自分のやりたいことがわからない」という状態は、我慢し過ぎやあきらめ過ぎからくる、病的な状態だと思う。放課後等デイサービスで、低学年の子どもたちを見ていると、やりたいことがいっぱいあって、大騒ぎである。大人の言うことなんて聞く耳をもたない。

私は、小さい子どもには、我慢しなくてよい、あきらめなくてよい、と言いたい。そして、大人には、自分勝手な都合で、子どもたちの自由を奪うな、と言いたい。

問題は、病的な状態に陥った大人である。精神科の医師が薬を出して解決とはいかない。もし、意志力が強いのなら、思いつくままに自分のやりたいことを書き抜いていき、しだいに明確な自分の意志を育てることである。どうしたら、自分の意思が実現するのか、少しづつ、その戦略を考えていく。

意志力が強くないなら、自分の思いを聞いてくれる相手を見つけることである。自分とともに行動してくれなくてもよい。耳を傾けてくれる人がいるだけで、自分が何がやりたいのか、整理できる。

総じて、自分の思うままに物事はならない。しかし、自分の思うままに動いてみることは、物事がそうならなくても、満足感がある。

[関連ブログ]


イスラエル政府は国際世論を無視してガザ地区のパレスチナ人を大虐殺するだろう

2023-10-25 00:20:10 | ガザ戦争・パレスチナ問題

まれにみる大虐殺が、21世紀のいま、パレスチナのガザ地区に起きようとしている。ガザ地区には発電の燃料も切れだし、この惨劇を外から見ることができない状況になりつつある。

この事態を受け、今週の月曜日から、BSフジのプライムニュースで、各界のゲストを迎え、議論が続いている。

月曜日のゲスト、ひげの隊長こと自民党参議員の佐藤正久、元自衛隊陸将の山下裕貴、慶大大学院の田中浩一郎が、イスラエル政府はハマスを根絶やしにするために地上軍侵攻の固い決意をもっており、世界からの非難や人質の犠牲をいとわないだろう、と言っていた。

火曜日のゲスト、東大大学院教授の鈴木一人、兵器オタクの東大講師の小泉悠は、ハマスにイスラエルに勝てる兵器を持ち合わせていず、戦争で勝つつもりは初めからなかった、と言っていた。

私は、このゲストたちの認識はまったく正しいと思う。アメリカ政府やイギリス政府、フランス政府のイスラエル国の報復支持から、日本政府が距離をおいていることは、賢明なことである、と思う。

今回、ハマスが、ガザ地区からイスラエル国に侵入し、イスラエル人を約1000人殺害し、人質を連れ去った奇襲攻撃を、イスラエル政府が、逆に、ハマスをせん滅する絶好のチャンスだと考えた、と私は思う。ガザ地区のパレスチナ人を大量に殺す大義名分ができた、と考えた、と思う。すでに、この1週間で、5000人以上のパレスチナ人をガザ空爆で殺している。

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ひげの隊長の佐藤は、国連から派遣されてゴラン高原の平和維持活動に従事した。そのとき、イスラエルが国連をまったく尊敬していないことに、愕然としたと言う。

イスラエルの現在の首相は、シオニスト武闘派のリクード党党首ベンヤミン・ネタニヤフである。リクード党の考え方は、世界を敵か味方かに分け、敵を軍事力でせん滅すべきとする政党である。

鶴見太郎は、『イスラエルの起源』(講談社選書メチェ)のなかで、彼らの考え方をリアリズムと分析している。リアリズムはつぎの4点を国際社会の前提とする。

  1. 集団主義:国際社会は国民国家単位で動く。
  2. エゴイズム:個人や集団は自己の利益のために動く。
  3. アナーキー:国際政治は無政府状態である、法と秩序がない。
  4. パワー・ポリティクス:国際政治は力と安全保障についての政治に基づく。

すなわち、紛争は軍事力で解決するしかない、という考えである。

世界が尊敬するのは戦う者だけで、それを知らなかったのはユダヤ人だけで、われわれは甘かった、とリクード党の創始者メナヘム・ベギンが発言した、と鶴見は書く。すなわち、ホロコーストにあった者たちは甘ちゃんであると言うのだ。

1948年11月にベギンがアメリカを訪れたとき、理論物理学者アルベルト・アインシュタイン、思想家ハンナ・アーレント、シドニー・フック、そのほか数人のラビなどアメリカに住むユダヤ系の著名人らが、彼のグループの政治姿勢や行いがナチスに近く、ファシズム政党だと批判する連名の書簡をニューヨーク・タイムズに掲載した。

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これまでのところは、リクード党は成功している。イスラエル周囲の国々は、イスラエルの軍事力に圧倒され、ガザの住民を見捨てるようになっている。ガザの住民は、1948年にシオニストが武力でパレスチナに建国したときに、その地を追われた難民である。高い壁に囲まれた狭いガザ地区に約220万人の難民が閉じ込められているのに、いまや、周囲の国々は彼らを救おうとしないのである。

しかし、それは正義なのだろうか。

火曜日のゲスト小泉は、今回の攻撃でハマスは勝つつもりはなく、イスラエル国の暴虐さを世界に明らかにするためである、と言う。ハマスは近代的な兵器をまったく持ち合わせていない。

イスラエル政府のハマスせん滅とは、殺すことである。武力に圧倒的差があるのにまだ歯向かってくるハマス構成員は全員殺すしかないとイスラエル政府が考えるのは、リアリズムの当然の帰結である。

ハマスがガザのパレスチナ人の代表としての正当性がないというが、1回だけあったパレスチナ自治区の選挙でハマスが勝ったのである。最近の世論調査でも、ガザとヨルダン川西岸のパレスチナ人の過半数がハマスを支持しているという。

したがって、イスラエル政府が、人質やパレスチナの女子供をいとわず、空爆だけでなく、地上軍を送ってガザ地区のパレスチナ人を大量に殺害するのは間違いない。21世紀の歴史に残る大惨劇がこれから始まる。

シオニストの建設したイスラエル国とユダヤ人を切り離して考えることが、これから、以前に増して重要になる。イスラエル国を非難するが、反ユダヤ運動になってはいけない。


イスラエル政府やアメリカ政府の血の報復に抗議するユダヤ系団体と米国国務省幹部

2023-10-21 15:32:22 | ガザ戦争・パレスチナ問題

(議事堂内)

きのう、10月20日の朝日新聞に、いまも続くイスラエル・ハマス軍事衝突の記事と社説が、1面、2面、11面、12面と集中した。このなかから、テレビでは見過ごされがちなニュースを見ていきたいと思う。

1面で注目すべきは次の記事である。

<(ラファ)検問所はエジプトの管理下にあるが、エジプト政府によると、ハマスとの戦闘が始まって以降、イスラエル軍は検問所付近を4回空爆。イスラエルの同意なしに通行ができなくなっている。>

<イスラエル首相府府は声明で、「食料、水、薬に限り、人道支援を阻止しない」と発表した。病院の発電機や患者の搬送に必要な燃料は対象に含んでいない。>

2面にはさらに重要な記事『練られた決議案 唯一反対 侵攻容認貫く米国』がのっている。この記事は、ちょっと、紙面の都合でわかりにくなっている。

10月16日以来、15ヵ国からなる国連安全保障理事会(安保理)でイスラエル・ハマス軍事衝突の即時停戦の決議案が、アメリカの反対で、否決され続けているという記事である。安保理の決議採択には少なくとも9票の賛成と、常任理事国5カ国が拒否権を行使しないことが必要になる。

16日のロシア案は、ハマスへの非難がないというアメリカの反対で、賛成が5票、反対が4票、棄権が6票で否決された。

18日に、<ハマスへの非難を盛り込み、「停戦(ceasefire)」でなく「人道的中断(humanitarian pauses)」という文言を使った>ブラジル修正案も、アメリカ1国の反対で、否決になった。賛成が12ヵ国、棄権がロシアと英国の2ヵ国である。アメリカの反対理由は<決議案にはイスラエルの自衛権について言及がない>であった。

これについて、時事通信は「米国の拒否権行使は、イスラエルのハマス壊滅に向けた地上作戦を容認する余地を残した」ものと報道した。

2面には、この記事の横に、『ホロコースト重ね 報復の世論 引けないイスラエル』がのっている。

<(今回のハマスの攻撃が)第2次世界大戦中のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)とも重ねられ、市民の間では徹底的な報復を望む声が強い。

ハマスの計画を察知できずネタニヤフ政権への国民の反発は激しい。いまの政権に、攻撃の手を緩める選択肢は、ほぼない。>

ハマスの攻撃をホロコーストと重ねるのは、ことの性質が異なり、無理である。自分たちより弱いはずのハマスがイスラエル領内に侵入でき、大量に人を殺せたことに、現在、イスラエル国民はパニックになっているだけと私は考える。ハマスの計画を事前に察知できず、また、国境警備も巨大な壁も役に立たなかったという現実を直視し、武力でパレスチナ難民を抑えこんできたリクード党の軍事路線をイスラエル国民は再検討すべきであろう。

11面にもっと注目すべき記事、欧米にイスラエル国を非難するデモが広がっているとの記事がのっている。とくに、記事『米議会内で停戦デモ ユダヤ系団体 300人逮捕』に私は注目する。

この記事は、18日、ユダヤ系団体が連邦議会議事堂前でイスラエルとハマスの停戦を訴えるデモを呼びかけ、その一部が議事堂内に通常の保安検査を受けて入館し、議事堂内に座り込んだ抗議者を300人以上逮捕したというものである。しかし、朝日新聞の記事では、デモの参加者がどの程度かわからない。

ニューズウィーク日本語版によると、ユダヤ系の平和活動団体「平和へのユダヤ人の声」が、停戦を求めて、「アメリカ在住のユダヤ人数百人が現在、議会で座り込みを行っている。米連邦議会がガザ地区での停戦を呼びかけるまで続けるつもりだ。議会建物の外では数千人、中では350人を超えるユダヤ人が抗議を行っている。この中には24人のユダヤ教指導者も含まれ、祈りを込めて抗議活動を行っている」と公表したという。

イスラエルの地上軍のガザ侵攻を容認するバイデン政権への非難が、アメリカ国内のユダヤ人にも広がっている様子がうかがえる。

きょうの朝日新聞11面に、これを補足する記事『米政権苦しい同時支援 掲げる「大義」国内外冷ややか』がのっていた。とくに注目すべき箇所はつぎである。

<バイデン氏の民主党内では、左派を中心に一部で懐疑的な意見があり、現職の米国務省幹部が支援に反発して辞職したことも明らかになった。>

イスラエルの地上軍のガザ侵攻を止めようとするアメリカのユダヤ系団体、民主党左派、米国務省幹部の存在に、私は平和への希望を見いだす。


イスラエル国とパレスチナ人の軍事衝突は宗教戦争ではなく土地の争奪戦だ

2023-10-21 01:27:41 | ガザ戦争・パレスチナ問題

きのうから、図書館から鶴見太郎の『イスラエルの起源 ロシア・ユダヤ人が作った国』(講談社選書メチエ)を借りて読む。この本は2020年11月10日に発行の書で、今回のハマスのイスラエル攻撃に対する徹底した報復の、約3年前に出版されたものである。

私には、イスラエル国がなぜパレスチナ人を軍事力で追い払って建設されたのかが、長らく謎であった。

第1次世界大戦以前は、パレスチナの地はトルコ帝国の一部であって、イスラム教徒(ムスリム)、キリスト教徒、ユダヤ教徒が争わずに住んでいた。第1次世界大戦後、敗戦国のトルコ帝国は解体され、パレスチナはイギリスの統治下にはいった。第2次世界大戦後の植民地解放の流れのなかで、当然、パレスチナの地のイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒が共同で戦線を組んで、パレスチナ独立国を作ることができたはずである。それなのに、1948年に、ユダヤ人が、なぜ、パレスチナの地にユダヤ人の国家を武力で建設し、パレスチナ難民や周りの国々と戦い続けたのか、と疑問である私は疑問に思っていた。

鶴見も、また、「ホロコーストを体験したユダヤ人がなぜイスラム教徒を武力攻撃するのか」という疑問に答えるために、本書を書き上げたと述べている。

彼によれば、まず、抑えておくポイントの1つは、ユダヤ人とユダヤ教徒とは異なるということである。

ユダヤ教徒とは、シナゴーグで日に3回祈りを捧げ、タルムードの規定する生活様式を守る人々である。ユダヤ人とは、自らをユダヤ人と考えるか、他からユダヤ人と見なされる人びとのことである。近代にはいり、ユダヤ人は必ずしもユダヤ教徒ではなくなった。ユダヤ人は、それぞれ、非常に多様な思想をもって、多様な生活を送るようになった。しかし、彼らの内面は、歴史からくるユダヤ人としての側面と生まれ育った国の文化からくる側面とが複雑に入り混じっており、並存型、融合型、不協和音型、矛盾型、相補型に分けられるという。

第2のポイントは、ユダヤ人すべてが、パレスチナの地に国家を建設しようとしたわけでないということだ。じっさい、現在、イスラエル国のユダヤ人とほぼ同じ数のユダヤ人がアメリカに住んでいる。

鶴見は、イスラエル国建設は、ロシア・東欧を発祥の地とするシオニスト運動によるものだという。このロシアとは、現在のリトニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァのことで、かって500万人のユダヤ人がいた。

けっして、イスラエル国は、ホロコーストを体験したユダヤ人が建設した国ではない。イスラエルの歴代の首相は、ロシアからの入植者か、その子孫である。

第3のポイントはシオニストにもいろいろあるということだ。軍事訓練を行っていた武闘派のシオニストが中心になってイスラエル国は建設された。鶴見は、モノの考え方の根底に、「敵か味方か」の2者択一があると、軍事的な防衛と敵のせん滅に走りやすい、と言う。

これは、現在の自民党右派にも当てはまると思う。

私もリアリストとのところがあり、各集団は自己の利益を最大にするために戦っていると考えがちだ。しかし、軍事的な戦いは非常な労力と人的犠牲をもたらす。軍事的な戦いよりも共存のためのコストのほうが安い。軍備にお金を掛けることに反対する。

とりあえず まとめると、鶴見の『イスラエルの起源』は、従来のユダヤ人の古代史やヘブライ語聖書やタルムードにもとづいたユダヤ人論ではなく、現代史と国際関係論にもとづいたユダヤ人論になっており、現在のイスラエル紛争を理解するに最適の書と思う。