猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

イスラエル国民も日本国民も「自虐史観」教育が必要

2024-05-11 22:19:58 | ガザ戦争・パレスチナ問題

けさ怖い夢を何十年かぶりに私は見た。昨日まで気を許していた近所の住民までが、政府に追従し迫害者側にまわり、必死で逃げる夢である。ナチス・ドイツの時代にユダヤ人の身に起きたことはそういうことだった。

ドイツで激しいユダヤ人迫害が起きたのは14世紀15世紀のころのことである。多くのユダヤ人が東ヨーロッパに逃げ、ユダヤ人共同体はドイツで一度消滅した。東ヨーロッパのユダヤ人が話すイディッシュ語は、そのとき持ち込んだ中世末期のドイツ語である。

1900年のはじめ、ドイツのユダヤ人は、まだ少数であったが、ドイツ社会に十分に同化し、社会的にも重要な役割を果たしていた。良き国民であったのだ。1914年に始まった第1次世界大戦では、ドイツのユダヤ人はドイツを祖国として戦争に参加した。戦後、ナチスが反ユダヤ人感情を煽り、1933年に政権を握ると、反ユダヤ主義と反社会主義の嵐がドイツに吹き荒れた。さらに、1939年にナチス・ドイツが、東ヨーロッパに侵攻し、大量のユダヤ人を抱えて、単なる迫害・追放でおさまらず、ユダヤ人をジェノサイド(計画的大量殺害)し出した。

確かに、この裏切られたユダヤ人の酷い体験が、自分たち以外はすべて敵であるという集団妄想をユダヤ人のなかに生んだことを、私は充分に理解できる。しかし、それが、パレスチナ人を大量虐殺して良い理由とはならない。いま、イスラエル国はジェノサイドの罪で国際的に訴えられている。

5月8日の朝日新聞『(オピニオン&フォラム)ガザ危機が問うもの 下』で、元イスラエル諜報機関トップのアミ・アヤロンがインタビューを受けている。彼の主張は、イスラエルのネタニヤフ政権が行ったガザ軍事侵攻は誤りとするものである。

彼は、イスラエルという国家の存在を認めないテロ組織とは戦うしかないが、ガザでは「テロリストの全員が制服を着ているわけではないので、戦闘員と民間人の区別がつきにくい」「ガザの人口密集地にイスラエル軍を引き込み、市民を殺害させることで、世界の反イスラエル世論の機運を高める(ハマスの)戦い方です」「特に急進的な宗教な考え方に基づくようなテロ組織は決し降伏しません」「『なぜ彼らが戦うのか』を理解しなければ、勝つための戦略を立てられない」と言う。

これには、私はちょっと違和感を覚える。彼は、ハマスに「勝つ」ことを目的としたまま、「戦闘員と民間人の区別がつきにくい」ガザ戦争を戦術として否定し、パレスチナ人を理解した上で、テロ組織と戦うことを主張している。聞きようによっては、彼は、狡猾な侵略者になれといっているようにも思えてしまう。

いっぽう、彼は、イスラエルの戦時内閣には「ハマス壊滅」という軍事目標だけで政治的な目標がなく、「戦争が政治の手段ではなく、目的となっている」「イスラエル人の多くは、パレスチナ人がイスラエルによる占領からの自由のために戦っていることを理解していない」と批判する。このあたりから、彼は少しまともなことを言い出している。

1993年のオスロ合意で、アラファトの解放戦線がイスラエルの軍事路線に降伏してしまった後、ムスリム(イスラム教徒)の素手による占領抵抗運動からハマスが生まれたのである。彼が「今回の戦争を経てハマスは弱体化するでしょう。しかし、そのイデオロギーを戦場で消し去ることはできない」と言うのは、この記憶が彼にあるからであろう。

彼は言う。「パレスチナ人に希望を与えるしかありません」「我々がすべきは軍事行動をやめ、軍事能力を放棄せずに交渉を始めることです」「ヨルダンから地中海までの間には1400万人以上の人々が暮らしています。700万人のユダヤ人と、700万人以上のパレスチナ人です」「パレスチナ人国家の樹立は、イスラエルの安全とアイデンティーの前提条件だ」

非常に現実的な提案だが、シオニズム運動家が1948年にパレスチナ人の土地を軍事力で奪ってイスラエル国を建設したことに対する反省と謝罪が、彼の言にない。この事実をイスラエル国の若い世代に伝えていかないかぎり、世界をゼロサムゲームだとして、パレスチナ人をジェノサイドする政権がつづき、本当に、イスラエルは世界を敵にまわしてしまうだろう。「自虐史観」こそがイスラエルにも日本にも必要なのである。


イスラエル政府に抗議する学生の活動は反ユダヤ主義か

2024-05-03 02:02:58 | ガザ戦争・パレスチナ問題

けさ、病院の待合室にいたら、アメリカの大学で、イスラエル政府が一方的にガザ住民を殺したり虐待するのに抗議して、テントを構内に張って座り込みを続ける学生たちを、州政府が警官を動員して逮捕や強制排除するさまを、NHKがテレビで流していた。50年以上前のアメリカでのベトナム戦争反対の学生の抗議活動を私は思い出した。

新聞を見ると、反ユダヤ主義活動であるから、大学側が警官出動を要請したのだと言う。イスラエル政府に抗議する学生たちの活動が、どうして反ユダヤ主義で、どうして学生たちを強制排除するのか、私には納得がいかない。大学側は、座り込みを続ける学生を退学処分にしたから、座り込みを続ける学生は構内にいる資格がない、不法侵入を続けているので強制排除を要請した、と言う。

反ユダヤ主義とは、ハンナ・アーレントによれば、単なるユダヤ人に対する偏見や嫌悪や差別ではなく、民族主義や帝国主義と関連したユダヤ民族排除あるいはせん滅の政治イデオロギーである。ガザでのイスラエル政府の残虐行為への抗議活動を、反ユダヤ主義と決めつけることは、論理の飛躍で、アメリカの支配層がイスラエル政府に肩入れしていることになる。

昨年の10月7日にイスラエルがハマスから奇襲攻撃を受け、すぐさま、イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフが「私は予備役の大規模な動員と、敵がかつて経験したこともないような威力と規模の報復戦争を命令した」と言って、「ハマス壊滅」を戦争の目標に置いた。

ヘブライ語聖書(旧約聖書)の創世記4章24節に「カインのための復讐が七倍なら/レメクのためには七十七倍」とある。レメクの子孫の国イスラエルは報復は77倍の報復となる。ハマスの奇襲攻撃で約1,400人のイスラエル人が死んだとされるから、ガザの住民を107,800人殺すことになる。

じっさい、「ハマス壊滅」となると、ハマスとガザ住民との区別がつかないから、10万人ではすまなくなり、ガザの住民全員(約238万人)を殺すことになるだろう。イスラエル政府が非難するナチス・ドイツと同じ道をイスラエル政府が歩んでいることになる。

イスラエル政府の誤りは、ネタニヤフ政権に始まったことではない。ポーランドやウクライナのユダヤ人たちが中東のパレスチナの地に、「神の約束した地」として、19世紀末から移住を始め、1948年に武力でイスラエルを建国したことに発端がある。それ以降、アメリカ・イギリスの中東政策にも協力する形で、周囲の国に戦争を仕掛け、占領地を広げてきた。

これはユダヤ人にとって新たな不幸な歴史の誤りの始まりである。イスラエルを建国したシオニストの誤りは、世界には秩序がない、自分たち以外はすべて敵である、力こそが正義である、という信念にある。これはナチスと同じイデオロギーではないだろうか。

昨年の12月以降、イスラエル政府の方針に反対するユダヤ系アメリカ人が出てきて、私はホッとしていたのだが、今回の大学での学生の強制排除と、反ユダヤ主義とのレッテル貼りは、事態の解決をむずかしくし、ユダヤ人に対する感情的な偏見や嫌悪をアメリカの地に根付かせる危険がある。とても残念なことだ。

ところで、2日前から続いてる血尿は、病院で診察を受けたが、処置があったわけではなく、いまも続いている。


帝国主義とは何か、ハンナ・アーレント

2024-01-05 12:40:27 | ガザ戦争・パレスチナ問題

ハンナ・アーレントは、近代の「帝国主義」の特異性を『全体主義の起源』(みすず書房)で与えている。古代の「帝国主義は」は異民族の征服が目的だったのに対し、近代の「帝国主義」は過剰資本の輸出が目的だったと言う。

彼女は言う。

「帝国主義時代とは通常1884年から1914年にいたる30年間を指しており、それは、”scramble for Africa”(アフリカ争奪戦)と汎民族運動の誕生とをもって終わる19世紀と、第1次世界大戦を始まる20世紀とを分かつ時代である。」

純経済的理由で始まったが、帝国主義国家群の競争が世界大戦に行き着いたと言う。

そして、帝国主義国間の戦争は、大量の失業者、難民、無国籍者を生んだ。その世界の不安定化が、第2次世界大戦後まだ続いていると言う。

じっさい、ユーゴスラヴィアの解体に伴う戦争、ソビエト解体に伴う戦争、イスラエル・パレスチナ戦争が起きている。

アメリカは、第2次世界大戦後も帝国主義国として、軍事力に守られて過剰資本を世界に輸出しており、近年急激に経済成長した中国を、市場としてでなく、競争相手すなわち敵国としてののしっている。

残念ながら、第1次世界大戦による世界史のねじれは、アーレントが死んだ今も、回復していない。


戦争は儲からない、人が死ぬだけだ

2024-01-04 00:25:57 | ガザ戦争・パレスチナ問題

年始に、私の郷里の石川県は能登半島地震ですでに73人が死んでいる。倒壊家屋からの救助が進んでいないから、死者の数は100人に達するかもと思う。

いっぽう、世界では、いま、戦争でもっと人が死んでいっている。

イスラエル・ガザ戦争では、イスラエルがガザのパレスチナ人を一方的に殺している。去年の10月7日からイスラエルがガザ住民を2万2千人殺している。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、開始の2022年2月24日以来、ウクライナ軍の死者が3万人を、民間人の死者が2万人を超えたと推定されている。ロシア軍の死者の数は12万人と推定されている。

なぜ戦争が起きるのか、私には意味がわからない。

おとぎ話『桃太郎の鬼退治』のように、他国を征伐して財宝を奪いとれるわけではない。戦争は儲かるわけではない。

約120年前のことだが、戦争で儲かると思っていたバカな日本人が、日露戦争で勝ったのに、ロシアから賠償金を取れない「弱腰の」日本政府に怒って、暴動を起こした。新聞社や警察署や交番を焼き討ちにした。日比谷焼き討ち事件である。じっさいには、日露戦争で日本は海外から借金をしていて、それを返すのに日本政府はとても苦労した。

他国を占領しても、土地が富を生むのではなく、富を生むのは人間である。天草四郎で有名な島原の農民反乱では、江戸幕府は島原の農民3万7千人を殺して反乱を鎮圧した。その結果、富を生む農民がいなくなり、江戸幕府は、全国に農民の移住を呼び掛ける事態になった。

戦争をするためには、国は借金をしてまで軍備を整える必要があるのか。戦争をすれば人が死ぬ。経済は人の労働によって支えられている。

イスラエル軍も、この2か月、予備役36万人を動員している。国内の生産活動に影響を及ぼしている。アメリカ政府の援助、世界に散らばっているユダヤ人の寄付で、かろうじて戦争を維持している。世界世論に逆らっていつまで戦争を継続できるか、疑わしい。

戦争は儲からない。人が死ぬだけだ。国は貧乏になる。

それなのに、日本には戦争の準備をしようというバカがいまだにいる。おとぎ話「桃太郎の鬼退治」を信じているのか。借金をして軍備を2倍にする必要があるのか。

[追記]

1月5日12時現在、能登半島地震の死者は84人、行方不明者は247人になった。(NHKニュース)

[追記]

1月6日6時現在、能登半島地震の死者数を100人、住民基本台帳にもとづいて安否確認の取れてない氏名211人を石川県が発表した。(NHKニュース)

[追記]

1月8日現在、能登半島地震の死者数を168人、住民基本台帳にもとづいて安否確認の取れてない323人の氏名を石川県が発表した。(NHKニュース)

[追記]

1月17日現在、能登半島地震の死者数を232人、住民基本台帳にもとづいて安否確認の取れてない21人の氏名を石川県が発表した。(NHKニュース)


イスラエル・ガザ戦争の宇野重規の論壇時評

2023-12-24 23:07:42 | ガザ戦争・パレスチナ問題

10月7日にハマスによる攻撃でイスラエル側の1400人が殺された。その報復とハマス壊滅に、12月23日までに、イスラエル軍はガザ侵攻でパレスチナ人を一方的に2万人殺した。

イスラエルは、病院だけでなく、ガザのほとんどの建物を爆撃した。ガザは瓦礫と化した。また、イスラエルはガザを封鎖しており、食料攻め、燃料攻めを行っている。エジプトは、ガザと接しているが、ガザからの難民を拒否している。ガザ住民には逃げ場がない。

ガザのパレスチナ人は、爆撃による直接的な死だけだけでなく、飢えや医療が受けられないなどで、大人も子供も老人も女も男も死んでいくだろう。10万人は間接的に殺されるだろう。

イスラエル政府は、ハマスの幹部がまだガザで生きていることを理由に、この一方的攻撃を継続している。アメリカ政府は、イスラエル政府に、武器や弾薬を提供し、攻撃を支持している。

イスラエル・ガザ戦争は、明らかに非対称な戦争である。

「政治学者」の宇野重規は、この戦争について11月30日の論壇時評で『暴力絶つため歴史に向き合う』を書いている。彼は、非常に控え目に書いているので、彼の真意が日本の人々に伝わらないのでは、と私は危惧する。

彼の言葉、「わたしたちは、地域の複雑な歴史を理解し、人々が暴力から解放されるために、自らがなすべきことを考え続けなければならない」が、私にむなしく響く。

時評を読むと、報道人と異なったイスラエル・ガザ戦争が、論壇で展開されているようだ。

「(公研11号で池田ら3氏は)『組織であると同時にイデオロギーである』ハマスが、イスラエルという国家の存在を認めない以上、和平が困難であることを強調する。」

しかし、ハマスを壊滅しないと、イスラエルが生き残れないとするネタニヤフ政権もイデオロギーではないのか。2004年以降、ハマスの幹部をイスラエルは暗殺している。

宇野は「反ユダヤ主義」と非難されることを恐れ、何か大事なことを読者に伝えていないように思える。

イスラエル首相のネタニヤフは、今回の戦争で、「西欧の民主主義の国イスラエルか、イスラム法のハマスか」と語ったが、ここに問題がある。現在のイスラエルを建国したシオニストは、自分たちを西欧の一部と考え、アラブ人やスラブ人を劣等民族と見なし、彼らの人権を無視する。

(補遺)「西洋」ではなく「西欧」とは言っていないことに注意して欲しい。「西欧」とはイギリスとフランスのことで、イスラエルは中欧のドイツをいまだに許していない。

「反ユダヤ主義」は英語でanti-semitismという。それは、セム語系を話す民族に対する偏見と差別のイデオロギーのことを指す言葉である。セム語系民族とは、ユダヤ人だけでなく、アラブ人やイラク人などを含む。西欧の偏見と差別に闘うという観点からは、パレスチナ人はユダヤ人の同胞である。なのに、シオニストはパレスチナ人を野蛮人かのようにいう。

また、宇野は「イラン現代政治の中西久枝は、問題はより複雑だという」「経済制裁に苦しむイランにとって、米国との対立を浮き彫りにしたハマスによる攻撃は『タイミングの悪いもの』であった」と簡単に述べるが、パレスチナとイスラエルを囲む中東諸国の政治状況について、もっと言及すべきだと思う。

現在、「イラン革命」や「アラブの春」はもはや幻想である。周囲の中東の国々は、イラクを含め、国内に政治不安を抱えている。政府は国民に信頼されているわけではない。アラブ諸国の多くは国民を抑え込むためにイスラエルの技術的支援を受けていると高橋和夫はいう。これが「アラブ諸国の一部とイスラエルが国交を正常化したが、パレスチナ問題の解決が置き去り」の実態である。