猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

超円安「新興国化」する日本、朝日新聞多事奏論

2024-04-21 21:46:51 | 経済と政治

きのうの朝日新聞《多事奏論》で、編集委員の原真人は「(超円安は)物価高に拍車をかける『悪いニュース』だ」と書いている。

良いニュースか悪いニュースかは、その人の立場によって異なる。私のような年金生活者にとっては物価高は悪いニュースである。退職金を年金にまわしたが、その年金は月額固定方式だから、実質的収入は60%ぐらいになった。

日本の財務官僚は、超円安は願ってもないインフレの契機だから、ホクホクだと思う。国債の返還が楽になる。あとは、日本企業を潰さないことに神経を集中すればよいと考えているのだろう。

税制を変えずに、物価高になって賃金が上がれば、税収が増える。じっさい、昨年度はインフレのおかげで予測より税収が増えた。ただ、岸田政権は税収増を借金を返すのではなく、税収増を選挙対策のバラマキに使おうとしている。それだけでなく、大企業向けの減税を行っている。

いまは明白な汚職は政権レベルでは行わなわれなくなったが、財政支出や企業向け減税と引き換えに、自民党は企業に寄付金を求めている。これが政治資金パーティ券問題の本質である。

原真人は、日本の為替相場が投資ファンドの投機対象になっていると、指摘している。経済が弱体化したとき、投資ファンドに簡単に左右されやすくなる。物やサービスの輸出入の収支は赤字が続いている。しかも、米国の政権は、円安に協調介入するには、弱すぎる。米国の大統領選挙が終わるまでは、この混乱がつづくだろう。

株もファンドの投機対象になっており、乱高下している。経産官僚や財務官僚は、健全な企業の育成をどう考えているのだろうか。

先日、朝日新聞は、政権が大企業に大幅な減税を行っているが、どの企業がどれだけ減税の恩恵を受けているかを公表していないと1面で報じていた。自民党のでたらめによって、国策を誤らないために、経産官僚や財務官僚は、事実は事実としてデータを公開すべきではないか。

自民党とともに心中することがないよう、政治にもっと関心を持ち、政治に参加すべきだと考える。


賃上げ今後も続く? デフレ脱却? 景気の好循環?

2024-04-18 23:18:20 | 経済と政治

(John Maynard Keynes)

経済は、人間の欲望と関係するから、本当のことを言わない議論が多くて、わかりにくいったら、ありゃしない。たとえば、岸田政権や日銀が言う「景気の好循環」がそれである。

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きょう、古新聞を整理していて、3週間前の朝日新聞の『《耕論》賃上げ 今後も続く?』の小峰隆夫の議論に違和感を感じた。

「労働組合が賃上げ求め、経済界も社会的責務だと言い、政府も旗を振っていて国民運動のようになっています」「全員が同じことを言っているときは何かおかしいと考えるべきです」

確かにここまでは一理ある。しかし、小峰はつぎのように言う。

「政府と日本銀行がやろうとしているのは物価が下がり続けるデフレからの脱却です」

デフレとは何かの説明を政府や日銀から聞いたことがない。また、なぜデフレから脱却すべきかを聞いたことがない。

デフレは単に物価下がることではない。一般の人が物やサービスを買うだけの充分なお金を持っていないことである。そのため、売り手は、買い手が買える値段にするため、質の悪いか量の減らしたものを売るのである。したがって、一般の人が貧困化しているということである。これを不景気と言う。

だから、多くの人が貧困化するのを止めることが、政府に求められる。とは言っても、「デフレ脱却」は「物価を上げる」ことではない。それなのに、安倍政権は「インフレ率2%」を目標として「異次元の金融緩和」を行った。

貧困化対策であるべきものが、なぜ、コントロールされたインフレ政策になるのか。これは、自民党政権と財務官僚が過去積み上げてきた政府の借金を、減らすためにインフレ政策をとろうとしているからである。

政府の借金を減らすなら、少なくとも新たな借金をしないことである。巨額の国債を毎年新たに発行しないことである。バラマキをしないことである。

ジョン・メイナード・ケインズは不景気からの脱出に財政出動を提案したが、自民党政権の行なう財政出動は、選挙で自民党に投票する層に儲けさすための財政出動である。特定の層にお金が行くから、いつまでたっても財政出動が、多くの人の貧困化を止められない。

また「異次元の金融緩和」が貧困化を止めることができるという保証もない。企業経営者を甘やかしているだけである。じっさい、アベノミクスは、政府の借金を増やしつづけたが、デフレを止められず、日本社会に、人々の経済格差を広げた。

小峰は「大規模な金融緩和を続けてもさほど上がらなかった物価上昇率は、ウクライナ危機による石油価格の値上がりを受けて、あっという間に2%を超えました」と言う。

本当に「ウクライナ危機」が物価上昇の主要因だろうか。「円安」が主要因ではないか。

円安は国際的な投資グループによる投機の結果である。日本が投機の対象になったのは、日本と欧米との金利差と、実際に日本の企業が物やサービスの輸出において国際的競争力を失い、国際収支で赤字を続けているからである。

日本の企業はどうして国際的競争力を失ったのか。自民党政権は日本の企業経営者を甘やかしたため、パーティ券の購入など、自民党を支えることに目がいって、企業が競争力をもつことへの努力を怠ったからである。国外にサプライチェインを求め、国内に雇用を求めなかったからでもある。現場でのものづくりをしないと、技術革新なんて生まれない。

小峰はつぎのように言う。

「賃金と物価が上がれば実質賃は上がらず、国民生活が良くなるわけではありません」「賃金を上げたからといって好循環が実現するとは限りません」

ここは同意できる。しかし、つぎの主張には注意がいる。

「労使が協調して賃金だけ上がっても、生産性が上がらなければ経済は成長しません」

この「生産性」とは何かが問題となる。技術革新で生産性が上がるのは、時代の産物である。だから、どこでも生産性が上がり、結局、賃上げにつながらない。賃上げは、企業の分配の問題である。企業の収益は、株主のものか、経営者のものか、管理層のものか、労働者のものか、という分配の問題である。「労使が協調して賃金が上がる」というほどの簡単な問題ではない。賃金をコストとして計算する現在のミクロ経済学にそもそも誤りがある。

小峰の「賃上げは物価上昇率と企業収益、労働需給の3点決まる」もおかしな論理である。

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安河内賢弘のほうが、本当のことを言っていると思う。

「(労組は)雇用維持などのために賃下げや非正規労働者の拡大を受け容れ、最終的にはリストラも認めたこともあった。果たして雇用が守れたのかという点は、反省する必要があります」「(労組が)緊張感ある労使関係をつくり、自負と責任をもって運動を強化することが大切です」

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経済は人間の活動であるから、人間の欲望の衝突を排除できない。本当のことをいって、議論しなければ、解決策を見つけられない。

岸田文雄の言う、物価上昇と賃金上げとその価格転嫁という「好循環」は、急激な「物価上昇」による国民の自民党離れを恐れての、新たなウソにすぎない。岸田政権も、政府の借金を減らすために、あくまで、インフレを望んでいる。2%が公平なインフレ率であるかの本音ベースの議論が必要である。国際的投機から、どのようにして日本経済を守るのかの真面目な議論が必要である。

ナチスが台頭するまでの20世紀のドイツの歴史を追うと、結局、SPD(ドイツ社会民主党)の労使協調路線が国民の潜在的不満をため込み、世界的不況を契機に、1930年からの急激なナチスの台頭を招いたとも解釈できる。1928年の選挙では、ナチ党は、全投票数のうち、わずか2.6%しか得ることができなかった。それが1932年に37.3%を得て、ナチ党は議会の第1政党になった。


貧困化は自分のせいか、社会がおかしいのか

2024-03-25 21:38:12 | 経済と政治

先週の金曜日の朝日新聞に関心を引く記事が2つあった。1つは雨宮処凛の新刊についてのインタビューであった。もう1つは『(耕論)評価と生きる』であった。

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雨宮処凛が新刊『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)の執筆のきっかけに答えている。最近まで中間層だった人が貧困化しているケースによく出合ったからと言う。最近まで中間層だった人は、貧困から自分の身を守る「サバイバルの知識」に欠けていると言う。

雨宮は言う。

「収入が生活保護基準をわずかに上回る人たちを支える制度がほぼありません」

「生活保護を勧めると強い抵抗を示される傾向がありました」

「生活保護が恥ずかしいという意識があるのではないでしょうか」

「政治家まで加わった『生活保護バッシング』が起きたことも影響しています」

「生活保護だけでなく、近年、公的に守られているとされるものが攻撃されてきました」

私は、立憲民主党の「中間層を増やす」という方針より、「貧困層をなくす」という理念を支持している。しかし、中間層から貧困層に落ちる人がたくさんいるというのも問題である。さらに、貧困化する人たちが自分が競争社会に負けたからとの考えに囚われるのはもっと問題である。他人に優しくできないからだ。

雨宮は、もともとの貧困層には互いに情報を共有し助け合うことを知っていると言う。

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『(耕論)評価と生きる』は、自分の仕事の評価を絶えず受けながら働くことの問題を取り上げている。石井てる美は、「世界広い、ここの評価だけを気になやむな」と言う。熊沢誠は、会社の評価が「社員の生活の明暗を大きく左右する」という現実を指摘し、「仲間同士の競争が強まり、労働者はバラバラになる」と言う。藤野寛は評価を気にするのは「承認欲求」で人間の性(さが)だと言う。

私は老人の熊沢に近い意見である。子どもたちが親の姿を見て、働くことが苦痛であると思っているのに、最近、私は困惑している。そういう子どもたちに、働くことは仲間を得ることだとNPOで話している。

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雨宮の問題意識は熊沢の考えに通じている。中間層が競争社会を絶対的なものと考え、貧困は競争社会に負けたからと考えるのは異常である。第1次世界大戦後のドイツに類似している日本の状況を私は憂いる。


これから喜劇とでるか悲劇とでるか 日経平均株価の4万円超え

2024-03-05 20:43:53 | 経済と政治

実感のない史上最高の「日経平均株価」が、きのう3月4日に、ついに4万円を超えた。手数料ビジネスをする株の仲介業、証券会社はホクホクで、社員を集めて くす玉を割るなど 大騒ぎをしていた。

当日の夜、TBSテレビ『報道1930』は、日経平均株価について、ゲスト志賀俊之(日産元COO)、井出真吾(ニッセイ基礎研究所)、加谷珪一(経済評論家)をまねいて、論じていた。志賀は笑いがとまらないようだったが、エコノミストの井出や加也は、比較的冷静だった。このふたりは、日本がインフレに突入したから株価は上がる、ただ、この間の上がり方が異常であるという意見だった。

日本のメディアでは指摘していないが、日本の外から見た日本株価の動きは、別の景色に見える。為替レートを適用して株価を見れば、すなわちドルでみれば、3月4日の株価は、史上最高ではない。

日経平均株価は、安倍政権は政府系ファンドや日銀を通して株価操作をしていて2018年から200ドル前後で推移していた。安倍晋三が首相をやめる前の2020年3月19日に152ドルに暴落した。このときの為替レートは1ドル105円である。

安倍が辞意を表明した夏ごろからドルでの株価が回復し、菅義偉首相のもとで、2021年2月16日に最高のドル建て株価289ドルを迎える。その年の9月に菅は退陣に追い込まれ、岸田文雄が自民党総裁になった。このころから株価はふたたび下がりはじめ、翌年の9月末から10月の前半は180ドル前後を推移した。このころは1ドル145円前後である。株価の底である。

去年2023年にはいって、日経平均株価は200ドルに回復し、10月ころから急速に上がりはじめ、今年2月26日に261ドルになった。きのうは260ドルである。1ドル150円である。

報道1930の番組としては、3月4日までの異常な株価上昇は、オイルマネーが日本株市場に参入したからというのがメッセージである。昨年1月末から今年の1月までの海外からの買い越しは、アジアから0.2兆円、北米から0.8兆円、ヨーロッパから4.4兆円で、ヨーロッパの買いは中東の政府系ファンドが大半を占めるということであった。

しかし、私は、ゲスト加谷のコメント、日本株の売り買いの市場が縮小していて、外的要因に過度の影響を受けているが、正しい現状認識と考える。政府の思惑を越えて株価が動く時代にはいったのだ。

株価の高騰は岸田政権の掲げる資産倍増計画、新NISAの結果ではないのだ。ニッセイ基礎研究所の金明中は、「新NISAに投資された金額の約8割が海外株式に投資されており、国内株式への影響はそれほど大きくない」(2024年02月29日)と言う。

株価は、日本経済の期待で決まるのではなく、株売買のゲームに参加する多数派の投機家の心理の推測で決まる。ポーカーゲームと同じだ。これを岩井克人は『21世紀の資本主義論』(ちくま学芸文庫)のなかで、「ケインズの美人コンテスト」と呼ぶ。

いま、手数料ビジネスの仲介業は、株価の乱高下のとき売り買いが増えるので、ホクホクである。しかし、株売買のゲームに熟知していない若者や主婦や老人が、株価高騰の後追いの形で参加することは、哀れと言うしかない。

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インボイス制度で税の仕組みがさらに複雑化する

2023-10-02 11:55:08 | 経済と政治

税が弱者を救うための再分配だとすれば、税を払うことに納得感が湧いてくる。しかし、他国と競うための軍事力強化のためとか、企業の失敗の尻ぬぐいのためとか、聞くと税を払いたくなる。

ずいぶん昔に、税を払いたくないとの理由で、多額な税を上乗せられたタバコとか、酒とかをやめた。お金の余裕も出てくるし、時間の余裕も出てくる。

いま、インボイス制度で、私の近辺でも騒いでいる。そもそもインボイス制度というのは私には良くわからない。

税の仕組みが複雑だと、どうしても、不公平だとか、損をしたくないとかの声が上がってくる。私は簡単な方が良いと思う。

所得税、法人税があるのに、消費税を導入するから、複雑になっている。所得税、法人税は収入や収益に基づいてかかるとするが、事業者の収益がわからないから、消費税を取るのだと、昔、消費税推進者は言っていた。消費税とは取り引きにかかる税金である。しかし、いまや、デジタル化された業種では、キチンと収益が計算できるはずである。

10月1日に始まったインボイス制度がよくわからない。付加価値に税金を掛けるという。付加価値がわかるために、インボイスが必要だという。

政府は国民総生産(GDP)を毎年発表しているが、国民総生産は、一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額である。この付加価値をどうやって国は知ることができたのだろう。あてずっぽうな数値だったのだろうか。

付加価値は収入(収益)と同じものだろうか。それなら、事業者は売上引くコストとなる。コストには、被雇用者の賃金、仕入れ値、固定費などがある。

そうであれば、仕入れ値を税金を含んだ金額にすれば、インボイスなどはいらないのではないか。税込みを仕入れ値とすれば、仕入れ値の税率が8%か10%かというのが問題にならないはずである。インボイスは会計業者の売り上げを増やすだけである。

インボイス制度で税収が増えるというのは、本当は免税業者がいて、それを減らす効果を政府が期待しているのだと私は考える。

しかし、インボイス制度で、それにともなう軽減措置が政治家によって色々と導入され、また、税の仕組みが複雑になっていく。

法人税でも、税が安くなるいろいろな制度があるが、政治家が税の抜け穴を作ると票が集まると言う理由で、税制度が複雑化している。

税制度が複雑化することは、不公平感を増す。