猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

イスラエル国は土地を奪ったことをパレスチナ人に謝罪し賠償すべきだ

2023-11-28 00:10:28 | ガザ戦争・パレスチナ問題

Googleマップでパレスチナのガザ地区の航空写真を見ると、難民キャンプとモスクだけでなく、住宅も大学も学校も病院も教会もサッカー場もショッピングモールもスーパーもレストランもある。北部には耕作地や果樹園がある。

ガザ地区の面積は365 km平方で、福岡市の343 km平方より大きく、横浜市の437 km平方より小さい。ガザ地区の人口は238万人で、福岡市の161万人より多く、横浜市の378万人より少ない。人口密度で比べると、ガザ地区は6,508人/ km平方、福岡市は4,695人/ km平方、横浜市は8,630人/ km平方である。

数字をあげたのは、イスラエルがガザ地区を封鎖していなければ、十分に文化的な生活をおくれる広さであることを強調したいからだ。

現実のガザ地区は、陸側が高さ6メートルの分離壁で囲まれ、海側がイスラエル海軍によって封鎖されている。したがって、自由に食料や燃料や水を他の場所から得ることができないし、工業製品の輸出もできない。

ガザ地区もヨルダン川西岸のパレスチナ自治区も、名前だけが自治区で、イスラエル政府と軍は、パレスチナ人を「天井のない檻」に閉じこめて、イスラエル側の判断で空爆をしたり、地上軍を送ったり、艦砲射撃を行ったりして、パレスチナ人の生命と財産を奪っている。

イスラエル政府は封鎖を解いて、パレスチナ自治区のガザ地区が自由に海外と貿易できるようにしないといけない。自治区を武力攻撃してはならない。

パレスチナとイスラエルとはなぜ争うのか。あるいは、イスラエルは、なぜ、そんなにパレスチナ人をいじめるのか。

放送大学名誉教授の高橋和夫は宗教的対立でなく「土地争い」だと言う。1週間前の朝日新聞の『オピニオン&フォーラム』で慶応大学教授の錦田愛子は「土地とアイデンティティ―を巡る争い」と言う。

この「アイデンティティー」とは、パレスチナ人にとって「ナクバ(大災厄)による離散という体験」と錦田は言う。ナクバとは武力によるイスラエル建国のことである。

それでは、イスラエル人のアイデンティティーとは何か。新バビロニアやローマ帝国によってパレスチナの地を追われ、世界に離散したということと、ヨーロッパで少数派の異教徒として迫害を受けたことで受けたことであると、新聞のインタビュー記事から錦田は言っているように読み取れる。

パレスチナのナクバは、75年前のことである。ユダヤ人の離散は2500年以上も前に始まったことだ。それに、立教大学教授長谷川修一の言うように、ヘブライ語聖書は歴史書ではなく、離散したユダヤ民族を束ねるための偽書である。

問題はそれだけでない。ユダヤ人政治哲学者のハンナ・アーレントが『全体主義の起源』の第1部「反ユダヤ主義」で指摘しているように、ヨーロッパで少数派の異教徒として迫害をうけたのではない。宗教的問題ではない。

アーレントは19世紀に始まった反ユダヤ人主義と、それまでのユダヤ人に対する社会的憎悪を区別すべきとする。

ユダヤ人は異質な閉鎖的なコミュニティを作っており、それぞれの地で、権力者に、その地の下層民(大衆)より、優遇されていた。そのことから、社会的憎悪は生じるが、暴動でのユダヤ人商店の略奪程度のことで、反ユダヤ主義のホロコーストのような国家によるユダヤ人抹殺にいたらなかった。

アーレントは反ユダヤ主義はイデオロギーであると言う。私の言葉で言えば、思い込み(信念)である。ユダヤ人を追放あるいは抹殺しなければ、自分たちが生きていけないという思い込みである。ユダヤ人は国際的つながりがあり、お金もあったので、国家権力からみると利用価値があったが、19世紀からしだいに、国家権力がユダヤ人の国際性や貸付を必要としなくなるにつれて、反ユダヤ主義のイデオロギーが政治の場で力を増したとする。

ナチは、第3帝国を建設する(世界を征服する)ための障害となると思い、ドイツに同化したユダヤ人、キリスト教に改宗したユダヤ人まで殺害したのだ。アーレントによれば、ナチが権力を握る以前に、ドイツのユダヤ系銀行は没落していたのにもかかわらずに、ユダヤ人せん滅を主張した。

この「反ユダヤ主義」がイデオロギーであるというアーレントの考察は、現在のイスラエルの「パレスチナ人はテロリスト」「ハマスせん滅」にも言えるのではないか。

武力によるイスラエル建国で、シオニストはパレスチナ人の土地と命を奪った。大日本帝国も、戦前、朝鮮人や中国人を殺して土地を奪った。しかし、日本政府は謝罪して土地を返している。

すでに多数のユダヤ人が東欧からやってきてパレスチナの地に住んでいる。今さら、イスラエル政府が土地を返すといっても、これらのユダヤ人の行くところがない。ならば、少なくとも、イスラエル政府と軍がやってきたことを謝罪し、パレスチナ難民に賠償すべきではないか。そして、イスラエル国は、自治区をパレスチナ国家として承認して、パレスチナ人の恣意的な拘束、殺害をやめ、自由な貿易を認めるべきではないか。

そして、ゆくゆくはイスラエル国とパレスチナ国は一体となり、アイデンティティ―なるつまらぬものは、ともに捨てるべきである。


人質解放のイスラエルとハマスの合意は停戦をもたらすだろうか

2023-11-24 02:50:13 | ガザ戦争・パレスチナ問題

おととい、11月21日から、イスラエルとハマスが人質50人規模の解放の交渉が合意にいたったとの報道がメディアをにぎわしている。

この人質50人の解放の交渉は、イスラエルの地上軍の侵攻前の1カ月前からウォール・ストリート・ジャーナルによって報道されていた。そのときのハマス側の要求はガザ地区への燃料と食料の供給であって、イスラエル側の拒否で交渉はとん挫した。

今回は、4日間の休戦とイスラエル側が拘束している300人(18歳未満の男性暴動参加者とテロ未遂事件の女性関係者)と引き換えに、ハマスが50人規模の人質解放すると報道されている。

交渉はイスラエル国外のカタールで行われてきた。ガザ地区は、イスラエルによって塀の中に閉じこめられ、燃料や食料や水の兵糧ぜめにあっており、昼夜の区別なく、空爆や地上軍に攻撃されている。いまや、どうやって、カタールでの合意がガザ地区のハマスに伝わるのか、私は気になる。

伝えられる報道では「少なくとも50人の人質」となっているから、カタールのハマス代表は、ガザの人質の拘束状況を もはや つかめなくなっているのでは、と私は推測する。ハマス側の相互の連絡は寸断されていると思うからである。

22日の日テレの『深層ニュース』での松村五郎(元陸上自衛隊 東北方面総監)と田中浩一郎(慶応義塾大学教授)のコメントでは、イスラエル側は、次の攻撃のため、人質はどこから出てくるかを監視しているだろうと言う。また、ハマス側も人質をすべて解放したら、自分たちの安全はなくなると思っているだろう、と言う。

イスラエル側は、人質解放妥結後も、内閣も軍もハマスを壊滅させるまで戦争をやめないと宣言している。ハマスの壊滅はハマスの全員を殺すとのことである。ハマス壊滅のためには、ハマス以外の人々が何人死んでもかまわないという立場を崩していない。ガザ地区北部から住民を南部に非難せよ、とイスラエル側が言っておきながら、北部で地上軍が病院を捜索してもハマスの本拠が見つからず、現在、ガザ地区南部の攻撃を始めている。ガザ地区の住民には逃げ場がないのだ。

ハマスは1993年のオスロ合意(暫定自治政府原則の宣言)にもとづくパレスチナ自治区の自由な選挙で勝った政党である。イスラエル側がそれを認めず、ハマスがガザ地区を「実効支配」していると主張する。本当は、ハマスがパレスチナ人を法的に代表しており、ガザ地区の行政をになってきた。イスラエルは2000年に入ってから、パレスチナ自治区と外部を塀で囲むだけでなく、ハマスの幹部を暗殺するようになった。

今回の交渉妥結には、イスラエル国内やアメリカでの反戦の盛り上がりによるものだが、イスラエル政府がハマス壊滅を主張続けているので、停戦までは なかなか いかないであろう、と私は悲観する。今後も、一方的で非人道的な戦争が、イスラエル側によって行われ続けるだろう。

[追記11月24日]

きょうの朝日新聞に、イスラエル側が人質解放の交換条件で釈放したパレスチナ人についての報道に、つぎの記述があった。

<イスラエル側は、パレスチナ人が道路や家を破壊されることに抗議するだけで拘束するケースがあり、今回釈放されたのはそうした理由で捕まった人が多い欧米メディアは報じた。イスラエル警察は釈放される人の家族に「祝わないように」と繰り返し通告した。>

ここでの釈放されたパレスチナ人は、ハマスでもガザ地区のパレスチナ人でもなく、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の住民である。イスラエルの基本法(憲法)では、非ユダヤ人には人権が保障されないのである。ユダヤ人以外は警察国家(刑務所)のなかにいる状態がイスラエル政府のもとで続いている。


ハンナ・アーレントの『悪の陳腐さについて』

2023-11-15 01:33:17 | 思想

2016/10/10(月)のブログから再録

ハンナ・アーレントの『全体主義の起原』(みすず書房)には納得がいかない所が多々ある。どうも、大衆が嫌いという生理的体質が、彼女の論理に影響を与えているのではないか、と思う。

これに対し、同じ著者の『イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』(みすず書房)のほうが、本の字が小さいのにも関わらず、読みやすい。ユダヤ人を強制収容所に輸送した責任者アイヒマンの裁判を通して、ユダヤ人虐殺の本質を、ノンフィクション作家のように淡々と書きしるしたもので、自分の思想の押し売りの部分が少ない。

彼女が描き出したアイヒマンは、やる気が続かなく、頭も悪く、ユーモアもなく、どもることもある、嘘つきの社会的落伍者である。同じく、ヒトラーは、高等教育も受けていず、兵卒長が唯一の職歴で、観客の前で大言壮語できることだけが取り柄の社会的落伍者であった。しかし、ヒトラーが落伍者から総統に成り上がったがゆえに、アイヒマンは、ヒトラーを自分の英雄として尊敬し、ヒトラーから命令を受けることを人生の至上の喜びとする。そのアイヒマンが、ユダヤ人に興味をもちシオニストの著作を読み、ユダヤ人共同体の幹部とも接触していたために、ナチの組織の中で大出世をし、貧しいユダヤ人を、そのユダヤ人幹部の協力を得て、強制収容所に大量輸送する使命を得る。

『全体主義の起原』では、モッブたち(教養がなく下層の乱暴者)とエリートたちが協力して、強圧的全体主義体制を作ったとしている。

『イェルサレムのアイヒマン』では、大衆の中の頭のからっぽの個人に焦点を与える。何のとりえもない人間が、職をえるため、雪崩を打ってナチ党員になり、出世するため、戦争やユダヤ人虐殺に積極的にのめりこんでいくさまを、アイヒマンを通して描き出している。

しかし、ハンナ・アーレントが大衆運動を毛嫌いするのは偏見ではないかと思う。民主主義は、古代ギリシア語ではδημοκρατία(デーモクラティア)で、群衆や下層民を意味するδῆμος(デーモス)を語源とする。したがって、彼女が毛嫌いする大衆が、政治の主体になることが、民主主義である。

ならば、悪意のある者たちに、大衆運動が利用されないよう、日々、努力していくことが大事である。私も大衆(下層民)の一人に過ぎないから、プラトンの「哲人政治」は生理的にまっぴら御免である。


読みづらいハンナ・アーレントの『新版 全体主義の起源』(みすず書房)

2023-11-15 01:12:26 | 思想

2日前から、ハンナ・アーレントの『新版 全体主義の起源』(みすず書房)の第一巻「反ユダヤ主義」を読み始めた。ここで「新版」とは2017年の「新しい訳」と言う意味であって、ハンナ・アーレントは1975年に死んでいる。彼女がもし、この2013年に生きていて、現在のシオニストの国、イスラエルのやっている残虐行為をみたら、何と言うのか、興味がある。

以前、7年前と思うが、読みづらくて本書の読破を断念した。再挑戦である。

今回も読みづらく、困って、ネットで手がかりを探していたら、NHKの『100分de名著』のハンナ・アーレント『全体主義の起源』のときの「プロデューサーAのこぼれ話」が目についた。それによると、彼女は英語が不得意で、雑誌「ニューヨーカ」の特派員としてアイヒマンの裁判の報告書を書くが、このとき、編集長に何度も書き直しを求められたという。これは、彼女が英単語や英文法を知らないと言う問題ではないと、私は思う。すなわち、彼女は、ドイツ語圏の著者特有の、長文で屈折した文章を書く癖があったのではないかと思う。英語圏の人は屈折した表現や長文を好まない。はっきりと簡潔に言うことを好む。

じっさい、『イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』は私にも読みやすかった。

みすず書房の『新版 全体主義の起源』は、初版が英語にもかかわらず、わざわざドイツ語版から翻訳しているのだ。読みづらいのは自分だけではないと覚悟したら、時間がかかるが、意外と楽しく本書が読めるようになった。

気づいたのは、第1章を飛ばして、第2章から読んだ方が読みやすいことだ。いや、第4章、第3章、第2章、第1章の逆順に読んだ方がわかりやすい。ドイツ語圏の著者は自分に酔っていて、論理をわかりやすく構成しない。文体の問題だけでないだ。読み手が著作を再構成して理解する必要がある

それに、みすず書房の訳もおかしい。たとえば、第1章の冒頭の1節に

「全世界のユダヤ人に対する追求、最後にはその絶滅を、単なる口実、および安っぽい宣伝の手口と見なす」という句がある。

ネット上にたまたま、英語版の『全体主義の起源(The Origins of Totalitarianism)』(pdfファイル)が無料であったので比較すると、ここでの「追求」は英語版では「persecution」となっている。「迫害」と訳した方が良い。

また、同じ第1章に「ヨーロッパの国民国家体制が崩壊した時点」は英語版では「when the European system of nation-states and its precarious balance of power crashed」となっている。崩壊したのは、「国民国家間のヨーロッパのシステムと不安定なパワーバランス」であって、国民国家(nation-state)そのものが崩壊したのではない。

そもそも、第1章のタイトルは、日本語訳では、「反ユダヤ主義と常識」となっているが、英語版では「Antisemitism as an Outrage to Common Sense」となっており、まったく意味が違う。第2章以下を合わせて読むと、ハンナ・アーレントはantisemitismにそれなりの要因があったと、ユダヤ人や知識人の警告を与えているのだ。

残念ながら無料のドイツ語版「全体主義の起源(Elemente und Ursprünge totaler Herrschaft)」がネットに上がっていないので、ハンナ・アーレントがドイツ語でどう書いたかは、私は確認できていない。


イスラエル軍のガザ軍事侵攻に関するNHKやBBCの報道姿勢に評価する

2023-11-11 23:13:14 | ガザ戦争・パレスチナ問題

きのうのNHK総合「ニュースウォッチ9」が、日本に住むイスラエル出身者がイスラエルのガザ侵攻に反対していることを紹介した。NHKがこれをみんながテレビを見る時間帯に流したことを高く評価する。

彼は、子どものときからホロコーストの話を聞かされ自分たちユダヤ人が生きのびていくためには敵を殺さなければならない、と教育されていたので、何のこころの抵抗もなく、イスラエル空軍のパイロットとして爆撃に参加していたという。しかし、40年前に結婚して日本に住むようになって、徐々に考えが変わり、2008年にイスラエル軍がガザ地区に大規模な空爆と侵攻作戦を行い、子どもを含む民間人が犠牲になったことをきっかけに、それに耐えられなくなったという。

「多くの子どもを殺すことを、自分たちを守るためには仕方がないと片づけることが耐えられませんでした。私たちの教育がゆがんでいると考えるようになりました。」

「イスラエル国内にいる人たちは戦争やテロへの恐怖で支配されています。今、世界各地で反対の声があがっているが、外の人の発信が大切で、日本からも声をあげてほしい」

彼は、教育の怖さを語っていたと思う。イスラエル政府は自衛の範囲を逸脱し、軍事力の恐怖で非ユダヤ人を支配している。しかし、イスラエル国内にいると、なかなか、それが見えてこない。イスラエル国民は、世界には敵か味方しかいなくて、敵をせん滅しないと自分たちが殺されると思い込んでいる。右翼政権はその妄想を強めるために、教育を利用し、報道を制限している。

幸いにも、NHKに限らず、日本のテレビ局の報道部は、イスラエル政府のガザ軍事侵攻が人道上の限度を超えていることを、ありのままに伝えている。

日本に限らず、イギリスのテレビ、BBCも今回のガザ軍事侵攻で、事実を伝えるという姿勢を守っている。

きょうのBBCでは、ハマスとイスラム過激派とは別物だと解説していた。イスラム過激派は、ハマスがパレスチナ人のための政治を行っていることをナショナリストと批判しており、イスラム法による統治を求めているという。私は、ハマスをせん滅させるというイスラエル政権の姿勢は、イスラム過激派の復活という厄介な歴史のねじれを生むと考える。ハマスを全員を殺すのだ、そのためには、パレスチナ人に何万人の犠牲が出てもかまわないとする、現在のネタニヤフ政権を私は支持できない。ハマスはパレスチナ自治区での最初で最後の自由な選挙で過半数の票を得たのであり、ハマスとの交渉を拒否してきたイスラエル政府に問題がある。