今年の1月30日に関電の高浜原発4号機が、中性子の急減を検知し、自動停止した。2月15日なって、関電は制御棒が少なくとも1本 原発の炉心に落下したとの可能性を発表した。
中性子は核分裂連鎖反応によって出てくるものであり、その急減は炉心の異常で核燃料が燃えにくくなったということだ。制御棒の駆動装置が壊れて、炉心の異常が引き起こされたのだ。この4号機は、去年の10月に再稼働する予定であったが、1次冷却水の加圧機の不具合で冷却水の温度上昇があり、再稼働が12月にずれ込んだ原子炉だ。
なんでも、古くなるとガタがくる。私の住んでるURの集合住宅は30年たち、あちこちに不具合が生じている。配管系、電気系にガタがくる。それで、毎年、点検が行われ、補修が行われる。
高浜原発4号機は1985年に稼働したから、37年経過している。私の住んでいる集合住宅より、古参である。いろいろなところが壊れてくるのは仕方がない。問題は、点検が信頼できるか、補修できるか、ということである。
福島第1原発事故の沸騰水型原子炉(BWR)に比べ、高浜原発の加圧型原子炉(PWR)のほうが安全だと誤解している人がいるが、事実は反対である。沸騰水型原子炉のほうが構造が簡単なので、より壊れにくい。
加圧型原子炉は、発電効率を上げるため、原子炉の水(1次冷却水)を加圧し、水の沸点を300℃以上にあげている。その高温の水で2次冷却水を急激に沸騰させ、蒸気タービンを回して発電する。構造が複雑なのである。
私が若いときは、加圧型原子炉の不具合報告の方が多かった。
関電は、高浜原発3号機、4号機の40年超えの稼働を申請すると去年発表している。ところが、公になったものだけでも、点検で発見されなかった不具合が続いておきている。大丈夫なのか。
加圧式原子炉を開発したアメリカのウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは2017年に経営破綻している。日本の加圧式原子炉の点検、補修は三菱重工が単独で行うしかない。
いっぽう、昨年9月28日に、原子力規制委員会の山中伸介委員長は、就任して2日後、原子炉運転の上限(60年)を撤廃すると言い出した。モノが壊れるのは何年と予測できるものでないから、原子炉稼働の年数制限を撤廃すると言うのだ。現実は、原子炉周辺機器は中性子を浴びるなどして通常より早く壊れている。点検と補修でかろうじて稼働してきたのが実態である。
老朽化に伴う原子炉の壊れが点検できる、補修できるというのが 明らかでなければ、原子炉を稼働させないことが、原子力規制の原則だと私は考える。明らかにできなければ、老朽化した原子炉を年数で廃炉にするほうが合理的であると考える。
それなのに、2月13日に山中委員長は、60年超の原子炉を動かせるとすることを原子力規制委員会で多数決で決定した。5人の委員のうち、4人は原発稼働で利益を受ける組織の出身であり、ただ一人の反対者は日本地質学会会長の石渡明(東北大教授)だった。そんなことで、原子炉の安全性を保証できるのか。多数決の結果は政府による委員の選定で決まることである。
いま、岸田文雄は、原発推進政策をとっている。しかし、原発の安全性を無視し、原子力規制委員会のメンバーを入れ替えてまで、原発を稼働しなければならない理由が、私には見当たらない。パブリックコメントを求めると、その大半が60年超の原発稼働に反対であるという。国民の代表たる国会議員に、岸田の狂信的な原発推進政策を止めることを願う。