あちゃー(ノ∀`)
●中国副首相・黄菊氏、膵臓がん悪化か 香港紙報道(Sankeiweb 2007/05/08/21:07)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070508/chn070508002.htm
香港紙、明報は8日、消息筋の話として、中国の黄菊副首相(68)の病状が悪化、4月末に上海から北京の軍病院幹部病棟に移されたと報じた。中国共産党も、温家宝首相の外遊時に政府の指揮を執る筆頭副首相ポストに、黄氏に代わって呉儀副首相を充てることを決めたという。
黄氏は膵臓(すいぞう)がんを患っているとされ、今年秋の第17回党大会での退任が確実視されている。3月の全国人民代表大会(国会)では、初日の全体会議に出席し、久しぶりに姿を見せた。
頑張れピー。負けるなピー。政治的にも身体も心電図ピー状態、しかも頽勢覆うべくもない上海閥で最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会のメンバー(一応)なんて素晴らしいキャラはいわば不世出。進藤先生(江口洋介飾)お願いですから党大会まで保たせて下さい(昨日たまたま再放送みた)。m(__)m
――――
えーと、コソーリ活動に熱を入れすぎて中3日となってしまいました。申し訳ありません。今回は党大会前の人事をめぐる駆け引きがはからずも表面化してしまった事件、
●新聞総署トップ更迭で超異例の「お前らまず落ち着け」記事。(2007/04/27)
このアフターケアということになります。
この事件は李長春・党中央宣伝部系統と「北京閥」に対する胡錦涛の全面進攻の可能性があるという香港紙の観測を紹介しましたが、香港の著名なチャイナ・ウォッチャーである林和立(ウィリー・ラム)氏がこの「北京閥」なるものについてメスを入れた記事を『蘋果日報』(2007/04/27)が掲載しました。
……て、かなり時間が経ってますけどそこは御容赦あれ。いまフォローしておかないと新展開があったとき話の接ぎ穂に困りますので。
――――
私は香港にいたころこの林和立氏のスピーチに接したことがあります。最初で最後の日系企業に勤務していたころの話ですからもう15年くらい前。日本人クラブか商工会議所か忘れましたけど、月例朝食会みたいなイベントがあって、要するに日系企業のオッサンどもがコーヒーを飲みながらゲストである専門家のスピーチに接して見識を深める、という催しです。
で、林和立氏がゲストの回のときに社長に呼ばれて、
「お前、中国問題好きだろ?行ってこいや」
とチケットをもらって早起きは嫌だなーと思いながら参加しました。ところが印象が薄すぎて林氏の顔もそのとき話した内容も記憶にありません。チナヲチ(素人による中国観察)に熱を入れていた時期だったのと、通訳が恐ろしく下手だったことで、物知らずなオッサン相手のスピーチがよほど退屈な内容だったのだと思います。
この林氏、当時は香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』の名物記者だった筈ですが、その後中国返還を控えて親中路線へとすりよろうとする経営者によって放り出されてしまいました、たぶん。ちょっと騒がれた事件なので記憶違いではないと思います。
いまはフリーのままなのかどこかのシンクタンクに所属しているのかはわかりませんけど、香港有数の敏腕チャナウォッチャーですから仕事には困っていないでしょう。
――――
さて林氏による分析記事。昨年「上海閥」のプリンスである陳良宇・上海市党委書記(当時)をぶった斬ることで「お世継ぎ失脚→上海閥お家断絶濃厚」という致命的な打撃を最大の抵抗勢力に与えた胡錦涛ないし「胡温体制」が、その勢いで次に潰しにかかったのが「北京閥」なのだそうです。
色々な派閥があるものですねえ。何でも「上海閥」に次いで「胡温体制」の言うことをきかない抵抗勢力なのだそうです。
上のエントリーで紹介した『東方日報』の記事には「北京の変」「北京市政界は雪崩現象に」などと書いていましたが、林氏の見立ても同じようです。きっかけはやはり北京市政府でオリンピック関連を仕切っていた劉志華・副市長(当時)をひっくくったこと。これによって例の新聞出版総署のトップ更迭も行われました。
劉志華潰しはきっかけというより「北京閥」に対する胡錦涛の宣戦布告ですね。汚職摘発部門である党中央規律検査委員会を掌握する呉官正・党中央政治局常務委員が同門(清華大学卒)のよしみで支援してくれたのも心強かったことでしょう。
ところが続いて不動産開発汚職に手をつけようとしたところ抵抗勢力による圧力がかかりました。このため一気呵成に大掃除とはいかず、まず今年3月に北京市の警察を仕切る一方、市党規律検査委員会の副書記だった強衛をようやく「昇格人事」(実質的には左遷)によって青海省へとすっ飛ばし、4月には北京市海淀区の周良洛・区長の摘発に成功。
僻地に追放した強衛の後釜には「胡温体制」の申し子で陳良宇退治で功績のあった王安順・上海党政法副書記を据えました。胡錦涛ペースの人事ですね。北京の消息筋はこの王安順が今度は北京で大車輪の活躍ぶりを示し、今秋開催予定の第17回党大会(大型人事や世代交代が行われる)までに北京市の副市長・副書記クラスを整理していくことになる、としています。
――――
ところが、ここで「胡温」の前に大物が立ちふさがります。北京市の闇のボスとされる賈慶林・党中央政治局常務委員です。こいつは福建省との縁が深い経歴を持っています。福建省といえば密輸と汚職の宝庫で、同省に長くかかわっていた者は大なり小なり脛に傷を持つ身といっていいほどです。この点では陳良宇の後任として上海市のトップとなった「太子党」の習近平(上海市党委書記)も似たようなものです。
ともあれこの賈慶林が先代の最高指導者・江沢民の引きもあって北京市の仕切り役となり、「胡温」の言いなりにならず、自分らに都合の悪い事件は全てもみ消してきた模様。
「胡温」にとって難敵ではありますが、陳良宇斬りの勢いで斬り込もうという訳です。ただ賈慶林の背後には江沢民の存在がありますから、摘発シフトはとったものの、党大会の前に波風が立つのも構わずに「胡温」が攻め込むのかはまだ未知数。賈慶林は党大会での引退が確実視されていますから、その影響力が弱まったところで手をづける、ということも考えられるのです。
で、林氏によるとここでキーパーソンとして注目されるのは、「上海閥」を裏切って陳良宇斬りでも胡錦涛に協力した曽慶紅・党中央政治局常務委員なのだそうです。曽慶紅は江沢民時代に江沢民に対する抵抗勢力だった先代「北京閥」の陳希同一派を葬り去った一件でも策謀をめぐらし相当働いたとのこと。この曽慶紅が今回の「北京閥」潰しにも一枚かむ可能性が大、なのだそうです。
とはいえ、曽慶紅ももちろんタダでは働いてくれません。曽慶紅は子飼いである周永康・公安部長を党中央政治局常務委員へと抜擢し、党大会で引退する羅幹の後継者として警察・検察・司法を掌握させたい思惑だとか。このあたりはまだまだ流動的なのですが、とりあえず胡錦涛との間にもう協定が成立していて、汚職問題に絡んでいる曽慶紅の一族の罪を「なかったこと」にする模様だとのこと。ともあれ最後は「事態はまだまだ流動的でどういう展開になるかは読みにくい」という意味の結語で記事を締めています。
――――
……そこですよ。例えば李登輝・前台湾総統が訪日。訪日するだけで中共政権にとってはゆゆしき問題です(ある意味首相の靖国参拝より重大)。滞在中の活動内容によっては「胡温」が一転して受け身に回る可能性もありますからね。そりゃもうワクテカです。
ところで、私の感想は前回同様、いやー政界と接触しているプロの人はやはりすごいなー、物知りだなーと思いました。きっと林氏はまだ隠しネタをいくつか持っていて、これから党大会にかけて小出しにしていくのでしょう。
……それ以上にすごいと思ったのは、これだけ濃い内容を1000字でまとめてしまう技量です。廃刊となった香港の中国情報月刊誌『九十年代』の李怡氏も良い感じに枯れつつ濃厚な内容をやはり1000字程度で無理なく詰め込んでしまいます。もちろん私などには到底真似できません。
あ、ただ林和立氏には一言あります。先月温家宝が訪日した際に香港紙からコメントを求められ、
「温家宝総理は個人的魅力があり、親しみやすく役人風を吹かせたりもしない。外国人や日本人が共産主義国家の官僚に対し抱いているイメージをいい意味で裏切った」
と間の抜けたことを言っていたので、
「テメー糞香港人の分際で日本人を舐めるんじゃねー日本のこと何も知らねーくせにこの病豚野郎が」
という気持ちを込めて脊髄反射、毒林檎でちょいと晒しageてしまいました。ごめんなウィリー。