日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 雑談です。

 えーと、先週は「念願」(これを果たすまでは死ねない)だった恩師との靖国デートは別として、仕事関連の仕込み・根回し・打ち合わせがなぜか集中してしまい、在宅勤務で病弱の私は連日の外出だけで体力消耗、当ブログの更新もままなりませんでした。

 とはいえ5月におけるもうひとつの「念願」、映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」を金曜に上野で観て参りました。なぜか「母の日&父の日」イベントということになり、配偶者を連れて両親と会食。そのあと4人で映画と相成りました。

 地味なところにある映画館でした。ちなみに表通りには成人映画専門の映画館がありまして、ここは私にとって思い出の場所。

 高校の文化祭でYMOのコピーバンドをやるのにシンセサイザーがたくさん必要になり、大森のレンタル楽器店で朝イチにて機材受領ということになりました。朝イチで飛び込むためには前夜からスタンバイが必要。ということでオールナイトの映画館で時間をつぶすことにしました。

 少し前に私にオンガク熱を吹き込んだT君をはじめ5名ばかりで上野に出て、『ぴあ』で狙いをつけていた日活ロマンポ映画館に凸。制服のまま難なく入れました。ところが興味津々で入ってみたのに映画は期待していたほど面白くありません。一同ちょっと肩すかしを喰った気分になると、そこは若気の至りな面々ですから「これなら大森で野宿した方がマシ」という話になって終電で現地へと移動。

 9月下旬の小雨まじりな寒い夜でした。楽器店の位置を確認してから手頃なマンションの駐車場を確保。シーケンサーやリズムマシンの打ち込みをやってから寝ました。よく言われていますが新聞紙というのは本当に暖かいものです。「いまなら絶対警察に通報されてるよな」と先日T君と笑い話にしたのですが、確かにまだ治安に不安を感じなかった時代でした。

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 すみません軌道修正します。その上野の成人映画館の横の細い道を入ったところにある地味な映画館で「俺は、君のためにこそ死ににいく」を観てきました。目立たない場所で平日の昼間ですから空いていたのは狙い通りです。

 ところで、長らく駄文にお付き合い頂いている皆様なら御存知でしょうが、私は映画だとベタな展開に滅法弱いのです。しかも今回は「原作」とも言うべき『ホタル帰る』を読み返して映画のメイキングDVDまで観て臨んだ本番です。配偶者ともどもタオルを握りしめ、「泣キ方用意宜候」でした。

 えーと、そこは素直ですからツボを衝かれて正直にやられました。orz

 配偶者は私にとって糞扱いの「男たちの大和」でも泣いていましたから今回は冒頭から泣きっ放し。「海ゆかば」が流れるや母親も涙。そのまた向こうに座っている父親も鼻をグズグズさせています。

 ……あ、そういえば父親は昔「二十四の瞳」の映画版で貧乏なためアルマイトのお弁当箱を買えない女の子の場面でも鼻をグズグズさせていた記憶が。私の「ベタ弱」が遺伝であることを確認できました(笑)。ともあれ御家人一家揃って涙ぽろぽろの図であります。

 とりあえず採点しておきましょう。近年いくつか観たこの種の映画の中では私にとって一番でした。それまでのトップだった人間魚雷回天と学徒出陣組を描いた「出口のない海」は85点でぎりぎり「優」。そして今回の「俺は、君のためにこそ死ににいく」ですが、「優」は確実ながらちょっと迷っていまして88~92点と幅を持たせて保留状態です。

 まあ例によって独断と偏見に基づいていますからアテにしないで下さい。

 ただ、戦争を美化した映画でないことは確かです。

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 作中に織り込まれている特攻隊員たちのエピソードはいずれも実話をベースにしていますので随所でツボを衝かれました。「特攻隊員の母」たる鳥濱トメさんを演じた岸恵子も良かったです。特に予告編でも流れていますが、

「俺まだ19だから、あとの30年の寿命、おばちゃんにあげるよ」

 という特攻隊員の言葉に、涙をこらえて笑顔でうなずくトメさんのシーンは改めて御家人一家をウルウルさせました。

 終盤のCGを駆使した特撮シーン、要するに陸軍一式戦闘機「隼」による特攻隊の各機が敵機と対空砲火をかわしつつ敵艦に突入を図る場面は文句なしです。米駆逐艦はフィリピン海軍でいまなお現役のホンモノを使ったとのこと。映画ですからグラマンF6Fの迎撃が遅すぎるのはお約束ですね(笑)。

 それを観ながら、唐突ですが、もし自分があの時代にあの世代で戦闘機搭乗員だったらどうしたかと考えてみました。

 もし自由に選択できるとすれば、飛行時間800時間以上の上飛曹クラス(私は絶対海軍航空隊)なら「敵機撃墜こそ戦闘機乗りの本務」とほざいて制空隊(特攻隊の護衛戦闘機)を選んでいたでしょう。まあ選ぶまでもなく制空任務の戦闘機隊に組み込まれていたと思います。

 500時間程度なら私は迷いながらも間違いなく特攻隊に志願していたと思います。ただ、出撃までの時間に苦しみ思い悩み、神経を病むに至っていたかも知れません。そういう一種の極限状態のなか、特攻隊員に慈母の如く優しく接してくれる鳥濱トメさんの存在は自分にとって大きな大きな救いになっていただろうと思います。

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 映画では出撃直前に特攻隊の隊長が部下たちを飛行場の芝生に丸く座らせて、

「みんな間違えるな。靖国神社の神門をくぐって右から2本目の桜のところで集合だからな」

 という意味のことを言います。そうした「約束」、戦争中に交わされた無数の「約束」の上に靖国神社があるということを考えると、やはりあそこは特別な場所なんだなあと思わされます。

 私はいつも参道に入るとつい背筋を伸ばしてしまったり、心が洗われるような、ふと深呼吸したくなるような気持ちになるのですが(恩師も同じことを言っていました)、それはそういう「約束」が積み重ねられた特別な磁場であることを自分が意識しているからなのかどうか、これはわかりません。

 映画では、不本意にも生き残ってしまい、不本意に歳を重ねた隊長がラストで、桜並木の下で笑顔で手を振っている飛行服姿の、当時の若いままの仲間たちの幻影を晩年のトメさんと一緒に目にします(場所はどうやら靖国神社ではなかったようですけど)。

 まあ、きれいに話をまとめたものです。ベタですけどね。……と思いつつもやはり涙腺を刺激されます(笑)。いや真面目な話、実際に戦死することなく生き残った人にとっては、恐らく「約束」の場所へ行くとそういう幻影を確かにみることができるのかも知れないと思ったからです。

 主題歌がB'zという点を懸念していたのですが、これは杞憂で意外に悪くありませんでした。でも森山直太朗の「さくら(独唱)」だったらドツボで始末に困ったと思います。

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 ともあれ私にとっては、60年ばかり前に、自らの生命を投げ出して愛する人や故郷の風景を護ろうとした若者たちがいたこと、そして彼らが護らんとした日本は、現在を生きる私たちにもつながっているということを改めて考える機会になりました。

 映画では特攻という戦術が統率の外道であること、つまり軍上層部の無為無策の果てに行き着いた戦法であることも、特攻隊要員が事実上「志願」という形をとった命令で集められた側面があることも描かれています。そういう苛酷な状況下でその任務に就き散華した人々には、感謝の言葉しかありません。

 以前紹介したように、米国政府が最近機密扱いを解除したことで公開された資料によれば、至近弾で艦体あるいは人員に損害を被ったケースを含めると、特攻隊の成功率は56%にものぼります。

 突入成功例だけでも39%の高率。なるほど当時かくも多くの米国海軍の軍人が戦争神経症を患って兵隊として戦力にならなくなった訳です。この事実が米軍首脳部をして日本本土上陸作戦の実施をためらわせたといっても過言ではないでしょう。

 その意味でも、私たちは彼らがその生命を以て購ってくれた「いま」を生きていることになります。私は靖国神社を訪れるたびに、「ありがとうございました。本当にありがとうございました」と念じることしかできません。

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 実は昨日(5月21日)参拝した際に、「神門をくぐって右から2本目の桜」を探してみました。

 戦時中の靖国神社の風景というものを私は知りませんが、戦後、各部隊関係者や同期会などによって植樹された記念樹の桜がいまはたくさんあります。それを含めて数えると、「神門をくぐって右から2本目の桜」は、偶然ながらやはり沖縄戦における桜花の特攻で有名な海軍一式陸攻の「神雷部隊」の記念樹でした。

 それら記念樹を除外して探し当てた桜の木はそれほど太い幹でもない、何の変哲もない桜です。

 でも、そういう戦前からそこにあった記念樹でない桜それぞれに「約束」が込められているのかも知れないと思うと,また記念樹にもそれぞれ特別な想いが刻み込まれているのだと思うと、年甲斐もなく胸が熱くなりました。

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 ところで、一方で石原慎太郎氏の脚本に食い足らない部分もありました。点数を決めかねている所以です。その最たる点が「ホタル帰る」のエピソード。

「明日出撃だから、夜9時にはホタルになって戻ってくる。だから食堂の戸を少し開けておいてね」

 とトメさんに言い残して出撃し、ついに還らなかった特攻隊員がいます。約束したのでその日の夜になって食堂の引き戸を少し開けておいたところ、言葉通りに夜9時、灯火管制でほの暗い食堂にホタルがスーッと入って来るのです。この実話だけはいじることなく、そのまま映像化してほしかったところです。

 他にも特攻に殉じた朝鮮人のエピソード(金山少尉)が出てきますけど、これは故・豊田穣氏の『大日本交響楽』に収録されている小篇の方がトメさんとの心の交流がより深く描けているように思います。それを読んだ上で映画に接すると物足りなさを感じずにはおれません。

 まあエピソードをあれこれ詰め込みすぎた観なきにしもあらず、ですけど、映画ですから仕方がないのかも知れません。

 ただ2点だけ。

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 冒頭に特攻隊の魁とされる関行男大尉に敷島隊隊長を命じる場面が出てきます。実際には長髪をオールバックにしていたのですが、映画では坊主頭なのに失望しました。

 この関大尉は「最初の攻撃隊の隊長には範を垂れる意味も込めて海軍兵学校(士官学校)出身者を」ということで白羽の矢を立てられるのですが、出撃前に従軍記者(報道班員)に語った言葉、

「報道班員、日本もおしまいだよ。ぼくのような優秀なパイロットを殺すなんて。ぼくなら体当たりせずとも敵母艦の飛行甲板に五〇番(500kg爆弾)を命中させる自信がある」

「ぼくは天皇陛下のためとか、日本帝国のためとかで行くんじゃない。最愛のKA(海軍の隠語で妻のこと)のために行くんだ。命令とあらば止むをえない。日本が敗けたら、KAがアメ公に強姦されるかもしれない。ぼくは彼女を護るために死ぬんだ。最愛の者のために死ぬ。どうだすばらしいだろう!」

 ……これはストーリーとは直接関係ないものの、映画の主題につながる言葉だけに描いてほしかったです。しかも士官学校出というエリート職業軍人の口から出た言葉だけにより重みがあります。

 それから特攻を命じる司令官・大西瀧治郎中将が現地部隊の指揮官たちにその必要性を説く中で、アジア解放の戦争云々と言わせているのは余りに強引な気がしました。

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 もう一点は、ないものねだり。戦闘シーンの特撮の質には満足していますけど、せっかくだから空中戦を観たかった、ということです(笑)。

 海軍の特攻機には護衛の制空隊(零戦)がいましたし、陸軍も四式戦闘機「疾風」の部隊がその役を担っていた筈です。どうせなら、特攻隊を掩護する零戦や疾風が迎撃に上がってきたグラマンを撃墜するシーンを描いてほしかったです(紫電改は長く飛べないので沖縄まで往復できないんです残念)。

 実話ベースとはいえドキュメンタリー映画ではありませんし、商売なんですから少しは勝ち戦の部分も必要。実際に制空隊による戦果もあったのですから、直掩戦闘機が血路を開いてそこから特攻隊が突入していく、という形にしてくれればなあ、と思いました。零戦撃墜王の岩本徹三少尉とか、活躍していたんですけどねえ。

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 雑談ですから結語も何もありません。ちゃんと伝わってくるものがありますし、いまの自分を見つめ直すという意味においても、十分に観る価値のある映画だと思います。

 私はリピーターになります。恩師をエスコートして観に行く約束をしましたので。「念願」がまたひとつ増えました(笑)。




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