日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 orz……と表現するしかありません。WHO(世界保健機関)の事務局長に最も不適切な人間が就任してしまいました。香港人の陳馮富珍(マーガレット・チャン)女史です。中国の強いバックアップを受けて選挙戦を勝ち抜いた、というのは以前紹介した通りです。

 ●上海に居座る黄菊&世界を不幸にするWHOトップの誕生。(2006/11/09)

 そういや黄菊も最近姿を見せませんけど、それはまた別の話。このマーガレット・チャン女史は地元香港での評判が最悪で、当選が決まった直後には香港を挙げての大ブーイング。鳥インフルエンザや中国肺炎(SARS)が流行した時期の衛生部門担当者で、情報を出すのは遅いし事態を軽視して状況を悪化させるしで散々煮え湯を飲まされたのが他ならぬ香港市民なのです。

 中国は鳥フルのサンプル提出拒否などWHOに対して非協力的な態度を崩していませんが、他ならぬその中国が当選させてくれたのですから、事態はいよいよ悪い方向へと進むでしょう。台湾のオブザーバー参加という一件も実現が遠のきそうです。

 ところが御祝儀ということなのでしょうか、よりによって同女史の事務局長就任初日に香港で鳥フルに感染した鳥が発見されました。はいはい縁起物縁起物。

 地元紙(電子版)の報道によると、香港島で死んでいる文鳥が5羽、九龍側でも文鳥1羽と衰弱して飛べなくなっているハトが発見され、いずれも衛生担当者が通報を受けて回収したそうです。このうち香港島(銅鑼湾=トンローワン)で発見された文鳥のうち1羽がH5型に感染していることが判明しています。問題のH5N1型なのかどうかは検査の結果待ちとのこと。

 http://hk.news.yahoo.com/070104/3/1zdrp.html
 http://hk.news.yahoo.com/070104/12/1zdps.html
 http://hk.news.yahoo.com/070104/12/1zdsr.html

 下手するとまた旧正月の御馳走が鶏肉抜きになるかも知れませんね。在香港の皆さん、お気の毒様です。

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 さて本題。黄菊といえば上海閥の現役最高位のひとりで党中央の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員に名を連ねているのですが、年が明けたら党中央政治局常務委員が顔を揃えるべきイベントにこの黄菊だけが出てきません。ちょっと前に北京を留守にしてひとりだけ上海に居座っていたこともありましたけど、いまどこで何をしているのでしょう?

 黄菊といえばやっぱり陳良宇でしょう。上海市の前トップ(市等委員会書記)だったのが汚職でクビを飛ばされて、陳良宇とつながりの深い黄菊も連座するのでは?……との観測が香港筋では行われています。

 そうなるかどうかはともかく、上海閥はお世継ぎともいうべき次世代を担う筈だった陳良宇を胡錦涛に太刀筋鋭くバッサリやられたため御家断絶が確定。胡錦涛は腰間三尺の秋水を一閃させて陳良宇の上海市における全ての役職を解任、さらに返す刀で党中央政治局委員及び中央委員の資格停止を決定しました。……というのが去年(2006年)の初秋あたりでしたか()。

 その後ほどなく開催された党の重要会議「六中全会」(党第16期中央委員会第6次全体会議)で何かあるかも。……と期待していたのですが、公報(コミュニケ)における陳良宇への言及は全くなし。捜査が完了するまで数カ月はかかるため間に合わなかった、とされています。

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 ただこの「六中全会」で胡錦涛が行った演説が陳良宇事件にふれていた、という消息筋情報はありました。演説自体が公開されていないので真偽はいまなお不明なのですが、香港における親中紙の筆頭格『香港文匯報』がそう報じているので信憑性は高いといえるでしょう()。

 1989年の大学生と知識人による民主化運動~天安門事件では趙紫陽を更迭した党中央に叛旗を翻した同紙ですが、その後編集部が総入れ替えとなってからは走狗同然、香港における中共の機関紙といったスタンスに徹しています。それだけに確度が高いといえるのです。

 その『香港文匯報』が昨日(2007/01/04)、唐突に陳良宇事件の関連記事を大きく掲載しました。事件を調べていた党中央紀律検査委員会の捜査が進み、今月中に開催が予定されている党中央紀律委員会第7次全体会議で陳良宇に関するニュースが流れるというのです。

 しかも、捜査の進展に伴って新たな汚職が発見されたのか、

「陳良宇の問題は当初公表された内容
(社会保険基金を流用した不正融資、及び不正融資を受けた企業からの収賄容疑など)より深刻なものになりそう」

 というのですからワクテカです。党中央政治局委員と中央委員の解任は当然として、党籍剥奪まで行われるかも知れません。お侍さんでいえば武士として遇される切腹ではなく、その資格を剥脱され庶人同様に扱われる斬首になりそうだ、てなところでしょうか。

 ●『香港文匯報』(2007/01/04)
 http://www.wwpnews.net/news.phtml?news_id=CH0701040006&cat=002CH

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 このタイミングで親中紙に消息筋情報を流させたのは、第一に胡錦涛サイドの勝利宣言という意味合いがあるでしょう。世代交代や大型人事の行われる5年に1度の党大会を見据えたものであることは言うまでもありません。

 さらにいうとすれば、陳良宇を予想されていた以上の厳罰に処することで、一種の見せしめ効果を期待しているのかも知れません。

「上海閥の大番頭だってこうなるんだ。わかったかお前ら」

 というその「お前ら」は、各地方勢力のボス、すなわち「諸侯」たちのことです。「中央vs地方」という対立軸が明確になってきた時期でもあり、

「言うことを聞かない奴は汚職容疑でぶった斬る」

 と胡錦涛が凄んでいると考えていいでしょう。

 ちなみにこの「陳良宇は予想以上の厳罰かも」という『香港文匯報』の記事は台湾の中央通信社が転載し、それをやはり香港の親中紙である『大公報』電子版が報じました。

 ●『大公報』電子版(2007/01/04)
 http://www.takungpao.com/news/07/01/04/ZM-673947.htm

 いつも『香港文匯報』にオイシイところを持っていかれてしまい、そのくせ大型デモなどが必ず通過する大通りに社屋が面しているため、民主化デモが行われる度に段ボール製の棺桶やら何やらを門前に置かれてしまう可哀想な『大公報』には同情を禁じ得ませんが、香港の親中紙が2紙並んで報じたことで、「陳良宇斬首」の可能性が高まったといえるでしょう。

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 ついでにこの事件で引っくくられた面々を挙げておきましょう。独立王国上海、解体の巻です。

 陳良宇:中央政治局委員、上海市委書記
 邱曉華:国家統計局局長
 祝均一:上海社保局局長、全國人大代表
 孫路一:上海市委副秘書長、市委弁公庁主任
 秦裕:上海市宝山区区長
 陸祺偉:上海社保局社保基金監管処処長
 韓国璋:上海電気副総裁、執行董事
 張栄坤:上海電気董事
 王成明:上海電気董事長
 呉明烈:上海新黄浦董事長
 韓方河:華安基金管理公司総経理
 徐偉:上海電気資産管理公司副総裁
 程彦敏:ST自儀董事、上海電気資産管理公司投資管理部副部長
 郁知非:上海国際賽場公司総経理
 郁国祥:上海新恒徳置業公司董事長
 王国雄:上海工業投資(集団)公司総裁、上海市政府商委主任
 凌寶亨:上海市国資委主任
 呉鴻●:上海市国資委副主任(●=「王攵」)

 ●『香港文匯報』(2007/01/04)
 http://www.wwpnews.net/news.phtml?news_id=CH0701040010&cat=002CH

 気になるとすれば、唯一中央政府部門からの容疑者となった邱曉華・前国家統計局局長ですね。陳良宇の汚職とどう絡んでいたのか詳細を知りたいところです。この人物は胡錦涛の提唱する緑色GDPについて、

「そんなの無理。大体どうやって算出する訳?できやしねーよ」

 と消極的な姿勢を示していたのが個人的には印象深かったので。

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 それにしても、

「陳良宇の罪は予想されていた以上に重い模様」

 という言い方にはちょっと勘繰りたくなってしまいます。単に陳良宇が切腹から斬首になるということなのか、あるいは別の汚職が明らかになってさらに連座する者が出てくるとか……例えば黄菊?てな具合です。

 新情報が飛び出す可能性大と注目されている党中央紀律委員会第7次全体会議については党中央の肝いりとでもいうべきか、昨年末に開催された党中央政治局の会議で「1月開催」が高らかに宣言されています。

 中央の御歴々も力を入れているという証です。「注目しろ」と言っている訳ですね。

 ……ということで皆さん、注目しましょう(笑)。

 ●『香港文匯報』(2007/01/04)
 http://www.wwpnews.net/news.phtml?news_id=CH0701040009&cat=002CH




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